はじめに
PrePoMaxは、CalculiX CrunchiXというオープンソースの三次元構造解析プログラムのプリ・ポストプロセッサです。PrePoMaxもまたオープンソースであり、だれもが使用できるフリーソフトとなっています。
PrePoMaxでは、三次元モデルのほか、軸対称、平面応力、平面ひずみの各モデルについても解析できます。今回は、PrePoMaxで平面応力と平面ひずみのモデルについて解析を行い、三次元モデルの解析結果と比較しました。
使用したモデル
- 二次元モデル 寸法:幅30mm、長さ200mm
※厚さは解析時に平面応力1mm、平面ひずみ100mmに設定 - 三次元モデル 寸法:幅30mm、長さ200mm、厚さ1mmまたは100mm
※長さをx方向、幅をy方向、厚さをz方向にとっています。
ファイルは以下のGitHubに格納しております。
ファイル名とモデルの関係は次のとおりです。
- 1-4Model_PerforatedSpecimen.step‥平面応力・平面ひずみの解析モデル
- 1-4Model_PerforatedSpecimen_t1mm.step‥三次元モデル(厚さ1mm)
- 1-4Model_PerforatedSpecimen_t100mm.step‥三次元モデル(厚さ100mm)
- 1-4Model_PerforatedSpecimen.FCStd‥FreeCADで作成した二次元モデル
- 1-4Model_PerforatedSpecimen(3D-model).FCStd‥FreeCADで作成した三次元モデル
※stepファイルはFreeCADで作成
※FreeCADによる二次元モデルは以下のサイトを参考に作成
https://www.xsim.info/articles/FreeCAD/tools/Part_MakeFaceFromSketch.html
解析条件
平面応力、平面ひずみ、三次元モデルの設定
「New model」をクリックして表示されるダイアログで、平面応力は2D Plane Stress、平面ひずみは2D Plane Strain、三次元は3Dを選びます。
「Import file」をクリックして、平面応力と平面ひずみは1-4Model_PerforatedSpecimen.step、三次元は1-4Model_PerforatedSpecimen_t1mm.stepか1-4Model_PerforatedSpecimen_t100mm.stepを読み込みます。
メッシュサイズ
メッシュサイズを設定します。ここでは、各モデルについて、以下の位置だけにType Mesh Refinement の Element size = 0.5mmと設定し、そのほかの位置はデフォルトの条件としました。
-
三次元モデル(厚さ1mm):穴部および周囲側面のみElement size = 0.5mmと設定
三次元モデル(厚さ1mm)のメッシュ条件の設定の様子
-
三次元モデル(厚さ1mm)以外のモデル:穴部のみElement size = 0.5mmと設定
平面ひずみモデルのメッシュ条件の設定の様子
材料(Materials)とセクション(Sections)の設定
材料は鋼材とし、ヤング率210000MPa、ポアソン比0.28としました。
Sectionsでは、二次元モデルの場合、解析するモデルの厚さ(Thickness)を入力します。
境界条件
1/4モデルの対称の条件を設定します。
試験片端面の長手方向荷重を設定します(1mm$^2$当たり100Nに設定)。
- 平面応力モデルの荷重の設定の様子(モデルの赤線部が設定位置)
平面応力モデルでは板厚1mmで、幅は15mmであるため、荷重は1500Nに設定
※Loads TypeにはSurface tractionを使用
平面応力モデルと三次元モデル(板厚1mm)の解析結果
上記の図において、平面応力モデルと三次元モデル(板厚1mm)は同じような応力状態になっていることが分かります。
平面ひずみモデルと三次元モデル(板厚100mm)の解析結果
上記の図において、平面ひずみモデルと三次元モデル(板厚100mm)は同様な応力状態になっていることが分かります。
理論値との比較
今回のモデルについて、円孔を有する帯板の応力集中計数の理論値を
の2ページから求めます。応力集中係数を求める上で用いたパラメータは、w=30mm、2a=15mm、σ$_n$=200MPa、2a/w=0.5です。これらの値を使い、応力集中係数は約2.15となりました。この値にσ$_n$=200MPa(応力集中がない場合の円孔縁のx方向の応力)を掛け約430MPaを理論値として得ました。
この値は帯板に近い形状である平面応力モデルおよび三次元モデル(板厚1mm)のx方向の垂直応力の最大値とほぼ一致していることが分かります。また、帯板とはやや異なる平面ひずみモデルおよび三次元モデル(板厚100mm)のx方向の垂直応力の最大値についても、この値に近いことが分かります。
終わりに
簡単な形状について、二次元(平面応力・平面ひずみ)モデルの解析結果と三次元モデルの解析結果を比較したところ、同様な結果が得られました。二次元モデルは三次元モデルより要素数が少ないため短時間で計算できるため、平面応力・平面ひずみ・軸対称に近い状態と仮定できそうな場合には積極的に解析を試みたいところです。
ただ、現実には種々の事情により製品形状に近いモデルでの解析を行う場合が多いと思われます。せいぜい予備解析を二次元で行い、大事な解析は三次元で行う、のような使い分けをするのが関の山でしょうか。