日本語でなんて言うのかはわからないのですが、確率解析をするうえで個人的に重要だと思うので自分用に書いておきます。
定義
二つの過程
X=\left(X_t\right)_{t \in \mathbb{R}_+} \text{ と } X'=\left(X'_t\right)_{t\in \mathbb{R}_+}
がそれぞれ $\left(\Omega, \mathcal{F}, \mathbb{P}\right)$ と $\left(\Omega ' , \mathcal{F}', \mathbb{P}'\right)$ 上で定義されていて $\left(E,\mathcal{E}\right)$ における値がすべての $t_1,...,t_n \in \mathbb{R}_+$ に対して同じかつ $A_1,...,A_n\in \mathcal{E}$ に対して
\mathbb{P}\left(X_{t_1}\in A_1,...,X_{t_n}\in A_n\right) =\mathbb{P}'\left(X'_{t_1}\in A_1,...,X'_{t_n}\in A_n\right)
とする。今、$X$と$X'$がどちらも確率空間$\left(\Omega, \mathcal{F}, \mathbb{P}\right)$上に定義されていて、
\text{ for every }t, \ \ X_t'=X_t \ a.s.
を満たすとき$X'$は$X$のmodificationであるという。また、
a.s. \ X_t'=X_t \ \text{ for every }t
のとき、$X'$と$X$はindistinguishableという。
例1
$\Omega = \lfloor 0, 1\rfloor, \mathcal{F}=\mathcal{B}\left(\lfloor 0, 1\rfloor\right)$で$\mathbb{P}$をルベーグ測度とする。$t \in \left[0,1\right]$に対して
\begin{aligned}
X_t\left(\omega\right)&=\mathbb{1}_{\left\{t\right\}}\left(\omega\right) \\
X'_t\left(\omega\right)&=0
\end{aligned}
とする。ならばすべての固定された$t$に対して
\mathbb{P}\left(X_t\neq X'_t\right)=\mathbb{P}\left(\left\{t\right\}\right)=0
よって$X'_t$は$X_t$のmodificationであるが
\bigcup_{t\in \left[0,1\right]}\left\{\omega \ | \ X'_t\neq X_t\right\}=\bigcup_{t\in\left[0,1\right]}\left\{t\right\}=\left[0,1\right]
より$X_t$と$X'_t$はindistinguishableではない。
以下の例のようにindistinguishableと二つの確率過程が完全に一致することは別物である。
例2
${0.123456...}=N \in \Omega$といった一点集合とする。そして$\mathbb{P}\left(N\right)=0$である。ここで
\begin{aligned}
&X_t\left(\omega\right)=t \ \text{ for } \ \omega \in [0,1] \backslash N \\
&Y_t\left(\omega\right)=t \ \text{ for } \ \omega \in [0,1] \backslash N \ \text{ and } Y_t\left(N\right)=-t
\end{aligned}
とする。このとき、これはindistinguishableであり、よってmodificationでもあるが、完全一致なサンプルパスを持たない。
まとめ
これらの例からわかるようにmodificationでは時刻$t$ごとに零集合の取り方を変えてもいいが、indistinguishableであるためにはすべての$t$に対して共通の零集合で一致する必要がある。
例えばindistinguishableの概念は確率解析の花形である(と私が勝手に思っている)確率微分方程式においてpathwise uniquenessの概念につながる。個人的には例を構成しないとなかなか違いが分かりづらい概念だと思うので自分で見返すように記事を書いた。