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ミクシィグループAdvent Calendar 2019

Day 23

コンピュータウイルスは人工生命なのか

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イントロ

XFLAGモンスト事業本部ゲーム運営部解析グループの向井です。
データ解析のお仕事をしています。

弊社のプレスリリースで下記のものがありました。

人工生命×アンドロイド「オルタ3」 4社共同研究プロジェクト始動 人間とアンドロイドによる新たなコミュニケーションの未来を示唆
https://mixi.co.jp/press/2019/0228/3783/index.html

私はこのプロジェクトには一切関わっていなかったのですが、名前の上がっている方々の著書を拝読し、人工生命というものが普段業務で関わりのある人工知能と関連の強い分野だと知りました。

特に感銘をうけたのは、セルオートマトンです。ゲームオブライフの動きを見ると、そこに生命を感じぜずにはいられませんでした。

この世の知性をもった生物がかつては単細胞を経て進化してきたのだとすると、適切な環境を与えられてサバイブしていく中で知性というものが生まれてくる可能性もあるのではとワクワクします。

そんな中ふと気になったのは、コンピュータウイルスです。これは、名前からして、人工生命のような感じがすごくします。コンピュータウイルスは人工生命なのでしょうか。

先行研究

Computer viruses as artificial life(EH Spafford, 1994)において、自然界の生命の特性について9つあげ、それぞれについてコンピュータウイルスに対して当てはまるのか思考していました。

なおコンピュータウイルスには、ワームやトロイの木馬は含まれていないとして論文中に言及があり、また原文の英語をかいつまんで訳しています。

--以下訳

  1. 生命は特定の物質のことではなく時空間におけるパターンである。
    • コンピュータウイルスはコードパターンとして表現されるので近い。
    • ただしこの時空間が電脳空間を含むのかは議論の余地がある。
    • メモリ上における電磁気の組み合わせでしかない。
  2. 自己複製。自分自身または似た生物の。
    • これに関しては問題なく当てはまるだろう。
  3. 自己表現の情報保管庫。
    • コンピュータウイルスのコードが、自然界の生命のおけるDNAに近く、当てはまる。
  4. 物質またはエネルギーを変換する新陳代謝。
    • コンピュータの電気を使用して動いている。
    • しかし、コンピュータウイルスが動いていようがいまいがエネルギー消費は同じ。
    • というかほとんどのシステムにおいて、プログラムが動いていようがいまいがエネルギー消費は同じ。
    • つまり実際問題コンピュータウイルスはこの項目には当てはまらない。
  5. 環境との機能的関わり合い。
    • 宿った環境の情報を見て、検知されないよう自らを隠したり、他の環境へ繁殖したりする。
  6. パーツの相互依存。
    • 生物の各器官を適当に分離したら、壊れてしまう。
    • コンピュータウイルスも同様だ。
    • しかし、コンピュータウイルスはそこから再構築すると元通り動く。生命はそうはいかない。
    • だからコンピュータウイルスは単純な機械や化学反応に近いのではないか。
  7. 環境変化への対応。
    • コンピュータウイルスは、ほとんどどの商業ソフトウェアより、環境に幅広く適応できるだろう。
  8. 進化能力。
    • 進化とは、機能または特性の変化のこと。
    • ポリモーフィック型ウイルスでさえ、最終的な機能としては変化せず、当てはまらないだろう。
  9. 成長または拡大。
    • 時間を経つにつれて数が増えていくという点で当てはまるだろう。

結論:コンピュータウイルスは人工生命ではない。また人工生命として作り変えるには、むしろ生命のほうの定義を変えるしかないのではないか。

--以上訳

考察

この論文は明示的に、何番と何番が当てはまってないからコンピュータウイルスは人工生命ではない、と言ってくれていないので、推測するしかありません。
微妙な言い回しが含まれていますが、強く述べている点として、4・6・8あたりなのでしょう。
つまり、
4. コンピュータウイルスは正味エネルギーを消費していない
6. パーツを分解後、再組み立てしても動く
8. 機能的進化がない

ここで反論を考えてみます。
・ 4については、何のことを言っているのかよくわかりません。ノートパソコンで重いゲームをしようとすると熱エネルギーが発生することからして、ソフトウェアの挙動によってコンピュータとしてのエネルギー状況に変化が生じるからです。
・ 6については、程度の問題でしょう。生物についても、場合によっては一度身体を離れた部分を適切に処置して戻せば機能します。それをもってして相互依存が成り立っていないとするのは変かと思います。
・ 8については、それまで観察されたコンピュータウイルスがそうだったかもしれないだけで、コンピュータ・サイエンスの理論上実現不可能という話とは別かと思います。

こちらからは以上です。

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