はじめに
「資料はあるのに活用できない」「部門ごとにナレッジが分断されて検索に出てこない」
仕事をしているうえで、このように感じることはないでしょうか?
Google Agentspaceは、このような課題に対して、全ての企業データを統合するエージェントにより組織全体で知見を使い回せる状態を目指すフルマネージドのSaaS型AIエージェント プラットフォームです。
本記事ではAgentspaceって何者?何ができるの?ADKと何が違う?という観点について整理しています。
Agentspaceとは何か?
Agentspaceは、Googleが提供するAIエージェントサービスです。
データがホストされている場所に関わらず、社内のデータを統合することができ、検索・要約・生成・アクション(メール送信やカレンダー登録)などを実行することが可能です。
また、2025年8月にGA(一般提供)されたため、GCP環境があればライセンスを購入することで誰でも利用できるようになりました。
Agentspaceライセンス1
ライセンスの構成も今後変動する可能性がありますが、現状Agentspaceを使用したい場合は、Agentspace Enterprise Plusライセンス(1ライセンスあたり月額$45)を購入する必要があります。
また、このライセンスにはNotebookLM Enterpriseも含まれるため、NotebookLMも利用することが可能です。(NotebookLM Enterpriseのみのライセンスは1ライセンスあたり月額$9)
Agentspaceで何ができるの?
Agentspaceは主に以下を行うことができます。
- データソース接続による情報検索
- 既存エージェントの利用
- ノーコードでのエージェント作成(AgentDesigner)
- アクションの設定
ここでは、Agentspaceを利用する際に、まず最初に取り掛かるであろう情報検索と既存エージェント利用について紹介します。
データソース接続による情報検索
Agentspaceは、Google製品だけでなく3rd-Partyのデータソースなどとも接続することで横断的なRAG検索システムを簡単に構築することができます。
特に対応している3rd-partyが多く、Google製品をメインで利用していない企業でもAgentspaceの導入が検討しやすいのも良い点かなと思います。
ただし、現状はGA後間もないということもあり、Preview段階のものも多かったりするので、そこは確認が必要そうです。おそらく今後もっと接続可能なデータソースが増えていくと思われます。
接続できるデータソース
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Google製品2
- BigQuery
- CloudStorage
- GoogleDrive
- Gmail
- GoogleCalendar など
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3rd-party3
- Jira
- OneDrive
- Outlook
- SharePoint Online
- ServiceNow
- Asana
- Box
- Github
- Salesforce
- slack など
データ接続の仕組み
1つのAgentspaceアプリに対して複数データ(データストア)を接続することができます。
データストアは新規作成もしくは、他のAgentspaceアプリに接続している既存のデータストアを追加することが可能です。
また、データストアはデータ形式やフォルダ単位、データソースごとなどユーザの利用用途に合わせて作成することができます。
既存エージェントの利用
Agentspaceは、主に以下の画面を操作することで利用できます。
特にエージェントを指定しない場合は、Geminiを搭載したエージェントが接続されたデータストアを参照して回答を生成してくれる仕様です。
また、拡張機能として以下があります。
ツール選択
エージェント内で特定の機能を実施することが可能。
ソース選択
ソースとして社内情報だけでなく、web情報も使用することができるので、社内外の情報を統合して調査することができます。(不要な社内情報を外すことも可能)
Googleが提供する特定タスクを実施するエージェント
Googleが提供している既存エージェントは現在以下の2種類
- DeepResearch
- アイデアの生成(Preview)
①DeepResearch
社内情報をもとにDeepResearchを行ってくれるエージェント。
調査を依頼すると、最初にリサーチプランを作成し、「リサーチを開始」を押すとDeepResearchを実行してくれる流れ。
②アイデアの生成
与えられた目標に対して、複数アイデアを検討してくれるエージェント。
アイデア生成を依頼するとまず検討項目を列挙されるので、確認後「セッションを開始」を押してアイデアの検討を行います。
アイデア検討は、重点分野の検討 ⇒ アイデアの生成 ⇒ アイデアの確認 ⇒ トーナメント実行の手順で実施されます。実行時間は結構長めで、自分の環境で実施した際は約50分ほどかかりました。
結果としては、以下のように複数のアイデアが評価の高い順に並べられます。
Agent Development Kit(ADK)とは何が違う?
エージェントを使ってみたいと思った場合、どちらを使うのがよいでしょうか?
大前提として、AgentspaceはSaasのAIエージェントサービスなのに対して、ADKはエージェント開発を行うためのフレームワークです。
AgentspaceとADKの特徴比較
観点 | Agnetspace | ADK |
---|---|---|
立ち上げ速度 | ノーコードで素早く開始可能 | 設計やテストなど初期工数が増える |
学習コスト | UIベースのため学習負荷低め | 言語・フレームワークの学習が必要 |
制御 | 高度なガードレールや分岐設定は不可 | tool, callback等で厳密に制御可能 |
拡張性 | 特殊要件への拡張は難しい | 外部APIや既存システムなどへの統合が可能 |
上記の表を見る限りだと、スピード重視、プログラミングやエージェント初心者などであればAgentspaceを使うのが良さそうです。
他にも、とりあえず社内情報の横断検索ができればOK、DeepResearchなどの既存エージェントで十分などであれば、まずAgentspaceから試すというのが良さそうかと思います。
一方で、ADKの方が細やかなフローの設定や制御ができる、外部システムと連携可能という強みがあるため、複雑な業務ユースケースを実行する場合はADKが向いていると思います。
また、ADK上でAgentspaceを呼び出してRAG検索を行うということもできるので、ハイブリッドな使い方をするのも可能です!
まとめ
Agentspaceについて、サービス内容や使用できる機能を中心に情報を整理してみました。
Agentspaceの機能はまだPreview段階のものも多いですが、これから成長していくサービスだと思うので注目していきたいと思います。
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ライセンス購入手順 https://cloud.google.com/agentspace/docs/licenses (※GCPコンソール上のライセンス購入画面で現状選択できるライセンスが確認できます) ↩
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接続可能なGoogle製品一覧 https://cloud.google.com/agentspace/docs/create-data-store ↩
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接続可能な3rd-party一覧 https://cloud.google.com/agentspace/docs/connect-third-party-data-source ↩