はじめに
JIS G5502-2022 球状黒鉛鋳鉄品により黒鉛球状化率を算出する場合、次式の丸み係数
丸み係数 = \frac{黒鉛の面積}{黒鉛の最大軸長を直径とする円の面積} (1)
を使うことが規定されていますが、前回ご紹介したアプリ$^{(1)(2)}$では、次式で定義した丸み係数の近似値
丸み係数の近似値 = \frac{黒鉛の面積}{黒鉛の最小外接円の面積} (2)
を使って黒鉛球状化率を算出していました。
式(2)を使って求めた黒鉛球状化率は、式(1)を使う場合に比べて若干小さい値になる$^{(3)}$ため、今回は式(1)の丸み係数を使って黒鉛球状化率を求めるアプリを作成しました。
式(1)の黒鉛の最大軸長の求め方
式(2)の分母の 黒鉛の最小外接円 は、OpenCVの cv.minEnclosingCircle() という関数を使えば容易に求まりますが、式(1)の分母の黒鉛の最大軸長を求める関数はOpenCVにはありません。
今回作成したアプリでは、黒鉛の輪郭の凸包を求め、その座標値からキャリパ法により得られた最遠点対を最大軸長としています。なお、Python言語でOpenCVを使って作成したアプリ$^{(4)}$ においても、これと同じ方法で丸み係数を求めています。なお、最遠点対を求めるプログラムは$^{(5)}$を参考にして作成しています。
使い方
以下のサイトを立ち上げます。
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ブラウザ左上の表示が「準備完了」になれば使用できます(通信環境やパソコンの処理速度により、多少待つ場合があります)。
画像の幅に値を入力します。この値の設定についてはZIPファイルのREADMEを参照下さい。また、最小黒鉛の長さについてはJISの規定では10となっているので、変更は不要です。
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「ファイル選択」をクリックして、球状化率を評価する画像ファイルを読み込みます。画像ファイルはダウンロードしたZIPファイル中のサンプル画像を使うことも可能です。画像ファイルは複数選択することも可能です。読み込んだら少し待ちます。
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ブラウザにJIS法とISO法の黒鉛球状化率の計算結果が表示されます。
ここに表示されている結果は、以前の記事$^{(3)}$の表のJIS法とISO法の結果とほぼ同値になっています(以前の記事$^{(3)}$と同じ画像ファイルを用いているため)。 -
ダウンロードされるファイル名と内容は次のとおりです。
- JIS法
- ファイル名:元のファイル名+_result(JIS)_球状化率.jpg
- 内容:JIS法で黒鉛の形状を色分けしたもの
(Ⅰ:赤、Ⅱ:紫、Ⅲ:緑、Ⅳ:水色、Ⅴ:青)
- ISO法
- ファイル名:元のファイル名+_result(ISO)_球状化率.jpg
- 内容:ISO法で黒鉛の形状を色分けしたもの
(青:ⅤとⅥ、赤:Ⅰ~Ⅳ)
ソースファイルはこちらにあります。READMEの注意事項を読んでお使いください。
何かの参考になれば幸いです。
開発環境
- Windows11
- OpenCV.js 4.4.0
参考
(1) JIS G5502球状黒鉛鋳鉄品の黒鉛球状化率の測定(ブラウザ上で行う)
(2) ブラウザで行う球状黒鉛鋳鉄品の黒鉛球状化率の測定
(3) 球状黒鉛鋳鉄品の黒鉛球状化率と丸み係数について
(4) JIS G5502球状黒鉛鋳鉄品の黒鉛球状化率の測定ソフトを作ってみた
(5) キャリパー法って響きがなんか好き