はじめに
ペットボトルのキャップが開けにくいときに、キャップを回すよりも本体を回した方が開けやすいという意見がある。これは本当だろうか。
条件設定
ペットボトルを、半径が $ r_m $の円柱と半径が$r_c$の円柱を図のように結合したものだと考える。半径が$r_m$の方が本体、半径が$r_c$の方がキャップをモデル化したものである。
キャップを開けようとするとき、キャップと本体を片手ずつでにぎり、回すことだけを考える。机に置いたり、器具を使わないものとする。
力のモーメントで考える
ペットボトルを開栓しようとするとき、角速度の時間変化は0と近似できるぐらいゆっくり開栓すると仮定する。この仮定より、物体にかかる力のモーメントの和が常に0だといえる。手がキャップに及ぼす力の合力のうち、キャップの接線方向の力を$F_c$とし、もう一方の手が本体に及ぼす力の合力のうち、本体の接線方向の力を$F_m$とする。
したがって、
$$
F_c r_c - F_m r_m = 0
$$
が成り立ち、ペットボトルを開栓するときにはキャップにかける力のモーメントの大きさと、本体にかける力のモーメントの大きさが等しいことがわかる。これは、キャップを回そうとしたときも、本体を回そうとしたときも成り立つ。つまり、キャップを回そうとしているときにも、本体にはもう一方の手で同じだけの力のモーメントを及ぼさないといけない。逆に、本体を回そうとするときにも、キャップには同じだけの力のモーメントを及ぼさないといけない。
キャップを回したときにキャップにかかる合力のうち接線方向の成分を$F_c$ 、キャップを回したときに本体にかかる合力のうち接線方向の成分を$F_m$ 、本体を回したときにキャップにかかる合力のうち接線方向の成分を$F'_c$ 、本体を回したときに本体にかかる合力のうち接線方向の成分を$F'_m$ とすると、
$$
F_c r_c = F_m r_m \
F'_c r_c = F'_m r_m
$$
となる。
ペットボトルを開栓するのに必要な力のモーメントは、どちらを回すのかにはよらないので、
$$
F_c r_c = F_m r_m =F'_c r_c = F'_m r_m
$$
となる。キャップにかかる力のモーメントに注目すると、
$$
F_c r_c = F'_c r_c\
F_c = F'_c
$$
となり、どちらを回してもキャップに及ぼす力の合力の接線成分の大きさは同じである。
結論
前節でキャップと本体どちらを回してもキャップには同じ大きさの力を及ぼさないといけないことが分かった。よって、ペットボトルを器具などを使わずに手だけで開栓する場合、本体を止めてキャップを回しても、キャップを止めて本体を回しても開けやすさは変わらないといえる。
感想
キャップを回すことも、本体を回すことも物理的に見れば等価じゃん。ノートに張り付いたシールをはがすときに、ノートからシールをはがすのに必要な力と、シールからノートはがすのに必要な力は、大きさとかによらず同じでしょう。