さだまさしの楽曲のコード遷移を整理してみた

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さだまさし x IT Advent Calendar 2015の第22日目の記事です.


1. はじめに

今年の夏にこの世を去った母がさだまさしが大好きで,私も小さい頃からよく聴いてました.

歌詞が面白くて何度聴いても同じ所で笑っちゃいますよね.(靴下に穴,とか.)

Advent Calendarでも自然言語処理で歌詞の解析をされてる方がたくさんいらっしゃいますね.

さだまさしの音楽は,歌詞はもちろんのこと曲調も素敵ですよね.伴奏がクラッシックなのも好みです.そこで,私は歌詞ではなく曲について何かしようと思います.


2. 先行研究

楽曲データを扱ったことがないド素人ですので,まずは,楽曲解析にはどういった先行研究があるのか調べてみました.

自然言語処理における構造解析のようなものとして,楽曲の構造解析をする方法として GTTM[1]があり,それを改良した研究が日本では情報処理学会を中心に研究発表がされているようでした.この他にも,単純な集計による日本ポピュラー音楽の分析[2]や特徴量抽出を行った研究[3]というものもありました.

先行研究では,まずは,楽譜の情報をmusicXMLやMIDIという形式で電子化していましたので,私も同様に,Finaleというアプリケーションを使って,楽譜をデータに起こしました.

音符を入力しながら,途中で再生してみると,ちゃんと曲になってるのに感動します.そんなことを夜なべして全曲インプットしました.

image

そして,まずはGTTMで構造解析を,,,と思い,実装されたツールを頼りにHPへ向かうと...

404エラー!!!

あるはずのものがなーーい.

きゃあーーー.

周波数解析をするようなツールはあるものの,私の目的としているようなものに対応するものがみつからない...

時間なーーーーい....

ということで,方針転換です.(๑•̀ㅂ•́)و✧

コードの遷移を扱うことにしました.

以下,Rを使ってデータを処理してますが,「IT」という要素はそれ以外ないですorz.


3. 楽曲のコード遷移


3.1. 分析用データ


(1) 対象曲

さだまさしの代表曲をまとめると下表のようになります.[4]

作詞・作曲はすべてさだまさしで,編曲は主に渡辺俊幸ですが,楽曲によってはそうではないものもあるようです.

曲の解析をするにあたり,ベースとなる和音の構成や遷移が理論上は異なる理由から,明るい曲調の長調のものと,暗い曲調の短調のものは,分離して扱うことが望ましい.

そこで,今回の対象は,長調の曲に絞り,かつ楽譜が入手可能であった 6曲(下表中,対象カラムに○がついている先)を対象にしました.

今回扱う楽曲は,いずれも四分の四拍子で,テンポは四分音符 = 70前後のゆっくりとした曲です.

対象
曲名
作詞
作曲
編曲
Key
表紙
テンポ
備考


北の国から〜遥かなる大地より〜
さだまさし
さだまさし
渡辺俊幸
G
4/4
76
シングル曲.ドラマ『北の国から』の主題歌.


道化師のソネット
さだまさし
さだまさし
渡辺俊幸
G
4/4
66
シングル曲.さだが主演・音楽監督を務めた映画『翔べイカロスの翼』の主題歌.

雨やどり
さだまさし
さだまさし
渡辺俊幸
D
4/4

シングル曲(ライブ録音).ワーナーミュージック・ジャパン音源.


案山子
さだまさし
さだまさし
渡辺俊幸
F
4/4
74
シングル曲.アルバム『帰郷』からの収録.


関白宣言
さだまさし
さだまさし
さだまさし,福田郁次郎,藤田大士
A
4/4
93
シングル曲.

関白失脚
さだまさし
さだまさし
act21 Tour Band
Bm
4/4

シングル曲(ライブ録音).

秋桜
さだまさし
さだまさし
渡辺俊幸
Cm
4/4

アルバム『帰郷』からの収録.

精霊流し
さだまさし
さだまさし
さだまさし
Dm
4/4

グレープ時代のシングル曲.アルバム『帰郷』からの収録.

無縁坂
さだまさし
さだまさし
信田かずお
D
4/4

グレープ時代のシングル曲.アルバム『帰郷』からの収録.

親父の一番長い日
さだまさし
さだまさし
山本直純
G
4/4

シングル曲(ライブ録音).

防人の詩
さだまさし
さだまさし
渡辺俊幸
Dm
4/4

シングル曲.


風に立つライオン
さだまさし
さだまさし
渡辺俊幸
C
4/4
69
アルバム『夢回帰線』からの収録.後にシングル・カットされた.


夢見る人
さだまさし
さだまさし

A
4/4
68
ドラマ『天皇の料理番』主題歌


(2) データ形式

扱うデータは,楽曲データとしてはもっとも粗い精度のコードの遷移とした.

measure: 小節番号

code: コード

alphabet: 小節の左上に書いてあるアルファベット

bar_no: 通しの小節番号(繰り返しで戻った場合も別の小節番号になる)

unit: コードの重み(1小節の中でコードが変わる場合がある.1小節を1単位とした場合の重み)

● 北の国からの冒頭

measure
code
alphabet
bar_no
unit

1
G

1
1

2
G

2
1

3
G
A
3
1

4
Am7

4
1

5
D7

5
1

6
G

6
1

7
G7

7
1

8
C

8
1

9
G

9
0.5

9
D

9
0.5


3.2. 前処理(keyの標準化)

楽曲は同じ長調であっても,C,G,D...,とkeyが様々なので,C majorのCとG majorのGが同じ意味を持つように,すべてのkeyをC ベースに移調する処理を行いました.

e.g. G majorの移調

(移調前) G A B C D E F# G

  ↓

(移調後) C D E F G A B D

● 対応表:

key
x1
x2
x3
x4
x5
x6
x7

A♭
A♭
B♭
C
D♭
E♭
F
G

E♭
E♭
F
G
A♭
B♭
C
D

B♭
B♭
C
D
E♭
F
G
A

F
F
G
A
B♭
C
D
E

C
C
D
E
F
G
A
B

G
G
A
B
C
D
E
F#

D
D
E
F#
G
A
B
C#

A
A
B
C#
D
E
F#
G#

E
E
F#
G#
A
B
C#
D#


3.3. コード単体の構成

各曲の全体に占める各コードの構成比は下表のようになる.

主要三和音の,主和音: C,ドミナント: G,およびサブドミナント: Fが大きい特徴は,音楽理論と一致する.

DmがFと同程度使われているのは,さだまさしの特徴なのか?理論上,DmがサブドミナントとしてFの代わりに使われるようですが,他のアーティストの楽曲と比較してみないとわかりませんね.

code
北の国
道化師
案山子
関白宣言
風に立つ
夢見る人
weighted avg

C
40%
32%
30%
46%
50%
17%
36%

C#dim

2%
0%

C7
9%
0%

3%
4%

3%

Cdim

9%
2%

Csus4

0%

0%

D7

1%

1%
2%
1%

D7sus4

1%
0%

Dm

5%
2%
9%
5%
4%
4%

Dm7
15%
18%
13%
4%
1%
20%
12%

Dsus4

1%
0%

Em

10%

3%
2%

Em7
2%
5%
1%

2%
2%

F
14%
7%
10%
13%
21%
10%
13%

F6

1%
0%

Fm6

2%
0%

FM7

2%
0%

G
1%
4%
22%
3%
7%
7%
7%

G7
17%
16%

20%
5%
4%
10%

G7sus4

2%

0%
2%
1%

Gaug

1%

0%

Gsus4

1%

0%

A7
2%
5%

3%
11%
4%

Am

3%
10%
0%

2%
3%

Am7

1%

1%
0%

0%

B♭

0%

0%

total
100%
100%
100%
100%
100%
100%
100%


3.4. コードの遷移

歌詞のある部分について,コードの遷移を整理すると下表のようになる.

楽曲解析における楽曲のフレーズの分割(構造解析)には,GTTMという手法がありますが,今回は楽曲数が少ないため,マニュアルで分割点を設定しました.

4小節または8小節を1つのフレーズと認識するので,良いでしょう.以下では,4小節を1フレーズと認識し,曲別の構成比を整理しました.

結果をみて,印象的なのは,関白宣言はたった3種類のコード遷移のみからなり,特に「C-Dm-G7-C(原調: G-Am-D7-G)」というパターン(コード遷移)が全体の5割を占めている点でしょう.

北の国からもたった4つのパターンから構成されているのも特徴的です.

これらの曲に共通する印象は,おそらく「単調な曲」というものだと思います.

反対に,壮大な曲の印象をもつ,「風に立つライオン」や「夢見る人」では,相対的に多種類のコード遷移から構成されており,そのコード遷移もスパイスが入ったような癖のあるものになっているようです.

code
北の国
道化師
案山子
関白宣言
風に立つ
夢見る人
weighted avg

C7-F-C-C
38%

6%

C-Am-F-C

6%

1%

C-C-C-G

6%

1%

C-Dm7-C-F

6%

1%

C-Dm7-F-C

6%

1%

C-Dm7-G7-C
38%

6%

C-Dm7-G-C

29%

5%

C-Dm-Cdim-C

20%
3%

C-Dm-F-C

39%

6%

C-Dm-G7-C

21%

50%

12%

C-F-C-G

22%

4%

C-F-C-G7sus4

6%

1%

C-F-C-Gsus4

11%

2%

C-F-Dm-F

24%

4%

Dm7-C-D7sus4-FM7

10%
2%

Dm7-C-Dm7-C

14%

2%

Dm7-C-Dsus4-G7

10%
2%

Dm7-Dm7-C-A7

10%
2%

Dm7-Dm7-C-Am

10%
2%

Dm7-Dm7-G7-C

10%
2%

Em7-Dm-C-Dm7

14%

2%

Em7-Dm-Dm7-C

14%

2%

F-Cdim-Em7-G

20%
3%

F-Cdim-Em-G

10%
2%

F-C-Dm7-C
13%

25%

6%

F-C-Em7-Am

7%

1%

F-C-F-C

14%

2%

F-C-F-Em7

14%

2%

F-C-F-G

11%

2%

F-Em7-Dm7-G7
13%

2%

G7-C-G7-C

25%

4%

Am-Em-F-Am

18%

3%

Am-Em-F-C

18%

3%


4. まとめと今後の課題

さだまさしの代表的な楽曲のうち,長調のものについてコード遷移の整理をしました.

コード単体の構成は音楽理論でいわれているものと同様の傾向がみられました.

また,4小節を1パターンと認識したコード遷移の整理の結果では,単調な曲では,ごく限られたパターンのみから楽曲が構成され,壮大な印象をもつ楽曲は相対的に多種類のフレーズからなることがわかりました.

さだまさしの楽曲の特徴が何か知るためには,他のアーティストの楽曲との比較検証が必要でしょう.

今回は,楽曲数が少なかったので,フレーズの分割はマニュアルでやりましたが,対象が増えるとそうも行かないので,先行研究でされているような楽曲解析の技術が必要になるでしょう.

また,今回はコードというもっとも粗い精度での整理をしましたが,音符単位でのリズムや旋律の分析もしてみたいですね.


参考文献

[1] LERDAHL, Fred; JACKENDOFF, Ray. A generative theory of tonal music. MIT press, 1985.

[2] 三家本祥平; 井手綾香; 出口幸子. 楽譜データベースを用いた日本ポピュラー音楽の旋律分析. 情報処理学会研究報告.[音楽情報科学], 2006, 2006.45: 19-24.

[3] 東海林智也. G_005 関数データ解析による楽曲の旋律からの特徴抽出 (G 分野: 音声・音楽). 情報科学技術フォーラム一般講演論文集, 2006, 5.2: 363-364.

[4] ウィキペディア百科事典「さだまさしベスト」, https://ja.wikipedia.org/wiki/さだまさしベスト, 最終閲覧日: 2015/12/22