はじめに
初めまして、tarurikaです!
CA Tech Lounge Advent Calendar 2024の11日目を担当するということで、初めて記事を投稿します。
さて今回は、「ドイツへ研究留学した際に詰められた話」というテーマで、日本とドイツ(ヨーロッパ?)の研究に対する考え方の違いの部分についてお話ししたいと思います!
また、研究留学中のTech Lounge生としての過ごし方についても少し触れようと思います。
ドイツで取り組もうとしていたこと
教育の専門家が保育所を分析する際のタスクを支援するシステム開発を最終目標としていました。特に、ドイツで所属した研究室がネットワーク可視化に精通した研究室だったため、ネットワークに関連したシステム開発に取り組みました。
当初、私は複数の保育所の比較分析を可能にするために以下のような分析システムの構築を検討していました。
- 画面左側の[Compare two nursery schools]と記載のトグルボタンを選択する。
- マップ上の特定のピンを2つ選択する。
- マップ左側に3D共起ネットワークを可視化して、NurserySchool-1のノードとNuserySchool-2のノードの共通部分をエッジで接続する。
※ノードは各保育所の評価データの単語を抽出したもの
研究相談で詰められた話
留学先の教授との初回面談で前章で述べた内容について話すと以下の質問が返ってきました。
ドイツで聞かれたこと
- 研究は誰のために行うのか。
- 研究は社会的に意義があるのか。
- そもそもこの事象の可視化は役に立つのか。
- 2つの保育所を比較する必要性があるのか。保育所を比較する場面は存在するのか。
- 3次元で可視化する意味はあるのか。エッジの色を保育所ごとに変更させることで2次元の共起ネットワークで可視化することは可能なのではないか。
日本とドイツの研究に対する考え方の違い
日本で国内学会に参加した際には、研究に使用している手法についての質問が多く寄せられる場合が多かったのですが、ドイツでは上記のように研究に使用されている技術についてというよりも研究が社会に適用されるまでの過程を意識した質問がメインで、研究のストーリーを重要視しているように感じました。
アドバイスを活かして実践したこと
-
研究のターゲットを明確にする
教育専門家という漠然としたターゲットから、地方自治体や保育所を運営する団体へとターゲットを細かく絞り込むことによって追加すべきシステムについて考えやすくなりました。 -
共起ネットワークの使用方法を細分化する
場合に分けて共起ネットワーク図の形式を変更しました。-
ある特定の1つの保育所を共起ネットワークを用いて分析する
各保育所の評価データを使用して、それぞれ共起ネットワークを作成しました。
以下の図では、NurserySchool-1とNurserySchool-2のそれぞれの共起ネットワーク図を示しています。次元削減手法のMDSを使用することでノードの位置を固定し、他の保育所との比較分析も可能にしました。
-
ある特定の2つの保育所を共起ネットワークを用いて比較分析する
2つの保育所の評価データを用いて1つの共起ネットワークを作成しました。
赤色のエッジがNurserySchool-1が所持するエッジで、青色のエッジがNurserySchool-2が所持するエッジになります。また、黄色のエッジがNurserySchool-1とNurserySchool-2が共通して所持するエッジになります。
-
ある特定の3つ以上の保育所を共起ネットワークを用いて比較分析する(実装中)
3つ以上の保育所の比較分析を行う場合は、2Dではグラフの視認性が低くなってしまうため、3D共起ネットワークを検討しています。
-
(おまけ)留学中のTech Lounge生としての過ごし方
本来、Tech Loungeでは週に2回の出社が奨励されています。私はTech Loungeでは「自然言語処理技術を使用した研究で多数学会にて発表すること」と「Kaggleでメダルを獲得すること」の2つの大きな目標を掲げており、前者について留学中も支援いただくため、休会という形を取らずにオンラインにて参加していました。
留学中に行ったこと
月に2度、エンジニア社員との面談を行いました。
留学中にいただいたアドバイスを参考に以下の作業を行いました。
- 使用するデータの前処理
- マッピング手法の改善
- デモアプリのUIの改善
上記の作業行程については割愛して、またどこかの記事で触れようと思います。
まとめ
ドイツ(ヨーロッパ)では、研究の社会実装までのストーリーを重視する傾向にあり、「誰に対して何を行うために研究しているのか」についてしっかり話せる必要がありました。
日本では(少なくとも可視化界隈の研究において)、ストーリー性よりもどのように実装しているかなど手法について議論される機会が多いと感じるため、研究の意義を考える必要性を実感することができました。
最後にTech Loungeは、オンラインでもとても自分を成長させてくれる場所だと改めて感じた留学となりました!