CPUをRyzenに変えたらPPS同期のntpdのoffsetが急増した

現象

タイトルの通り、CPUをRyzenに変えたらPPS同期のntpdのoffsetが急増した。
しかも、数usから20ms以上に急増。
jitterも数usecから数百usecに。単位が違いすぎる。
何故。

環境

Ryzen移行前

• CPU: J3455
• OS: ArchLinux
  • linuxカーネル
  • intel_idle.max_cstate=1でC Stateを制限済み¹
• 時刻源: GPS18x LVC²
• ntpd: 4.2.8.p15
  • timepps.hを設置してコンパイル済み
  • ntpd -Nでhighest priority化済み¹
• ntpd Reference Clock Driver: Type 20
  • PPS使用

Ryzen移行後

• CPU: Ryzen 5 PRO 3400GE
  • 流行りのM75q-1
• OS: ArchLiux
  • linux-zenカーネル
• 時刻源: GPS18x LVC²
  • 移行前と同じ
• ntpd: 4.2.8.p15
  • 移行前と同じく、timepps.hを設置してコンパイル済み
• ntpd Reference Clock Driver: Type 20
  • 移行前と同じく、PPS使用

実験

ntpd -Nでhighest priority化

結果は、あまり?変わらず。

fudgeのtime1でPPSのoffsetを調整

本家によると、

Specifies the PPS time offset calibration factor, in seconds and fraction, with default 0.0

とのこと。
結果は、time 1をいくら修正しても、offsetの値は変わらない。

ただ、実験の過程で、色々調べたところ、みなさん³他のNTPサーバーでPPSのoffsetを較正していることが分かった。
実際、Type 20のoffsetが20msであっても、time 1を調整したら、他のNTPサーバーのoffsetは0に近づいた。
今まではPPSの精度を信じていたが、例えそうであっても、PPSがntpdに到着してカーネルの時刻に反映されるまでの遅延は、システム毎に異なる可能性を考慮すべきかも。

C Stateの制限

とはいえ、time 1では、jitterは減らせなかった。
過去に書いたこちらの記事と同じことを、Ryzenでやるには、どうすれば。

CPU idle driver

本家によると、CPU idle driverには、intel_idleとacpi_idleの2種類があるらしい。
まずは、Ryzen移行後のM75q-1で、どちらが使われているか、見てみよう。

$ cat /sys/devices/system/cpu/cpuidle/current_driver
acpi_idle

ほーそうですか。そして、先ほどの本家によると、

(前略) there are parameters affecting individual CPUIdle drivers that can be passed to them via the kernel command line. Specifically, the intel_idle.max_cstate= and processor.max_cstate= parameters (中略) causes the intel_idle and acpi_idle drivers, respectively, to discard all of the idle states deeper than idle state .

とある。acpi_idleにはprocessor.max_cstate=<n>ということか。

grubにカーネルパラメーターを設定

/etc/default/grub

GRUB_CMDLINE_LINUX_DEFAULT="loglevel=3 quiet processor.max_cstate=1"

sudo grub-mkconfig -o /boot/grub/grub.cfg

そして再起動。

結果

$ ntpq -p
     remote           refid      st t when poll reach   delay   offset  jitter
==============================================================================
oGPS_NMEA(0)     .GPS.            0 l   15   16  377    0.000   -0.001   0.001

こうでなくっちゃ!

宿題

• 消費電力やCPU温度の変化は一体…
• Kernel discipline(Type 22)
• Stratum 1はRaspberry Piで作る時代でしょう
• PTPによる配布
  • M75q-1で動くr8169はPTP対応…してないか…
  • そもそもPTP対応スイッチ持ってなかった…

1. 過去に書いたこちらの記事参照 ↩ ↩²

2. こちらによると、ファームウェアVer 4.40が2019年10月に出ていたりして、まだ現役 ↩ ↩²

3. こちらやこちら ↩