今年の6月にKCNA-JPを取得したのですが、受験するにあたりKCNA-JPの情報が全然なく、学習方法や受験方法を調べるのに苦労しました。なので、今後受験する人の助けに少しでもなればと思い、本記事を執筆致します。
1. 試験について
この記事を読んで頂いている方は既にご存知かもしれませんが、KCNA-JPの概要を始めにご説明します。
1-1. 試験概要
KCNA-JPは認定Kubernetes クラウドネイティブアソシエイトの略称で、The Linux Foundationが提供する試験の日本語版になります。
- 問題数: 60問(選択式)
- 合格ライン: 75% (45問正解)
- 試験時間: 90分
- 受験料: 40,000円
1-2. 試験の特徴
Kubernetesの認定というとCKA-JPが有名だと思いますが、他にもCKAD-JPやCKS-JPがあり、KCNA-JPとあわせると全部で4つになります。
KCNA-JPは他の3つの試験とは違い、実技がなく選択問題だけです。
そのため、他の3つの資格試験よりも1つレベルを下げた位置づけとされており、初めてKuberneteの認定を取る人のための資格試験と思って頂くと良いと思います。
1-3. 出題範囲
公式抜粋ですが、出題範囲は以下のように記載されています。
参考:Kubernetes技術者認定(LPI-JAPAN)
2. 学習方法
前提として、筆者はKubernetesの実務経験ありです。そのため初学者の方と違って、1から学習を始めた訳ではありませんが、初学者の人も使える学習法だと思うので、是非参考にして頂ければと思います。
2-1. 問題集
問題集は以下の問題集を使いました。
この問題集は名前の通り、60問の模擬試験が5セットと1つの付録がついてます。
2-2. 実施した学習方法
私は以下のサイクルで問題を解いていって、ミスが0になるまで繰り返しました。
- 普通に問題を解く
- 間違えた問題の解説を読む
- 解説では分からないものは理解できるまで調べる
- 間違えた問題だけ解いて全問正解にする
試験ではまったく同じ問題が出たわけではないので問題集を丸暗記する必要はありません。一方で、かなり類似した問題が3-4割で出てきた印象なので、この問題集をしっかり解けるようにするのが良いと思います。
初学者の方は上記サイクルの3-4にかける時間が多くなると思いますが、2周目3周目とやっていくうちに知識が増えて、問題を解く時間が格段に減ると思いますので、この方法でも充分学習になると思います。
3. 受験予約方法
受験にあたり、複数アカウント登録が必要であったり、クーポン登録が必要であったりと、やることがたくさんあったので、受験予約までの流れを記載します。
3-1. 前提
受験までの流れについては、LPI-JAPANが出している公式手順があります。私の方でもこの手順の順番で解説していきますので、受験される方は必ずお読みください。
3-2. EDUCO-IDの取得と受験用クーポンの購入
- EDUCO-IDの取得
LPI-JAPANの受験者用アカウントを作成し、EDUCO-IDを取得します。 - Kubernetes試験&トレーニングストアアカウントの取得
Kubernetes試験&トレーニングストアに飛び、ストア用のアカウントを作成します。
※ゲスト購入も出来ます - クーポン購入
受験する試験のクーポンを購入します。
クーポンが4種類販売されているので購入の際は気を付けて選んでください。
① 試験用クーポン
② トレーニング用クーポン
③ 試験+トレーニングがセットのクーポン
④ 複数試験がセットのクーポン - クーポンコード取得
購入後5営秒日以内にクーポンコードがメールで送られてきます。
私は翌営業日に発送メールが届き、その1時間後にクーポンコードが記載されたメールが届きました。
3-3. The Linux Foundation IDの取得と受験予約
- LF IDの取得
The Linux Foundationのアカウントを作成し、LF IDを取得します。
登録時のメールアドレスはEDUCO-IDと同じものが推奨されています。 - 受験結果共有承諾登録
The Linux FoundationとLPI-JAPANが受験結果を共有できるように、必要事項を入力し承諾登録をします。
(1) 承諾のチェック
(2) EDUCO-ID
3-1.の1で取得したEDUCO-IDを入力
(3) LF-ID
3-2.の1で取得したLF-IDを入力
(4) クーポンコード
3-1.の4で受け取ったクーポンコードを入力
- クーポンコードの登録
受験する試験のリンクからクーポンコードの登録を行います。 - 試験準備の実施
3が完了するとThe Linux Foudationのマイポータルに試験名が出てくるようになるので、それをクリックする。
すると、7個のチェック項目が出てくるので、最後の1つを除いた6つの項目を1つずつこなします。
(1) Agree to Global Candidate Agreement
Linux Foundation グローバル認証および機密保持契約への同意
(2) Verify Name
名前の確認
(3) Schedule an Exam
試験の予約
※試験官は英語圏の方が多いそうなので、向こうが昼間の時間に予約をすると待ち時間が短いそうです。向こうが夜の時間に予約した結果、1時間位試験官が入ってこなかったという体験も見ました。
(4) Check System Requirements
システムの要件確認
(5) Get Candidate Handbook
受験者ハンドブックの確認
(6) Read the Important Instructions
重要な指示の確認
(7) Take Exam
その名の通り試験受験時のもので、試験開始30分前から押せるようになります
3-4. 受験する上での注意事項
ここは記載されている通りなので注意事項を読んで頂ければと思います。
特に注意が必要な点としては受験場所で、全てオンライン試験となり、テストセンターなどの選択肢が存在しません。調べて頂くと結構体験談が出てくると思いますが、試験官のチェックが結構厳しいようで、少し物があるだけで結構注意されるそうです。
自宅で、何も物が無い部屋を作れる方は自宅でも問題ないのでしょうが、それもなかなか難しいと思うので、私はワーキングスペースを借りて、ワーキングスペースで受験しました。
4. 試験当日の体験談
この試験は受験するまでが本当に大変な試験でした。今後受験される方が、私と同じ苦しみを体験しないように当日の受験の流れを記載しますので、私のような失敗は繰り返さないようにして頂ければ幸いです。
4-1. 受験準備
試験は10時30分からで予約しましたが、試験開始時間の30分前から開始出来るので、10時にワーキングスペースを予約して、試験に臨みました。
始め方は、The Linux Foudationのマイポータルから試験名をクリックし、3-2.の4の(7)の試験開始ボタンをクリックします。するとテスト用のブラウザのダウンロードが開始するので、ダウンロードが完了したらそのブラウザを立ち上げてテストに臨みます。
ブラウザを立ち上げる前に、試験環境への指摘が厳しいという体験談をたくさん見ていたので、ワーキングスペース備え付けの小物を全てテーブルの下に移動させました。壁についているタッチパネル(予約状況や設備、建物の情報などが出るやつ)のみ、取り外しが出来ず、電源も消せなかったので、怒られそうだなと思いながらもそのままにしました。
4-2. 身分証認証1回目
ブラウザを立ち上げると試験官から英語で「準備はいいか?」とチャットが来ます。「I'm ready!」と送ると「身分証を見せろ」と言われるので、カメラに向かって身分証を見せます。因みに、私は車の免許証とマイナンバーカードを見せました。その結果、漢字を見て、「なんだこれ?絵?」と言われ、「こんなの読み取れない」と、ブチっと試験を終了させられました。
4-3. 身分証認証2回目
強制終了されたことに衝撃を覚えながらも、もう一度入れば試験官変わるよな?と思い、ダウンロードしたブラウザをもう一度立ち上げました。
結果、期待通り別の試験官になり、「準備は良いか?身分証を見せてくれ」と言われます。1回目と同様、免許証とマイナンバーカードを見せますが、またもや「漢字が認識できない、別の身分証を見せてくれ」と言われます。なので、保険証を見せますが、やはり駄目。「英語表記のやつないのか?」と言われ、クレジットカードの名前の部分を見せましたが、クレジットカードではやはりだめ。本日2回目の強制終了をさせられました。
The Linux Foudationの登録を実施されるとわかるのですが、英語サイトなので思わず英語で登録してしまいます。一方で、車の免許証やマイナンバーカード、保険証は漢字で記載されていて、英語では記載されていません。そのため、外国の方からしたら合致しないという理由で拒否られるようです。漢字で登録すれば良かった。。。
4-4. パスポートを取りに帰る
2回弾かれた時点で時間は10時45分。試験開始時刻の1時間後までは試験開始ボタンが有効とのことで、11時30分までに英語表記が載っているパスポートを取ってくれば、まだ受験出来ると考えました。
ワーキングスペースから家まではバスで往復約40分、かなりギリギリだけど考えている時間はないと思い、急いでワーキングスペースを出てバス停まで走りました。
幸いバスがすぐ来てくれて、片道20分かからずに家についてパスポートを取ることが出来ました。
4-5. LPI-JAPANへの問い合わせ
家まではスムーズに行けたのですが、ワーキングスペースまでのバスが10分程来ない。。。
最悪間に合わないことを考えて、駄目元でLPI-JAPANに電話をして、「身分証認証が上手くいかない!試験時間が間に合わないかもしれない!」と問い合わせてみました。
しかし、この試験は海外のThe Linux Foudation主催だから、試験時間は日本のLPI-JAPANではどうしようも出来ないと、丁寧にご説明頂きました。
その上で、身分証認証が上手くいかないという問い合わせは多く、時間に間に合わなかった場合はリスケが出来るよと教えて下さりました。
さらに、身分証認証に成功しやすい方法というのも一緒に教えて頂きました。
4-6. 身分証認証に成功しやすいポイント
教えて頂いた身分証認証に成功しやすいポイントは以下の3点です。
- 名前をローマ字で登録する
漢字で登録して、漢字の身分証を見せても、試験官によっては「漢字分からない承認出来ない」と言われ、断られて問い合わせが来るケースが多いそうです - 名前の性と名を逆に登録する
性と名を正しく登録すると、海外表記だと名→性の順番になりますが、日本のローマ字が記載された身分証は性→名で記載されていることが多いです。そのため、試験官によっては「登録と順番が違うから承認出来ない」と言われ、断られて問い合わせが来るケースが多いそうです - 身分証認証にはパスポートを使う
パスポートにはローマ字と漢字両方記載されているだけでなく、世界共通の身分証明書だから承認されるケースが多いそうです。他の身分証だと日本が発行しているもので、国によってデザインが違うため、試験官によっては「公的な身分証なのか判断出来ない」と言われ、断られて問い合わせが来るケースが多いそうです
4-7. 身分証認証3回目
上記を聞いて、電話して良かった!と思いながらバスに乗ってワーキングスペースに戻りました。
時刻は11時33分、テスト開始ボタンはグレーアウト。
絶望しました。
しかし、あることに気づきます。
そういえば2回目に身分証認証をした時、試験開始ボタンじゃなくて1回目に試験開始ボタンを押してダウンロードしたブラウザから入ったんじゃなか?1時間過ぎてるけどダウンロード出来てればOKなのかな?
先ほど教えて頂いた通りにローマ字の性と名を逆にしてから、ダウンロードしたブラウザを立ち上げると、過去2回と同様に試験官が入ってきました。
あとから駄目と言われるのが嫌なので、「時間は大丈夫か?」と聞くと、過去の履歴が見れるようで、「大丈夫だ!新しい身分証はあるか?」と聞いてくれました。そして3度目の身分証の認証に臨み、パスポートを見せると即答で「OK!」を貰えました!
4-8. 部屋の確認
喜んでたのも束の間、部屋を見せてくれと言われ、回るのが早いだの遅いだの言って何周も回転させられました。それだけじゃなくて、上下も細かく見られ、隅から隅まで映すように言われ、「カバンももっと奥に入れろ」と指示されました。
そしてついに、タッチパネルが怒られます。
「電源を切るか、テーブルの下にしまえ」と言われるのですが、「そうしたいんだけど、それが出来ないんだ」と説明しますが納得してもらえず。ハンカチをかけたりしてみたりもしましたが、駄目。
これではらちが明かず、また強制終了されると思ったので、「Can I use celephone for translate?」と文法的に合ってるのかすら分からない英語で聞いてました。
その結果、まさかの「OK!」と返ってきたので、カバンから携帯を取り出して「このタッチパネルはこのワーキングスペースのもので、安全上必要だから電源を切ったり取り外したりすることが出来ないんだ」という文章を入力→翻訳して、カメラ越しに見せると、「OK, Accept」と言われ、やっと試験を開始することが出来ました。
4-9. ワーキングスペースの予約時間
やっと試験が受けられるという嬉しい気持ちを抑えて、冷静に問題を解き始めた瞬間に、このワーキングスペースが12時30分までしか取ってないことと、終了10分前にタッチパネルから音が鳴って知らせてくれることを思い出しました。
これだけ厳しい試験なんだから音が鳴った瞬間アウトだ、しかもさっきやっとOKを貰ったタッチパネル。。。と思い、今の時間を一生懸命考えました。
翻訳のために携帯を触った時の時間が12時だったから、そこから少しやりとりして試験を開始したので、今12時05分位だろう。12時20分にはアラームが鳴るから、それまでに試験を解き終えるだけじゃなくて、試験官とさよならまでしなきゃいけないから、約10分で解くしかない。
気付いたのがまだ2問目解いたところだったので、残りの58問を10分、つまり1問10秒位で解くしかない。もう感覚で、これ!これ!これ!と、どんどん解いていきました。問題文も割と短めな問題ばかりだったので本当に助かりました。
そして、なんとか10分以内で58問解き終わり、見直ししたい気持ちを押し殺しながら、試験を終了しました。試験官から「お疲れ」みたいなことを言われ、ブラウザを閉じて時間を見ると12時18分、危なかった。。。
4-10. 合格発表
もうこの段階になると、たとえ試験が駄目だったとしても仕方ない、取り合えず受験出来て良かったという気持ちで満たされていました。
10分前のアラームが鳴って、部屋のお小物を元の位置に戻したり、片付けをしていると、「おめでとう!合格です!」というメールが届きました。12時28分にメールが来ていたので、約10分位で結果が出たようです。
スコアは87で、75ボーダーなので、なんとか越えていました。
5. 最後に
体験談が長くなってしまいましたが、この試験を受験することが出来たのは奇跡だと思っています。それくらい試験を受けることが難しい試験でした。
こうなった原因は、当然自分の準備不足のせいなのですが、圧倒的にこの試験に関する情報が足りない!と感じてます。
なので、今受験しようと考えて情報を集めている方の助けに、本記事が少しでもなればと思い、本記事を執筆しました。
LPI-JAPANの方も凄い丁寧な方で、親切に色々教えて頂いて感謝しかありません。
こんなバタバタな受験をする経験はあまりないと思うというか、経験する必要がないことだと思うので、是非この私の経験を元に、皆さんがストレスフリーでKubernetes試験を受験し、合格を勝ち取られることを祈っております。
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