ある高校のベテラン教諭が、 説明をする前にプリントを配ってはいけない とおっしゃっていました。
プリント配布後に説明をしようとしても、生徒の注意はすでにプリントに向いてしまっているので、教師の話は頭に入ってこないぞと。
先に集中して話を聞かせた後で、はじめてプリントを生徒の目に入れるのが良い。
あとになって思えば、これは授業の UI/UX の話だったわけです。
これに学び、日頃の会議をUI/UXの観点からデザインし直してみました、という話。
タイムキープ問題
会社を良くするために1日30分だけ話しあう時間をとりましょうという試みをやっていたんですが、どうにも30分で終わらないことが多く、ズルズルと1時間近く続いてしまいがちでした。
きっちり決めた時間で終わりたいのに、会議中に終了時間を意識できていないのだとしたら、これはたぶんデザインが間違っているわけです。
タイムキープのUI
というわけで、常に終了時間を意識できるように、シンプルなタイマーアプリを作って、画面に表示しておくようにしました。
残り時間が減るにつれてでっかくなっていく。
00:00を過ぎると、赤文字になって超過時間をカウントアップしていきます。
成果
赤文字にしたのも効果があったのか、なんだか「早く終わらせないと!」という気持ちになるらしく、会議の平均時間は目に見えて短くなりました。
反面、残り時間がわずかになると、参加者の注意が完全にタイマーに言ってしまって、話に集中できなくなるデメリットはあるように思います(というかそれを狙っているんだから当然ではある)。
議事録の改善
顔をあわせて口頭で行う会議は、やりとりが速い・感情が伝わりやすいといったメリットがある反面、以下のような問題が起こりがちです。
- 道をそれたまま議論が盛り上がり、気づけば当初の課題が未解決のまま
- 発言の意図が正しく伝わらない
- 後になってから「言った」「言わない」でもめる
- その場の空気に流されて結論が極性化する
これらのような問題の多くは、議論される内容が可視化されていないことに起因する部分が大きいように思いました。
ということは、議事録のデザインです。
議事録のUI
前述の問題を解消するためには、参加者が議事録をリアルタイムで共有する必要があります。
つまり、 全員に見える状態で議事録をとる ということ。
画面上にエディタを表示し、そこで議事を記録していきます。
構造化された文章を素早く打ち込むには、markdownが最適でしょう。
ブラウザで利用できるエディタとして、はじめは かんたんMarkdownを利用しました。
しかし、この用途で使うには若干の不都合がありました。
(多くのmarkdownエディタがそうですが)編集欄とプレビュー欄でペインが左右に分かれているため、参加者のフォーカスがばらけてしまいます。
これでは、効果が半減してしまう。
そこで、StackEditを使います。
StackEditも左右でペインが分かれていますが、編集欄自体もWYSIWYG(What You See Is What You Get)になっており、プレビュー欄なしでも、ちゃんと整形された状態で見ることができます。
成果
タイマーと比べると議事録は、わかりやすく大成功!といえるほどの成果はなかったかもしれません。
- 議論が盛り上がると、議事録を書いている途中であっても置いてけぼりにして進んでしまう
- 結局、見ないひとは見ない
- 議事録を書く係をやりたくない
といった状況も見られ、まだ改善の余地がありそうです。
ただ、少なくとも決定事項に関しては、「これで決定でいいですね?」というのを書いて文字で共有するので、認識の一致は取りやすくなった気がします。
まとめ
物事がうまくいかないときに、個々の意識の問題にするのは簡単(必ず個々の意識にも問題はあるので)ですが、「UI/UXの設計は間違っていないか?」という観点を持てるようにしておくと、問題解決の手段が増えるかもしれません。