心理的安全性について 202301
(本稿は、昨年社内向けに編纂した内容の転載です)
このドキュメントによって伝えたいこと
「心理的安全性の確保」とは、すぐに妥協する、ユルい組織になることではありません。
心理的安全性と仕事の基準をともに高く保つことで「学習して成長する」組織になることを目指しています。
また、心理的安全性が担保された環境においては「意義のある意見の対立」を推奨することが可能になります。
組織のフェーズによって避けられないこともある意見の対立を、健全に促進することができます。
変化が激しく正解のない時代に不可欠な要素としての、「学習して成長できる組織」は、全メンバーで主体的に作り上げるものと考えます。
そのきっかけの第一弾として、この「心理的安全性の確保」の取り組みが機能することを目標として、以下の内容を紹介させていただきます。
「心理的安全性」について
「心理的安全性」の確保とは
「心理的安全性」が確保された状態とは、組織やチーム全体に成果に向けた率直な意見、素朴な質問。そして違和感の指摘が、いつでも誰もが気兼ねなく言える状態です。
また、後述の「4因子」が高次に保たれ、後述の「心理的"非"安全な組織がもたらす対人関係リスク」が存在しない状態を意味します。
効果
チームの「心理的安全性」の向上は以下の効果をもたらします。
-
中長期における「チームの学習」
- チームのパフォーマンスの向上
- チームの創造性の向上
- 多用なアイデアの効果的な活用
- 離職率の低下
- 収益性の向上
- チームへの満足度、エンゲージメントの向上
意識したいこと
「心理的安全性」の確保は、何かを避ける取り組みではなく、むしろ積極的にチームの成長を目指す取り組みです。
- 奨励するのは「意見の建設的な衝突」
- ユルいチームを目指すわけではない
- 相手への信頼と敬意が不可欠
- 「大切なものへ向かっていく」という意識共有のもとに、建設的な意見交換をする
- ユルいチームを目指すわけではない
心理的"非"安全な組織がもたらす対人関係リスク
心理的"非"安全な組織では、以下のようにメンバーの行動を抑止する作用が働きます。
- 「無知」だと思われたくない
- 必要なことも質問、相談をしない
- 「無能」だと思われたくない
- ミスを隠す
- 自分の考えを言わない
- 「邪魔」だと思われたくない
- 必要な助けを求めない
- 不十分な仕事で妥協する
- 「否定的」だと思われたくない
- 是々非々で議論をしない
- 率直に意見を言わない
4因子
「心理的安全性」を確保する行動は、以下の4つの構成要素の1つ、または複数の組み合わせから成り立っています。
- 話しやすさ
- 助け合い
- 挑戦
- 新奇歓迎 (自分にない才能、強みを受け入れ活かすこと)
4因子の行動目的
- 話しやすさ
- 仕事と相手の状況を把握し、多用な視点で状況を判断し、率直な意見とアイデアを募集する
- 助け合い
- トラブルに迅速、確実に対処したり、より高いアウトプットを目指す
- 挑戦
- 組織に活気を与え、時代に合わせて新しいことを模索し、変えるべきことを変える
- 新奇歓迎
- ボトムアップに才能を輝かせ、多用な視点から社会の変化を捉え対応する
行動のポイント
「心理的安全性」確保に向けた行動の軸は、以下の1点にあります。
- 相手の、望ましい行動を増やし、望ましくない行動を減らすこと
相手がつぎも同じ行動をとってくれる確率について
- 増える行動 : 称賛、感謝、歓迎、etc...
- → ポジティブ因子
- 減る行動 : 否定、問い詰める、叱責、etc...
- → ネガティブ因子
- ネガテイブ因子によって相手の継続的な行動変容は生まれない
- 望ましい行動が増えることを優先的に行う
- → ネガティブ因子
4因子別、意識するポイント
「心理的安全性」の4因子ごとに、具体的に意識できるとよいポイントがあります。
話しやすさ
- 「歓迎したい行動自体」と「行動の品質」を切り分ける
- 歓迎すべき「行動自体」は感謝、称賛する
- 望ましい行動を増やす
- まだ高くないスキル、品質は別途アプローチする
- 歓迎すべき「行動自体」は感謝、称賛する
- 具体的に投げかける
- 「何でも言ってね」は役に立たない
- 言い出しづらいこと、反対意見、異なる見解、改善点を引き出す
- 意義のある対立を推奨する
- 「私はこう感じた」
- 相手へのFBは「こうすべき」ではなく「I message」で
助け合い
- 「聞く」
- 相手が助けを求めるきっかけをつくる
- 「相談・報告してほしい」
- ともに問題に取り組み解決するために、相談・報告を求める
- 「なに」、「どこ」で聞く
- 「なぜ」はネガティブな文脈になりやすい
- 「なに」が大切?
- 「どこ」を改善する?
- 「どこ」で「なに」が起きたか?
- 「罰せられている」、「責められている」と相手に感じさせない
- 「なぜ」はネガティブな文脈になりやすい
挑戦
- 促進の心得
- 挑戦を歓迎する
- 工夫を促す
- 機会を与える
- 常識はずれを歓迎する
- 範囲を限定し、工夫・改善を依頼する
- 「なんでもいいから、広く、面白いアイデア」は、集まらない
- テーマを絞って募る
- 学びをシェアし「サクッと試す」雰囲気づくり
- 挑戦を促進する、ポジティブ因子として働くみかえり
- チャレンジ自体を称える
- 経過・プロセスを見守る
- 結果をともに振り返り、ともに学ぶ姿勢
- 一連の挑戦を事例として、組織内周知する
新奇歓迎
- 歓迎の心得
- 同意を求めず違いを歓迎する
- 個性・らしさに応じた最適配置・役割ぎめ
- さまざまな視点、ものの観方を歓迎する
- 個人のアイデンティティを重視
- 他メンバーへの敬意を持ちつつ、自身の強みを発揮する
- 価値づけされた行動(Valued Behaviors)
- 打ち込める
- 困難や逆境があってもその領域の行動をとり続けられる
- ひとりひとり異なる
- 個性、強みの発揮
「心理的安全性」に関わる市場実績
- Googleによる調査、分析が発端
- 「効果的なチーム」の分析結果
- 重要なファクターは「チームがどのように協力しているか」
- そのうちもっとも重要な「心理的安全性」が以下に寄与
- 離職率が低い
- 収益性が高い
- 「効果的なチーム」の分析結果
- ウィプロ社による調査
- 個人のアイデンティティを重視したグループと他グループの比較
- 顧客満足度が高い
- 社員定着率が33%高い
- 個人のアイデンティティを重視したグループと他グループの比較
- 日立製作所の分析
- 「心理的安全性」の高いチーム
- 5〜10分の短い会話の頻度が高い
- 「週次の1時間定例会議は毎日の5分の会話の代わりにはならない」ことを立証
- 「心理的安全性」の高いチーム