#Pythonで学ぶ制御工学< ゲインチューニング(限界感度法) >
はじめに
基本的な制御工学をPythonで実装し,復習も兼ねて制御工学への理解をより深めることが目的である.
その第17弾として「ゲインチューニング(限界感度法)」を扱う.
チューニング
前回までに触れてきた制御器のゲインは手探りであったが,そのゲインの調整に対する方法がいくつかある.ここでは,限界感度法について触れるが,ほかにもさまざまあるらしい.その調整をチューニングという.
限界感度法
限界感度表
むだ時間
実装
先ほどの説明に従い,PID制御におけるゲインをチューニング方法を実装する中で理解を深めていく.以下のソースコードとそのときの出力を示す.
ソースコード
"""
2021/03/15
@Yuya Shimzu
PIDゲインチューニング:限界感度法(アーム)
"""
import numpy as np
import matplotlib.pyplot as plt
from control import tf, feedback
from control.matlab import pade, step
from tf_arm import arm_tf #自作関数
# https://qiita.com/Yuya-Shimizu/items/c7b69b4dfd63fb8facfa
from for_plot import plot_set, linestyle_generator #自作関数
# https://qiita.com/Yuya-Shimizu/items/f811317d733ee3f45623
simT = np.arange(0, 2, 0.01) #シミュレーション時間
## パラメータ設定
g = 9.8 #重力加速度[m/s^2]
l = 0.2 #アームの長さ[m]
M = 0.5 #アームの質量[kg]
mu = 1.5e-2 #粘性摩擦係数[kg*m^2/s]
J = 1.0e-2 #慣性モーメント[kg*m^2]
# 制御対象
P = arm_tf(J, mu, M, g, l)
# 目標値(指示値=refference)
ref = 30 #目標角度30[deg]
# むだ時間
num_delay, den_delay = pade(0.005, 1) #1次のパデ近似(むだ時間:0.005)
# むだ時間を考慮した制御対象
P_delay = P * tf(num_delay, den_delay)
##### 限界感度法
### 手順①
# 持続振動が生じる適当な初期ゲインを設定
fig, ax = plt.subplots()
kp0 = 2.9 #今回の場合,2.9辺りで持続振動が生じる
K = tf([0, kp0], [0, 1])
Gyr = feedback(P_delay*K, 1)
y, t = step(Gyr, simT)
ax.plot(t, y*ref)
ax.axhline(ref, color = 'r', linewidth = 0.5)
ax.set_title("step1; $k_{P0}$="+str(kp0))
plot_set(ax, 't', 'y')
plt.show()
# 持続振動が生じるグラフにおける周期T0を得る
# 上で描かれるグラフからは,T0はおよそ0.3と見積もれる
T0 = 0.3
### 手順②
## 各ゲインを計算
kp = [0, 0]
ki = [0, 0]
kd = [0, 0]
Rule = ['', '']
# 限界感度法(Classic)
Rule[0] = 'Classic'
kp[0] = 0.6 * kp0
ki[0] = kp[0] / (0.5 * T0)
kd[0] = kp[0] * (0.125 * T0)
# 改良された限界感度法(No overshoot)
Rule[1] = 'No Overshoot'
kp[1] = 0.2 * kp0
ki[1] = kp[1] / (0.5 * T0)
kd[1] = kp[1] * (0.33 * T0)
LS = linestyle_generator()
fig, ax = plt.subplots()
for i in range(len(Rule)):
K = tf([kd[i], kp[i], ki[i]], [1, 0])
Gyr = feedback(P_delay*K, 1)
y, t = step(Gyr, simT)
ax.plot(t, y*ref, ls=next(LS), label = f"{Rule[i]}; $k_P$ = {kp[i]}, $k_I$ = {ki[i]}, $k_D$ = {kd[i]}")
ax.axhline(ref, color = 'r', linewidth = 0.5)
ax.set_title("PID control")
plot_set(ax, 't', 'y', 'best')
plt.show()
出力
step1で用いた図
この図から,持続振動が生じる周期$T_0$を約0.3と定めた.なお,持続振動が生じるゲイン$k_{P0}$については少しずつ大きくしながら調整していく必要がある.今回は,参考文献に記載されていた値を利用した.(うまく持続振動が生じたので,そのまま利用)
チューニングされたゲインを用いた挙動
青色のグラフは改良される前の限界感度法で橙色のグラフは改良版である.改良版は名前にもあったとおり,オーバーシュートなく目標値に収束していることが分かる.両方のグラフともうまく収束できていることが分かる.このことから,限界感度法によるゲインチューニングができていることを確認できた.
感想
ゲインチューニングの仕方は知らず,適当に手探りで定めないといけないのかと思っていたが,ある程度の方法はあるということを学んだ.もちろん,これですべて完璧にできるとは思っていないが,少しでもガイドのような存在があるというのは,手探りという不安を拭いでくれる.
参考文献
Pyhtonによる制御工学入門 南 祐樹 著 オーム社