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mimiumによるオーディオプログラミング例

Last updated at Posted at 2020-12-08

mimium

オーディオプログラミング言語 Advent Calendar 2020

概要

https://mimium.org/
https://github.com/mimium-org/mimium

サウンドと音楽を記述/生成するためのドメイン固有言語。
ミュージシャンやプログラマー向けのツールだけでなく、ソースコードの形式で音楽を配信するためのインフラストラクチャとして作成されているとのこと。

九州大学の松浦知也さんが開発。2019年度未踏IT人材育成・発掘事業採択プロジェクト。

実装例

セットアップ

mimiumは現在も開発中ということもあり、セットアップ方法は今後変わることも考慮して詳細は割愛します。
手元のmacOS Catalinaの場合は、ビルド済みファイルを取得してlibの内容を/usr/local/libにコピー、実行ファイルやライブラリのセキュリティ警告に対応したら動きました。

サイン波生成

関数定義やクロージャ、if式など構文はRustに似ているように思います。オーディオ処理についてサンプルレベルの高精度処理や関数型言語的なアプローチはFaustやExtemporeなどからアイデアを取り込んでいるようです。低レベル処理はC++でのオーディオプログラミングにも通じるところがあります。

dsp関数がメインの処理で、ここに書いた処理は毎秒48000回実行されます。LLVMにコンパイルされるので高頻度で呼ばれる関数も十分高速に実行されます。

SampleRate = 48000
PI = 3.1415956

theta = 0
delta = 0

fn sin_osc(freq:float) {
    delta = 2 * PI * freq / SampleRate
    theta = theta + delta
    return sin(theta)
}

gain = 0.5

fn dsp(time:float) {
    return sin_osc(440) * gain
}

Delayエフェクト

mimiumにはdelay関数が用意されているのでそれを使います。
下記のseek関数はバッファのどこのデータを読むのか判断する関数です。mimiumの関数は前回の戻り値を覚えていてselfで参照できるので、seekのような関数でもポインタ的な変数を別途用意する必要がない点がユニークです。フィルター処理など1サンプル前の値を参照することが多いオーディオプログラミング用言語ならではの機能です。

// delay fx

voice = "../voice.wav"
bufsize = loadwavsize(voice)
voicebuf = loadwav(voice)
fr = 44100 // sample rate of wavfile
sr = 48000 // sample rate of system
speed = fr / sr

delaytime = 0.4
feedback = 0.5
wetlevel = 0.5

pos = 0

fn fbdelay(dry:float, time:float, fb:float) {
    return delay(dry + self * fb, time) 
}

fn seek(rate:float, size:float){
    return min(self + rate, bufsize - 1)
}

fn dsp(time:float) {
    pos = seek(speed, bufsize)
    dry = voicebuf[pos]
    return dry + fbdelay(dry, delaytime * sr, feedback) * wetlevel
}

上のプログラムで使用しているdelay関数は2020年12月にリリースされたv0.2.0で実装されたものです。v0.2.0リリース前に自作したディレイプログラムも載せておきます。再帰呼び出しでディレイエフェクトのフィードバックを実現するアルゴリズムになっています。

fb_delay関数がディレイ本体です。ディレイ用のバッファを別途持つのではなく、wavファイルのバッファを直接参照しています。そのためストリームにかけることはできませんが、wavファイルのバッファ参照位置を工夫することでディレイが実現できます。下の例では毎秒48000回×5階層の再帰呼び出しをおこなっていますが軽快に動作しています。

// recursive delay fx

voice = "../voice.wav"
bufsize = loadwavsize(voice)
voicebuf = loadwav(voice)
fr = 44100 // sample rate of wavfile
sr = 48000 // sample rate of system
speed = fr / sr

delay_time = 0.4
feedback = 0.5
num_feedback = 5

pos = 0

fn fb_delay(buf, size, delay, ptr, fb) {
    return if ((fb < 0) || (ptr < 0)) 0 else buf[min(ptr, size - 1)] + fb_delay(buf, size, delay, ptr - delay * fr, fb - 1) * feedback
}

fn dsp(time:float) {
    pos = pos + speed
    return fb_delay(voicebuf, bufsize, delay_time, pos, num_feedback)
}

感想

あらたな音楽用言語を設計して高速なコードを生成するコンパイラを作る、という野心的なプロジェクトなので以前から注目していました。
現状はまだ発展途上のところも多いですが、既存の言語を十分調査したうえで独自のアイデアを盛り込んでいるモダンな言語という印象です。

サンプル単位の処理をベースとしつつ、@による簡易タイマーや、selfによる過去への参照、再帰処理など、複数の時間軸が混在するオーディオプロセスにおいて、低レベル処理と抽象化をうまく共存させようとしているところにセンスを感じます。
これからどう進化するか期待しています。

オーディオプログラミング言語 Advent Calendar 2020

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