この記事はSpaceApps Japanアドベントカレンダーの18日用の記事です。
私は2016年からSpaceApps Challengeのチャレンジ翻訳に携わってきました。その作業の忘備録もかねて、少し裏話的ですが、Google翻訳導入のことなどを書き留めます。
##筆者のバックグラウンド
筆者は学部と修士をアメリカの大学で過ごし、今は京都大学の博士後期課程にいる太陽・太陽圏物理学者(の卵)です。英語は専門家向けから一般向け、コーヒーブレイクの会話まで一通りこなせます。(愚痴:Technical writingの授業が日本の大学にはないらしいことには驚きました。この授業を必修にするだけでも学生のレベル上がるだろうに)
##やったこと
NASAの全世界同時ハッカソンSpaceApps Challengeは当然のことながら全て英語で運営されています。しかし参加者のハードルを出来るだけ下げるため、日本の会場運営者は、チャレンジ(お題)の非公式の和訳を用意してきました。
2016年に運営者のグループ(SpaceApps Japan)に参加した時には前年のノウハウがあった気がします。HackPadにみんなで少しずつ翻訳していくというものでした。
様相が変わったのが2017年の翻訳の時です。ほとんどの翻訳を私がHackPadに入れていたのですが、その時Google翻訳の精度がかなり上がっていることに気づきました。そこで今年からGoogle翻訳をシステマティックに翻訳作業に組み込みました。今年の手順は、
- チャレンジの英文をGoogle Documentにコピー(HackPadなくなったので)
- 各チャレンジへの目次や作業工程表をドキュメント冒頭に準備
- 段落毎に原文に続けてGoogle翻訳の挿入を運営者グループに依頼(1日ほどで終わってビビった)
- 私がGoogle翻訳の手直し
- Google Documentにて公開
を想定してました。3までは予想通りに進みましたが、4がやはり時間がかかりました。1カテゴリー(3~4チャレンジ)をチェックするのに2時間ほどかかり、1日に1カテゴリーが限界でした。それでも前回は1日に1チャレンジ翻訳したら疲れ切ったので、かなりの省力化となりました。
また、SpaceApps Japanのブログをもっと活用してという話もあり、チャレンジの翻訳の公開先をGoogle DocumentからHatenaに変更し、1カテゴリーごとに公開としました。そのためで、2システムの差異を吸収する作業に1時間ぐらい取られることに。
##やられたこと
チャレンジの翻訳自体はなんとか本番には間に合ったのですが、プレイベントには間に合わなかったところもあり、異なる訳(要約)が出ました。その内容はともかく、異なる邦題が乱立する結果となりました。
##Google翻訳使えるね^^
Google翻訳はそれなりの精度をもってはいますが、非常にフランクな表現や専門用語、前後の文からの意味の伝達は苦手と感じました。
例えばPolar Opposite!の一部では、原文が
For example, are there differences in ice coverage in the same location between one day of the year (e.g. April 29, 2017) and the same day of other years (April 29, 2016; April 29, 2015; and so on…)?
のところを、Google翻訳では
たとえば、1年のうちの1日(たとえば、2019年4月29日)と他の年の同じ日(2016年4月29日、2015年4月29日など)の間で、同じ地域の氷のカバレッジに違いがありますか?
となりましたが、SpaceApps Japan訳では
たとえば、1年のうちの1日(たとえば、2019年4月29日)と他の年の同じ日(2016年4月29日、2015年4月29日など)の間で、同じ地域の氷が覆う領域に違いがありますか?
と、不要なカタカナ語(カバレッジ)の排除を行いました。今、見返すともっと手直ししたい部分ありますが、読みやすさの向上はすれど意味上での齟齬は発生しないでしょうし、こんなところだと思います。
あともう一つ。こちらは翻訳の妙という例を。
Looking GLOBE-allyというチャレンジがありました。globally(グローバルに)とglobe(地球)+ally(同盟・味方)とを掛け合わせたものですが、Google翻訳では
Glob-allyを見る
と情緒も意図もなくなった訳となってしまいます。そこでSpaceApps Japan訳では、
地球のミカタ
と、見方と味方を掛け合わせた、本来のニュアンスを維持した訳にしました。この訳は今年の翻訳作業で最もうまくいったと自画自賛しています。
##来年にむけて
2019年のSpaceApps Challengeは10月18-20日(金-日)だそうです(公式アナウンス)。おそらく多くの会場は19-20日の土日となるかと思います。
来年の翻訳作業では今年の経験を踏まえ以下のような点に気を付けて作業手順を考えていきたいと思います。
- Google翻訳は下書き程度には使える
- 一言二言で説明できる単純作業は大人数で平行して処理
- できればGoogle翻訳の簡単な手直しも並列化したい
- 各チャレンジの題名は最初に固めておく
- 各チャレンジの題名と簡単な要約は仮でもいいからプレイベント前に欲しい
邦題と要約まではチャレンジ出てから3日ぐらいで出せたらなぁ。。。