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Flutterのcontextの「お気持ち」を理解する

Last updated at Posted at 2019-09-05

ここでいう「お気持ち」というのは、「定義」とか「正体」とかではなく、

「何のためにあるのか」とか「どう使うことが想定されているのか」とか

そういうことを意味します。「作った人がどういうつもりだったか」という意味で「お気持ち」と言っています。

私がFlutterを始めてすぐの頃、contextとかBuildContextなるものが何なのか、どう使うのか、さっぱり理解できなくて困ったので、その辺を助ける記事です。

「実体はなんなのか」とか「正体はなんなのか」といった説明はしませんのでご了承ください。

一番言いたい結論は

Hoge.of(context) で「引数に与えた文脈におけるHoge」

を意味するということです。

#BuildContext型のcontext変数

contextとサラッと言ってますが、より具体的にはBuildContextというクラスですね。

BuildContextクラスのドキュメント

こちらをよく読むと実は「お気持ち」も書いてあるのですが、簡潔に終わってますので、この記事で改めて説明します。

#"context"は「文脈」という意味

そもそも何で"context"と呼ばれているのか、を考えてみることにしましょう。そこには命名者の意図があるはずです。

"context"という英単語は「文脈」という意味です。

「この文脈における『適当』は『雑』ではなく『ちょうどいい』という意味です。」

「この文脈における『押すなよ!』というのは『押せ!』という意味です。」

「この文脈においては、お茶漬けを勧めているのではなく『帰れ』と言っています。」

のように使いますね。

##「文脈」は「環境」や「状況」と言い換えることもできます。

「この状況における『適当』は『雑』ではなく『ちょうどいい』という意味です。」

「この環境における『押すなよ!』というのは『押せ!』という意味です。」

「この状況においては、お茶漬けを勧めているのではなく『帰れ』と言っています。」

#Hoge.of(context)で「この文脈におけるHoge」

Flutterの話に戻ります。

Flutterのcontextもやはり「文脈」「状況」「環境」を表します。

「今、どんな場所にいるのか」を表しているわけです。

もっと言うと、「Widgetツリー内のどこにいるか」を表しています。

Flutterのコードでcontextが出てくるのは大体次の2つの場合です。

  • builder
  • of

一つずつ説明します。

##builder

builder:(BuildContext context){
  return // (何かしらのWidget);
}

builderは、Widget生成してWidgetツリー内にセットする時に呼ばれる関数です。

引数のcontextは、Flutterが自動的に与えます。我々はbuilder関数がcontextを受け取れるようにさえしておけば良いです。

自分でWidgetを作る場合は

@override
Widget build(BuildContext context){
  return // (何かしらのWidget);
}

となりますが、BuildContextを受け取ってWidgetを返す関数という意味で同じです。

これらのコードに出てくるcontextは、受け取り口として用意されているものであって、使ってるわけじゃないですね。

では次。

##of

Hoge.of(context).// (何かしらのプロパティやメソッド);

こちらは、すでに持っているcontextという変数を実際に使っています。

Hoge.of(context)というのは、contextの場所からWidgetツリーを先祖に向かってさかのぼって、最初に見つかるHogeを返します。

実際にはHogeThemeだったりDefaultTextStyleだったり自分で作った何かだったりします。

つまりHoge.of(context)

「引数に与えたcontextはどのHogeの傘下なのか」

「引数に与えたcontextにはどんなHogeが設定されているか」

を調べているわけです。

##Themeの例

実際のコードで見てみましょう。

次のようなWidgetAを作ります。

class WidgetA extends StatelessWidget {
  const WidgetA(this.text);
  final String text;
  @override
  Widget build(BuildContext context) {
    return Center(
      child: SizedBox(
        height: 100,
        width: 200,
        child: Card(
          color: Theme.of(context).primaryColor,
          child: Center(child: Text(text)),
        ),
      ),
    );
  }
}

レイアウト用のWidgetか挟まってて見にくいですが、重要なのはここだけです。

class WidgetA extends StatelessWidget {
  @override
  // contextはここで引数として与えられる
  Widget build(BuildContext context) {
    return
      Card(
          // 自分が置かれた文脈に設定されているThemeを調べている
          color: Theme.of(context).primaryColor,
      ),
    );
  }
}

Theme.of(context)の部分で、自分が置かれた文脈におけるThemeを探しに行き、自分自身の色として適用しています。

このWidgetAを、次のように配置してみましょう。

class MyApp extends StatelessWidget {
  @override
  Widget build(BuildContext context) {
    return MaterialApp(
        theme: ThemeData(primaryColor: Colors.pink),
        home: Scaffold(
          appBar: AppBar(),
          body: Column(
            children: <Widget>[
              Theme(
                  data: ThemeData(primaryColor: Colors.amber),
                  child: const WidgetA('Fuga')),
              Column(
                children: <Widget>[
                  const WidgetA('Foo'),
                  Theme(
                      data: ThemeData(
                        primaryColor: Colors.teal,
                      ),
                      child: const WidgetA('Bar'))
                ],
              )
            ],
          ),
        ));
  }
}

ツリー図にするとこんな感じです。

Qiita用Widgetツリー図 context.png

それぞれのWidgetが何色のThemeの傘下になっているかによって色分けしてあります。

MaterialAppに色が設定してありますが、実はMaterialAppにはデフォルトのThemeを設定する機能がありまして、そこにピンク色を設定してあります。

これを

void main() => runApp(MyApp());

として実行すると次のようになります。

Screen Shot 2019-09-05 at 11.16.08.png

それぞれのWidgetが、自分の先祖にいるThemeを見つけてその色に染まっているのがわかると思います。

Fooと書いてあるWidgetAは、先祖にThemeがいないので、MaterialAppに設定されているピンク色になっていますね。

また、よく見ると最上段のAppBarもピンク色になっています。(時間や電波状況が表示されている部分)

これはScaffoldWidgetの一部なのですが、Scaffoldも、すぐ親にMaterialAppがいるのでピンク色になっています。

#【注意】contextの位置が高すぎる場合

いちいちWidgetAなんて作らずに、単にズラズラとWidgetを配置していったらどうなるでしょうか?

つまりこういうことです。

レイアウト用のコードも挟まってて見にくいので、重要な部分だけ取り出したコードも下に載せておきます。

class MyApp extends StatelessWidget {
  @override
  // contextはここで与えられる
  Widget build(BuildContext context) {
    return MaterialApp(
        theme: ThemeData(primaryColor: Colors.pink),
        home: Scaffold(
          appBar: AppBar(),
          body: Column(
            children: <Widget>[
              Theme(
                  data: ThemeData(primaryColor: Colors.blue),
                  child: Center(
                    child: SizedBox(
                      height: 100,
                      width: 200,
                      child: Card(
                        color: Theme.of(context).primaryColor,
                        child: Center(child: Text('Fuga')),
                      ),
                    ),
                  )),
              Column(
                children: <Widget>[
                  Center(
                    child: SizedBox(
                      height: 100,
                      width: 200,
                      child: Card(
                        color: Theme.of(context).primaryColor,
                        child: Center(child: Text('Foo')),
                      ),
                    ),
                  ),
                  Theme(
                    data: ThemeData(
                      primaryColor: Colors.green,
                    ),
                    child: Center(
                      child: SizedBox(
                        height: 100,
                        width: 200,
                        child: Card(
                          color: Theme.of(context).primaryColor,
                          child: Center(child: Text('Bar')),
                        ),
                      ),
                    ),
                  )
                ],
              )
            ],
          ),
        ));
  }
}

重要なところだけ版

class MyApp extends StatelessWidget {
  @override
  // contextはここで与えられる
  Widget build(BuildContext context) {
    return MaterialApp(
        theme: ThemeData(primaryColor: Colors.pink),
        home: Column(
            children: <Widget>[
              Theme(
                  data: ThemeData(primaryColor: Colors.blue),
                      child: Card(
                        color: Theme.of(context).primaryColor,
                        child: Center(child: Text('Fuga')),
                      ),
                    ),
              Column(
                children: <Widget>[
                      child: Card(
                        color: Theme.of(context).primaryColor,
                        child: Center(child: Text('Foo')),
                      ),
                  Theme(
                    data: ThemeData(
                      primaryColor: Colors.green,
                    ),
                        child: Card(
                          color: Theme.of(context).primaryColor,
                          child: Center(child: Text('Bar')),
 // 閉じカッコ略
}

実行結果がこちら

Screen Shot 2019-09-05 at 11.29.59.png

ウィジェットツリー内のThemeCardの位置関係はまったく変わっていないのに、Cardが自分の先祖にいるThemeにアクセスしてくれません!!

実はコードをよく見ると、引数contextが与えられているのはMyAppのbuild関数だけです。これはMaterialAppよりもさらに親です。

Theme.of(context)は与えられたcontextの地点からスタートしてツリーをさかのぼり、Themeを探しに行くことになりますが

そこ(MaterialAppよりも親)からスタートしてさかのぼっても、もうWidgetはありません。もちろんThemeもありません。

ということで、何も見つからないので、3つのCardはFlutterのデフォルトカラーである青色になってしまいました。

Hoge.of(context)でさかのぼりを開始するスタート地点は、そのコードを記述した位置ではなく、引数contextが与えられた位置からなので注意してください。

#contextを途中で置き換える方法

このようにcontextの与えられる位置が高すぎる場合は、もっと下層でcontextを**「発生」**させなければなりません。

その方法を2つ紹介します。

##自作Widgetを挟む

はじめのコードでやっていた方法です。WidgetAのような自作Widgetを用意すれば、自動的にその中にbuild関数があるはずですから、そこでcontextを受け取ることになります。

##Builderを使う

実はFlutterにはそういう時に使えるWidgetが用意されています。

BuilderというWidgetがそれです。

Builder Class

これを挟み込むと、そこでcontextを受け取れます。

#参考

ということで「お気持ち」の説明は以上です。

より詳しく知りたい方はこちらの記事がおすすめです。

FlutterのBuildContextとは何か

また、私の記事ですが、BuildContextと密接な関わりのあるInheritedWidgetについても書きましたのでぜひご覧ください。

InheritedWidgetの目的と使い方【Flutter】

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