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ブロックチェーン,WEB3.0の実用可能性について

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はじめに

先日、米国議会にてブロックチェーン技術の誇大主張に対して批判的な意見を主張する書簡「Letter in Support of Responsible Fintech Policy」が1500人の技術者、専門家の署名と共に提出されました。

以下、記事の一部抜粋。

暗号資産 (暗号通貨、暗号トークン、または web3 と呼ばれることもある) は非常に優れた革新的なテクノロジであるという業界の主張に対して、批判的で懐疑的なアプローチを取るように促す

Today, we write to you urging you to take a critical, skeptical approach toward industry claims that crypto-assets (sometimes called cryptocurrencies, crypto tokens, or web3) are an innovative technology that is unreservedly good.
(原文より抜粋)

ブロックチェーン技術は、その設計上、現在または潜在的な公益の源として現在宣伝されているほぼすべての目的にはあまり適していません。このテクノロジーは当初から、問題を探すためのソリューションであり、現在では金融包摂やデータの透明性などの概念に固執してその存在を正当化していますが、これらの問題に対するはるかに優れたソリューションがすでに使用されています。

By its very design, blockchain technology is poorly suited for just about every purpose currently touted as a present or potential source of public benefit.
From its inception, this technology has been a solution in search of a problem and has now latched onto concepts such as financial inclusion and data transparency to justify its existence, despite far better solutions to these issues already in use.
(原文より抜粋)

要約すると、
ブロックチェーン技術(又は暗号通貨、暗号資産、WEB3.0)と呼ばれる技術は実態としては技術の適した使用用途は未だ確立されてはいないのにも関わらず、現在非常に持ち上げられていることへの警鐘を鳴らしたい
とのこと。

(原文)

(和訳つき記事)

また同時期に、「いちばんやさしいWeb3の教本」の販売終了と回収が発表されました。
この書籍についてはかなり出鱈目な内容であることからSNSでも話題となりました。

これらの出来事から自身で今一度、現在持ち上げられているブロックチェーン、WEB3.0について調査や考察などをまとめたいと筆をとった次第です。

※ この記事はあくまで個人的見解になります。間違い等あれば指摘してください。

ブロックチェーンとは

ブロックチェーンの定義は、日本ブロックチェーン協会によると以下のように定義されています。

1)「ビザンチン障害を含む不特定多数のノードを用い、時間の経過とともにその時点の合意が覆る確率が0へ収束するプロトコル、またはその実装をブロックチェーンと呼ぶ。」
2)「電子署名とハッシュポインタを使用し改竄検出が容易なデータ構造を持ち、且つ、当該データをネットワーク上に分散する多数のノードに保持させることで、高可用性及びデータ同一性等を実現する技術を広義のブロックチェーンと呼ぶ。」

ピザンチン障害とは
処理の実行中に故障や障害などで正常に動作が行われない(不作為障害)や不正(作為障害)を含む分散コンピューティングにおける障害のこと。

主な特徴

定義から以下の特徴が挙げられます。

  • 正常な動作が行われなかった場合や不正が行われた際にも正常な結果が得られる
  • 改ざんが非常に困難で容易に検出が可能
  • 自立分散システム

どのような技術が使用されて、これらが実現しているのかを説明するのは長くなるのと難しい話になるため参考記事を参照してみてください。

簡単に説明すると、
p2pネットワーク で分散コンピューティグを実現。
トランザクションを過去のデータから連続してまとめて保有することから改ざんが困難に。
上記だけでは、一つだけの改ざんは難しいが、複数や全部まとめての改ざんが可能なため、計算量の大きいProofをデータ内に保有することで、トランザクションが更新されるまでに複数のデータを改ざんすることが困難になる。

メリット

継続性が高い

分散型の仕組みであることから、一つのサーバーなどで中央集権型の管理ではなく分散型の管理がされているため、災害などの不足の事態であってもシステムが継続することができます。

(ただ、このような仕組みは現在のシステムでは割と行われているのでは..? 例えば、AWSのEC2は世界各地のロケーションでホスティングされているため、インスタンスを分散配置してホストすることは可能。)

セキュリティが高い

不正や改ざんが困難なことから、セキュリティが高いとされる。

透明性が高い

ユーザー個人が電子署名で承認を行えることや、保存された取引内容を確認できることから。

デメリット

処理時間が長い, 処理能力と障害耐性を両立しにくい

P2P方式ではノード内で使われている機器のスペックに処理能力を依存するため、スペックの低い機器が複数つながっている状態だと処理能力が遅くなる。
だからといって処理能力を高速化するために高スペックの機器だけ減らしてノードを減らすと、障害耐性が低くなってしまう。このように処理能力と障害耐性を両立しにくい。

また、あくまで一部の暗号通貨の例だが、一度の取引に対して、ユーザーの承認が必要なことから取引の処理時間がかかる。

データが増大し続ける

ブロックチェーンはその性質上、ユーザー、取引の量が増えるほどデータが増大する。
当たり前の話のようで、P2P方式を採用した際に、先述のように処理能力がノード内の機器のスペックに依存するため、先の問題(処理時間が長い, 処理能力と障害耐性を両立しにくい)がより大きくなる。

取引情報が削除できない

ブロックチェーン上では、基本的に一度保存されたデータは削除できない。これは改ざん防止という点ではメリットとなるが、逆にデメリットとなる場合もある。
例えば、以下のような実際に被害を被る例が起こっている。

悪意あるユーザーを弾けない

こちらも先の記事のような悪意を持ったユーザーに対しての打開策が難しくなってくる。

使用されている場面

実際に使用されている例としては以下が挙げられる。

仮想通貨

最も使用されている例。

トレーサビリティによる「フェアトレード」を実現

オランダを拠点とする非営利団体「Right Origins」は、ブロックチェーンを活用してカカオ豆の生産におけるフェアトレードを実現しています。

フェアトレード(Fair Trade)とは直訳すると「公正取引」で、発展途上国の原料や製品を適正な価格で購入し、途上国の生産者の生活改善を目指すことです。

食の安全確保に向けた小売業界のブロックチェーン活用

ウォルマート(米)は食品の安全性、透明性を担保するための取り組みとして、IBMと提携し、サプライチェーン全体の情報にアクセスし、トレース可能なプラットフォームを構築。2018年10月に実用化した。IBMが提供する同サービスは「IBM FOOD TRUST」として、業界を横断した「食のトレーサビリティ」の実現を目指すという。

デジタルコンテンツの権利情報処理システム

ブロックチェーンを活用し、コンテンツの作成者を証明することで、オンラインシステム上で迅速かつ透明性を担保した著作権管理を可能にする。

ブロックチェーン技術を提供するプラットフォーム

Ethereum(イーサリアム)

2013年に考案された分散型アプリケーションやスマートコントラクト*のアプリケーション構築を可能にするオープンソースプロジェクトで、送金、決済、ID認証など、さまざまなサービスがEthereumから生まれている。

*スマートコントラクトは契約・取引を自動化する仕組み

(あくまで偏見だが、現在WEB3.0がもてはやされてる原因だと思う。基本的にWEB3.0の説明に出てくるメタバース以外の部分がイーサリアムから発祥してるように感じる)

NEM(ネム)

複数アカウントからの署名を必要とするマルチシグコントラクト*によるセキュリティを特長としている。

Hyperledger(ハイパーレッジャー)

IBMやIntelなど、世界各国のIT企業が参加する、ブロックチェーン技術の推進を目的としたオープンソースプロジェクト。暗号通貨をベースとする他のブロックチェーンプラットフォームとは異なり、ブロックチェーン技術の社会実装のみを目的として存在する。さまざまな課題に特化した複数のブロックチェーンプラットフォーム開発プロジェクトが同時進行している。

Ripple(リップル)

ブロックチェーンとは異なるDLT(分散台帳技術)を用いて、即時に国際送金可能な決済プラットフォームを提供する。フィンテック領域に強みがあり、国内外の金融機関でRippleを活用した決済サービスが開始されている。

参考記事

WEB3.0について

WEB3.0について以下に簡単にまとめる。
個人的な印象としては、「AI」のように単語だけ独り歩きして実態や実情が不明瞭という印象ではあるが、定義としては以下のようになるとされてる。

分散型管理システムでユーザー同士がデータを共有、管理する仕組み。

WEB1.0, WEB2.0とは

WEB1.0 WEB2.0 WEB3.0
年代 1990 ~ 2004 2005 ~ 2022 ? ~
ユーザーの挙動 Read Only Read, Write Read, Write, Own
プラットフォーム ? 中央集権型 分散型
Yahoo!など TwitterなどのSNS イーサリアム, ?

キーワード

今日のWEB3.0として重要(とされる)キーワードを以下に挙げる。

  • NFT
    非代替性トークン。ブロックチェーン技術を利用して、取引履歴の透明性、公平性を担保。 X to Earnのようなこれまで金銭的価値のなかった行動に対して、価値を生み出せるようになる可能性についても触れられている。
  • DAO
    (Decentralized Autonomous Organization)分散型自立組織のことで、中央集権的な権力を持つ管理者がいないので意思決定を参加者全員で民主的に行うことができる。
  • DeFi
    (Decentralized Finance)分散型金融のことでこれまでインターネット上で提供されていた金融サービスと比較して、集権的な管理者が存在せずアクセス元の国家や利用者のバックグラウンドを選ばず誰にでも提供される。
  • メタバース
    主にVRゴーグルなどを使用して利用する「3D仮想空間」の形態を指すことが多い。(一時、物議を醸したがVRChatのような形態が近いと思う。将来的には「SAO」のような仮想現実のことを指すと思われる。)

メタバースは、本質的にはweb3.0の定義から外れている気がするが、混同されることが多いため。

WEB3.0へ移行することのメリット

世間一般に叫ばれている例として、以下のようになる。

  • セキュリティの強化
  • ユーザー主体のデータ管理
  • P2Pによる仲介組織の排除

間違った使用例

使用が想定される誤った例を挙げる。
実際に筆者が見聞きしたもの、想定されるものとして挙げてる。

  • WEB3.0の時代になったらGAFAMの時代は終わる
    資本主義の仕組みから考えてもそんなことはない。Googleは検索しかできないと思ってそう。
  • WEB3.0の時代になったら国や地域は関係なくなる
    現在でもリモートで国や地域を超えて交流することはできる。言語の壁を越えるのは別の課題。
  • WEB3.0の時代になったらプライバシーの侵害がなくなる
    WEB2.0はプライバシーを侵害されてたのか?個人情報の提供は、WEB以前の問題では?
  • WEB3.0の時代になったらデバイス、OSが不要になる
    は?

まとめ

個人的には、WEB3.0のような文脈には懐疑的な印象を持っていたし、実際に少し深堀りしてみても改めて懐疑的な印象が増した。

実用可能性については、ブロックチェーン技術のトレーサビリティには注目したいと感じた。
取引の透明性と改ざん困難なことから公平な取引やルートの担保という点に関しては、可能性を感じる。

所感

声高に言われてることにしては、"管理者がいない"のは無法地帯になる可能性も捨てきれず、例えばYouTubeやTwitterであれば、不適切なコンテンツ、スパム、転載などを排除することができるが、こういった問題に対して打開策が挙げられていない。そもそもプラットフォームを提供するものは存在するので、管理者が不在,分散型という部分を強調されてもピンとこない。
話題となっている理由として、技術というよりも広告のインパクトや、GAFAM,ひいては資本主義へのアンチテーゼのような感覚がある。

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