自分のプロジェクトの契約形態はなんだろう
4月からSIerとしてシステム作りを仕事にした新人の皆様へ。
自分が入社する(した)会社は、発注元とどのような契約を結んでいるかを知っていますか?
一作業者としては、あまり自分のプロジェクトの契約形態を意識しなくても仕事をすることは可能です。
契約を結ぶ作業をするのは、営業担当者や営業事務であり、エンジニアはほとんど関与しないですから。
しかし、契約を遂行していくのは、私達エンジニアです。
契約形態によって、何を対価にお金をいただくのか、責任範囲はどこまでか、変わってきます。
当然、プロジェクトのゴールも少しずつ違います。
正直、新人のうちは契約を意識しなくてもよいかもしれません。
しかし、私自身1年目のときに、先輩に各契約の特徴を教えていただいたことが、
のちのちプロジェクトに参加する際の作業の考え方に影響しました。
必要ではないですが、知っていて決して無駄になるものではないと考えています。
よかったら、最後まで読んでいってください。
タイトルからも分かる通り、この記事は技術の話は一切でてきません。
ご注意ください。
主な契約形態
1. 製造請負契約
- 特徴: 特定の成果物の完成を目的とする契約
-
責任範囲:
- 受託者は、契約で定められた仕様を満たす成果物を完成させる責任を負う
- 成果物に瑕疵があった場合、受託者は瑕疵担保責任を負う
- 納期遅延や品質不良が発生した場合、受託者は損害賠償責任を負うことがある
- 代金の対象: 完成した成果物
- 支払い方法: 検収完了後の支払い
製造請負契約は、成果物の仕様が明確に定まっており、完成物が重視されるプロジェクトに適しています。
2. 準委任契約
- 特徴: 特定の業務の遂行を目的とする契約
-
責任範囲:
- 受託者は、善良な管理者の注意義務(善管注意義務)をもって業務を遂行する義務を負う
- 成果物の完成責任は負わないが、業務遂行における過失や注意義務違反については責任を負う
- 代金の対象: 業務の遂行自体
- 支払い方法: 業務時間や作業工数、月単位など
準委任契約は、業務内容が流動的で、成果物の完成よりも技術力やノウハウの提供が重視されるプロジェクトに適しています。
3. 成果物完成形準委任契約
- 特徴: 準委任契約と請負契約の中間的な契約形態
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責任範囲:
- 成果物の完成責任を負う
- 準委任契約の性質も持つため、業務遂行における善管注意義務も負う
- 代金の対象: 業務の遂行と、その結果としての成果物
- 支払い方法: 成果物の完成度と業務遂行時間で変動
成果物完成形準委任契約は、成果物の完成責任を負いつつも、ある程度の柔軟性を確保したいプロジェクトに適しています。
4. 派遣契約
- 特徴: 派遣元(SIer)が雇用する労働者を、派遣先(顧客)に派遣し、派遣先の指揮命令の下で労働させる契約
-
責任範囲:
- 派遣元は、労働者の雇用管理や安全配慮義務を負う
- 派遣先は、労働者の指揮命令や労働環境の安全配慮義務を負う
- 成果物に対する責任は、指揮命令を行う派遣先にある
- 代金の対象: 派遣した労働者の労働時間や労働日数
- 支払い方法: 時間単位、日単位、月単位など
派遣契約は、顧客のプロジェクトに人員を補充したい場合に用いられます。
その他の契約形態
上記以外にも、以下のような契約形態があります。
- ライセンス契約: ソフトウェア製品や技術などのライセンス提供を目的とする契約
- SaaS型(Software as a Service)契約: クラウド上で提供されるソフトウェアサービスを利用するための契約
- 保守・運用契約: 開発したシステムの保守・運用を目的とする契約
- ラボ型開発契約: 一定期間、特定の開発チームを顧客専用に提供する契約形態
まとめ
契約形態 | 目的 | 成果物の完成責任 | 指揮命令権 | 主な責任 | 代金の対象 | 支払い方法 |
---|---|---|---|---|---|---|
製造請負契約 | 成果物の完成 | あり | 受託者 | 成果物の完成、瑕疵担保 | 成果物の完成 | 検収完了後の支払い |
準委任契約 | 業務の遂行 | なし | 受託者 | 善良な管理者の注意義務 | 業務の遂行 | 業務時間や作業工数、月単位など |
成果物完成形準委任契約 | 業務の遂行と成果物の完成 | あり | 受託者 | 成果物の完成、善良な管理者の注意義務 | 業務の遂行と成果物 | 成果物の完成度と業務遂行時間で変動 |
派遣契約 | 労働力の提供 | なし | 派遣先 | 派遣元:雇用管理、派遣先:指揮命令 | 労働者の労働時間・日数 | 時間単位、日単位、月単位など |
新人であっても、その後エンジニアとしてポジションが上がっていっても、契約を選択する場面は無いかもしれません。
ただ、自分が参画しているプロジェクトの契約形態がわかっていると、自分の仕事の責任範囲を把握することができます。
成果物に対しての考え方も変わってきます。
是非、なんとなくでも頭に入れて、今後のエンジニア人生に活かしていただければ幸いです。