マルチアクセス(CCNA第4回) 座学編
前章では隣接しているルーター間でHelloパケットを送ってから、Fullステートになるまでの流れを学習した。
前章
こちらの続きになります。まだ読んでない方はこちらからお読みください。
マルチアクセス場合は?
このようにスイッチを使ったネットワーク構成があったとする。
理論上以下のような隣接関係が構築されることになる。(隣接関係 15)
このような状態で各ルーターがHelloパケットやLSUを送信するとトラフィックが増えてしまう。
そこで、完全な隣接関係を全ルーターで結ばずに一部にすることで、トラフィックを減らすことができる。
DR(Designated Router 代表ルーター)
DRは、全ルーターとの完全な隣接関係を築き、それぞれのルーターのLSAを収集し、それを全ルーターへと送信する。
それにより、各ルーターがそれぞれと完全な隣接関係を結ばなくてもDRからすべてのLSAの情報を得ることができる。(隣接関係 5)
BDR(Backup Designated Router バックアップ代表ルーター)
もし、DRがダウンした際にDRとして動作するルーター。
BDRも全ルーターと完全な隣接関係を築く必要がある。(隣接関係 9)
他のルーターは?
DRとBDRに選ばれなかったルーターはDROtherという。DROtherはお互いをネイバーとして認識をしているが、DBDパケットやLSUパケットを直接交換することはない。
そのため、DROther同士は2-Wayステートのままになる。
ネットワーク変更時
ネットワークに変更が発生した場合、DRとBDRだけにLSUパケットを送信し、DRからのみ全ルーターに送信する。
DRとBDRの選択
OSPEは、ルータープライオリティとルーターIDを選択の基準として規定している。
ルータープライオリティ
ルータープライオリティは、インターフェースごとに決定できる値で、Helloパケットに含まれているためお互いのルータープライオリティを知ることができる。
マルチアクセスの環境では、ルータープライオリティ値が1番大きいルーターがDR、2番目がBDRに選出される。
ルーターID
ルータープライオリティが同じである場合、その次にルーターIDを比較する。
ルーターIDは、各ルーターが識別する一意の値でIPアドレスと同じ書式。
ルータープライオリティと同じく、ルーターIDの値が1番大きいルーターがDR、2番目がBDRに選出される。
ルーターIDの決定
ルーターIDは次の順序で決定される。
- コマンド上で手動で設定している値
- ルーターの有効なループバックインターフェースのIPアドレスで最大のアドレス
- 有効な物理インターフェースのIPアドレスで最大のアドレス
ループバックインターフェース
システム管理者が作成することができる仮想的インターフェイスで、手動でシャットダウンしない限りダウンしない。林口 裕志; 浦川 晃. シスコ技術者認定教科書 CCNA 完全合格テキスト&問題集[対応試験]200 -301 (p.341). 株式会社 翔泳社. Kindle 版.
ルーターIDの選出例
こちらの例では、手動設定はなく、ループバックインターフェースも無いため、物理インターフェースの最大IPが選択される。
192.168.52.5
こちらの例では、手動設定はないが、ループバックインターフェースはあるため最大ループバックインターフェースIPアドレスが選択される。
10.156.44.42
DRとBDRの選出例
こちらの例では、192.168.1.0/24
と192.168.10.0/24
のマルチアクセス環境となっている。
DRとBDRはネットワークセグメントごとに選出するので、それぞれ前項の規則に沿って決めていく。
マルチアクセス環境でのLSUパケット
-
192.168.10.2
のルーターは変更を伝えるため、LSUパケットをDRとBDR宛て(224.0.0.6
)に送信する。このとき、192.168.10.0/24
のネットワークセグメントのDRとBDRのみに送られる。 - LSUパケットを受け取った
192.168.10.5
のルーターはLSUパケットを同一ネットワーク内のルーターに向けて送信する。(244.0.0.5
) -
192.168.1.3 / 192.168.10.4
のルーターは左側のネットワークセグメント内ではDRであるため、LSUパケットを受け取ると同一ネットワーク内のルーターに向けて送信する。(244.0.0.5
)
これにより、マルチアクセス環境で障害が発生してもLSDBが更新される。また、LSUパケットを受け取り後、LSAckパケットを送り、DRはLSAckが受け取る。LSAckが送られてこない場合、DRは再度LSUパケットを再度送る。
BDR
BDRは変更を検知したルーターからLSUパケットを受け取り、DRからも受け取る。
DRからのLSUパケットが届かなかった場合、DRがダウンしていると判断し、DRとして動作するようになる。
参考文献
- 林口 裕志; 浦川 晃. シスコ技術者認定教科書 CCNA 完全合格テキスト&問題集[対応試験]200 -301 (p.325). 株式会社 翔泳社. Kindle 版.
- https://note.com/sato_manabi/n/nb179b5e60762