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スクラムチームにおける雑談と心理的安全性についての議論

Last updated at Posted at 2024-11-28

はじめに

先日参加した「Scrum Masters Night!」というアジャイルの勉強会で、下記のトピックについて議論しました。

  • 完全リモートの場合雑談の時間を固定で設けるべきか。どんな雑談内容なら心理的安全性が高まるか?

完全リモートでのスクラム開発が増えている中で「雑談」というものが難しくなってきていることを日々実感しています。
勉強会ではそもそも雑談へ求めていたこと、心理的安全性との関係などを中心に学びが多くあったため、この記事で共有させていただきます。
Scrum Masters Night!

雑談に何を求めている?

そもそもこのトピックを上げた人が考えていた課題は 「リモートなのでふとした機会の雑談がなくなかなかチームメンバーと話せない。また振り返りなどのイベントで意見をほとんど出さないメンバーがいる。」 というものでした。
では雑談を増やした結果、チームに求めていることは何か?について整理すると、主に下記のものがでてきました。

  • メンバー間との心理的距離を近づけ、話しやすい「場」を作ること
  • なかなか声を上げない人がスクラムイベントなどでの発言数を増やすこと
  • 雑談の中でプロダクトの知識を付けていってもらうことでアイディアなどの意見を出すことが増えること

上記からプロダクトに対しての「意見」や「アイディア」を増やし、それをアウトプットできる「場」を作ることを雑談に求めていることが分かりました。
次に、これらのことはそもそも雑談で解決できるのかどうかについて議論しました。

雑談と心理的安全性

最初に今回の議論の発案者が立てていた仮説は 「雑談をする場を作ることで、心理的安全性が高まり、チームメンバーの意見が増える」 というものでした。
仮説が正しければ、前段の雑談に求めていることとも一致してます。
そこで、そもそも心理的安全性が高いというのはどのような状態を指すのか、議論の中では下記のように定めました。

  • 議論の中で問題なく相手の意見を否定でき、議論として成立する

この前提で雑談と心理的安全性の関係について議論したところ、下記の意見が出ました。

  • 雑談で仲はよくなるかもしれないが、あくまで会話の雰囲気作りであって心理的安全性が高くなることはない
  • 雑談できる状態はあくまで心理的安全性の高い議論の場ができる前提条件のようなもの

このことから、「雑談する」という行為はあくまで初期のチームビルディングや議論の前準備であり、心理的安全性を高めることそのものにはならないという結論になりました。

心理的安全性を高めるために

では心理的を高めるために必要なことはどんなことか?本当に雑談では高めることはできないのか?という議論に進んだところ、下記の意見が出ました。

  • 心理的安全性を高めることが目的であれば、議論に参加できていない「人」そのものを知る必要がある
    • 単純に話すのが苦手なのか、そもそもプロダクトへの理解が足りていないため意見が出てこないのか、その辺りを引き出す必要がある
    • 引き出す手段としてはやはり1on1が必要になってくる
    • プロダクト理解が足りていないのであればユビキタス言語用語集を作るとか
    • 用語集も作ってそれきりになりがちだが、メンバーが入れ替わった時やこういった問題が起きているときに改めて整理することで自分含めてチーム全体のプロダクトへの理解が深まる
  • 心理的安全性を高めるために何かやったことはあるか?
    • 議論内でのルールを明確にするとか。「絶対に相手の意見をばかにしない」など
    • 自分の失敗談を共有することでメンバー間での失敗への恐怖は少し下がったという経験があった
  • 雑談が心理的安全性の向上につながることはないのか?
    • 雑談自体が心理的安全性を高めることにはつながらないが、雑談の中から心理的安全性を低めている原因を観察することはできる
      • チームビルディングの観点からメンバー間の関係を測っていたことがある
      • チーム内でのよく話す人・話さない人がどういう割合でいるかチェックしていた。いつも話す人が固定になってしまって、結局声が大きい人の意見が通る環境になってしまっている可能性が高い

議論から得た学びとアクション

これらの議論から、特に下記の点が自分にとって大きな学びでした。

  • 心理的安全性を高めることが目的であれば、議論に参加できていない「人」そのものを知る必要がある
    • 単純に話すのが苦手なのか、そもそもプロダクトへの理解が足りていないため意見が出てこないのか、その辺りを引き出す必要がある

自分がチームメンバーと行っている1on1を振り返ってみると、現状起こっている課題や、メンバー同士の「距離感」に対する話題が多かったです。
そのためチームの「人」そのものや、プロダクトに対する各メンバーごとの理解度などへの観点が足りなかったと感じました。
上記の点を踏まえて、自分のスクラムチームへのアクションとしては下記のことを実施しています。

  • プロダクト理解のためのワークを実施する
    • メンバーのチーム参加時期によって、プロダクトに対する部分的な理解に偏りがあったことを把握できました
    • 結果として「理解が深まる→プロダクトに対する深い意見が増える→他メンバーへの理解が深まる」という良いサイクルを感じています
  • 1on1などでプライベートや自身の失敗談等の話題を増やす
    • 勉強会でも出てきた経験談を参考に、主に最近参加したメンバーが意見を出せる場所づくりを目的に試みています

まとめ

リモートという環境下で明らかに減ってしまった雑談ですが、今回の議論を通じて、雑談はチームビルディングの重要な要素である一方で、心理的安全性を直接的に高めるものではないということが明らかになりました。
自分としても、雑談が減ったことで漠然と心理的安全性が下がる原因になっていたと無意識に考えていた節がありましたが、認識を改める結果となりました。
勉強会では雑談がチームに与える影響と、心理的安全性を高めるための対話について学ぶことの多い議論をすることができたと思います。
チームの心理的安全性を高めるためにも、1on1などを通して個々のメンバーへの理解をより深める必要性を感じました。

今回の「雑談」に限らず、普段関わらない人たちとの議論は、自分たちの認識を客観的に見直すいい機会になると感じました。
直近では下記2つのアジャイル勉強会に参加し、良い議論をすることができたため、最後に共有させていただきます。

  • Scrum Masters Night!
    • スクラムマスターのための、スクラムマスターによる参加者全員が主役な課題解決型イベント
  • Scrum Developers Night!
    • 上記Scrum Masters Night!と同コミュニティが主催している、よりDeveloperに議題を集中した勉強会イベント

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