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【Deno 1.20〜】公式タスクランナー、`deno task`コマンドの使い方

Last updated at Posted at 2022-04-02

タスクランナーとは、コマンドに対してショートカットを設定しておくことができる機能です。サーバー立ち上げやビルド用のコマンドをあらかじめタスクランナーに設定しておくことで、開発体験を向上することができます。Node.jsではnpm scriptsが一般的に使われています。

Deno1.20では、タスクランナーがDeno CLI本体に入りました。基本的にはnpm scriptsと同じ機能なのですが、デフォルトでクロスプラットフォーム対応になっているなど、違う所もあります。

deno task コマンドの使い方

タスクの設定

まず、deno.json(c)でタスクの内容を設定します。
※deno.json(c)の構文についてはこちらの記事を参照してください。

deno.jsonc(例)
{
  "tasks": {
    // "<タスク名>": "<タスク内容>" の形で定義する
    // deno task hello
    "hello": "deno eval \"console.log('hello')\"",
    // deno task world
    "world": "deno eval \"console.log('world')\"",
    // deno task args hello world # output: ["hello", "world"]
    "args": "deno eval \"console.log(Deno.args)\"",
    "echo": "echo hello world",
    "nesting": "echo $(deno eval \"console.log('hello world')\")",
    "concat1": "echo 1 && echo 2",
    "concat2": "deno eval \"Deno.exit(1)\" || echo 2",
    "pipe": "echo hello world | deno eval \"Deno.stdin.readable.pipeTo(Deno.stdout.writable)\"",
    "var": "VAR=hello && echo $VAR && deno eval \"console.log(Deno.env.get('VAR'))\"",
    "export": "export VAR=hello && echo $VAR && deno eval \"console.log(Deno.env.get('VAR'))\""
  }
}

このdeno.jsonを置いたディレクトリより下層のディレクトリでは、定義したタスクが有効になります。
タスク名として使えるのは英数字+コロン(1文字目は必ず英字)です。(^[A-Za-z][A-Za-z0-9_\\-:]*$
以下、このdeno.jsonを使って解説していきます。

タスクを実行

ターミナルでdeno task <タスク名>というコマンドを打つと、タスクが実行されます。

> deno task hello
Warning deno task is unstable and may drastically change in the future
Task hello deno eval "console.log('hello')"
hello

タスク名の後に引数を渡すと、その引数はそのままコマンドに渡されます。

> deno task args hello world # hello worldが引数の部分
Warning deno task is unstable and may drastically change in the future
Task args deno eval "console.log(Deno.args)" "hello" "world"
[ "hello", "world" ]

タスクのリストを表示

ターミナルでdeno taskコマンド(引数無し)を打つと、タスクのリストが表示されます。

> deno task
Warning deno task is unstable and may drastically change in the future
Available tasks:
- args
    deno eval "console.log(Deno.args)"
- concat1
    echo 1 && echo 2
- concat2
    deno eval "Deno.exit(1)" || echo 2
- echo
    echo hello world
# ...(以下略)

タスクの文法

コマンドの連結や入れ子、glob展開がサポートされています。

複数コマンドの実行

文法 意味
<command1> && <command2> command1が成功(exit code 0)したらcommand2を実行する
<command1> || <command2> command1が失敗(exit code 1)したらcommand2を実行する
<command1> ; <command2> command1が終了したら成功・失敗に関係なくcommand2を実行する
<command1> & <command2> command1command2を並列に実行する
# 1つ目が成功したら2つ目を実行
echo hello && echo world
# 1つ目が失敗したら2つ目を実行
echo hello || echo world
# 1つ目が終了したら2つ目を実行
echo hello ; echo world
# 1つ目と2つ目を並列実行
echo hello & echo world

出力のパイプ・リダイレクト

文法 意味
command1 | command2 command1のstdoutをcommand2にパイプする
command1 |& command2 command1のstdoutとstderrをcommand2にパイプする
command > filename command1のstdoutをファイルにパイプする(ファイルを上書き)
command 2> filename command1のstderrをファイルにパイプする(上書き)
command &> filename command1のstdoutとstderrをファイルにパイプする(上書き)
command >> filename command1のstdoutをファイルにパイプする(追記)
# 1つ目のstdoutを2つ目のstdinに渡す
echo hello world | deno eval 'Deno.stdin.readable.pipeTo(Deno.stdout.writable)'
# 1つ目のstderrを2つ目のstdinに渡す
deno eval 'console.log(1); console.error(2);' |& deno eval 'Deno.stdin.readable.pipeTo(Deno.stdout.writable)'

# stdoutをファイルに出力する
deno eval 'console.log(1); console.error(2);' > file.txt
# stderrをファイルに出力する
deno eval 'console.log(1); console.error(2);' 2> file.txt
# stdoutとstderrをファイルに出力する
deno eval 'console.log(1); console.error(2);' &> file.txt

# stdoutをファイルに追記する
deno eval 'console.log(1); console.error(2);' >> file.txt
# stderrをファイルに追記する
deno eval 'console.log(1); console.error(2);' 2>> file.txt
# stdoutとstderrをファイルに追記する
deno eval 'console.log(1); console.error(2);' &>> file.txt

出力の破棄

/dev/nullへリダイレクトすることで出力を捨てることができます。(Windowsでも動作)

# stdoutを破棄する
deno run main.ts > /dev/null
# stderrを破棄する
deno run main.ts 2> /dev/null
# stdoutとstderrを破棄する
deno run main.ts &> /dev/null

シェル変数と環境変数

シェル変数はシェル内でのみ参照できる変数、環境変数は生成したプロセス内でも参照できる変数です。

文法 意味
VAR_NAME=<val> シェル変数VAR_NAMEに値を代入する(値は生成したプロセス内で利用できない)
export VAR_NAME=<val> 環境変数VAR_NAMEに値を代入する(値は生成したプロセス内で利用できる)
$VAR_NAME シェル変数や環境変数を使用する
VAR=hello && echo $VAR
export VAR=hello && deno eval "console.log(Deno.env.get('VAR'))"
VAR=hello && echo $VAR

コマンドの入れ子

文法 意味
$(<command>) コマンドを入れ子にする
echo $(deno eval 'console.log(1)')

終了コードの反転

文法 意味
! <command> コマンドの終了コードの失敗/成功を反転する
# 終了コードを反転させる
! deno eval 'Deno.exit(1)' # exit codeは0
! deno eval 'Deno.exit(0)' # exit codeは1

glob展開

Deno v1.34以降、ファイル名に対してglob展開を行うことができます。
rustのglobライブラリを使用して実装されているようです。そのドキュメントによると使用できる構文は以下のものです。

文法 意味
? 任意の1文字に一致
* 任意の文字列に一致 (空文字列にも一致)
** カレントディレクトリと任意のサブディレクトリに一致
ただし、**ab**, ***のような構文はエラー
[...] 括弧内の任意の文字と一致
(例:[0-9]/[a-b]/[abc])
Unicode順に従って文字の範囲を指定することができる
[!...] 括弧内にない任意の文字と一致
(例:[!0-9]/[!a-b]/[!abc])

メタ文字(?, *, [, ])自体にマッチさせたい時は、各括弧[]構文を使用してマッチできます。(例: [?])

  • [[][]]はそれぞれ[]という文字に対してマッチする。
  • [![][!]]も同様に、それぞれ[]という文字以外に対してマッチする。
  • [...]内で-という文字にマッチさせたい時は、先頭か末尾に配置する
    (例:❌[a-b]、⭕[-ab])
# カレントディレクトリより下層にあるすべての.tsファイルにマッチ
echo **/*.ts
# カレントディレクトリの.tsファイルにマッチ
echo *.ts
# data0.csv から data9.csv まで連番でマッチ
echo data[0-9].csv

クロスプラットフォーム対応

npm scriptsの場合、Windows/Linux/Mac OSの間でクロスプラットフォームなコマンドを書くためにはshxなどのパッケージをインストールする必要がありました
(例えばrmなどはwindowsに存在しないので、こうしたパッケージを通して使う必要があった)

一方、deno taskではクロスプラットフォーム対応のコマンドが最初から組み込まれています
Deno1.34時点では以下のコマンドがデフォルトで組み込まれており、Windowsでも追加パッケージ無しで使えるようになっています。

  • cp : ファイルをコピーする
  • mv : ファイルを移動する
  • rm : ファイルを削除する(例:rm -rf [FILE]...
  • mkdir : ディレクトリを作成する(例:mkdir -p DIRECTORY...
  • pwd : カレントディレクトリを表示する
  • sleep : n秒待つ(例:sleep 1
  • echo : 文字列を表示する
  • cat : ファイルの内容を読み取って出力する (ファイルが指定されていない場合はstdinを読み取って出力する)
  • exit : シェルからexitする
  • unset : 環境変数を削除する(例:unset VAR_NAME)
  • xargs : 標準入力から渡されたデータを引数に渡す

使い方については、同名のUnixコマンドと同じです。

これらのコマンドがなぜWindowsでも使えるのかというと、deno_task_shellリポジトリでシェルごと実装されているからです。もし他に追加してほしいコマンドがあれば、このリポジトリでissueを開くと追加してくれるそうです。
LinuxやMacでこの組み込みコマンドではなくOSのコマンドを使用したい場合は、shコマンドを使います(例:sh -c cp source destination

まとめ

  • deno.json(c)でタスクを使うとdeno taskコマンドから利用可能
  • デフォルトでクロスプラットフォーム対応している

従来は、Denoのタスクランナーとしてvelociraptorやmakefileが使われていました。一方で、Deno本体にクロスプラットフォームなタスクランナーを搭載してほしいという要望もあり、deno taskが実装されました。

これからは3rd party製のツールに頼ることなく、タスクランナーを使うことができます。

最近では標準ライブラリにdotenvモジュールが追加されるなど、基本的に全員がインストールすることになるツールはデフォルトで使えるようになっているのがDenoの嬉しい所です。

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