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人材市場的な視点からバイオインフォを考えてみる

TL; DR

  • バイオインフォ人材は足りてない
  • 足りてないということはバイオインフォのスキルはキャリア形成に有利
  • みんなバイオインフォやろうぜ

はじめに

「バイオインフォマティシャンが足りてない」っていう話をこの記事見ているような人たちはなんども耳にしたことがあるかと思います。

でもそういうのって基本的に「学会の偉い人がアカデミアの未来のためにどう人材を育成するか」みたいな崇高な話になりがちで、大学院生の頃の僕にはあんまり自分に関係のある話に聞こえませんでした。

しかし人が足りていないというのは「人材の価値が大きく、キャリア形成において有利」ということであり、「生きていく上で美味しい技術」ということでもあります。なので、若手のキャリア形成とか専門性の選択といった文脈でそういう話が出てもいいのかな、と思っています。

本記事では、バイオインフォマティシャンかつ特殊求人ITベンチャーtayoの代表という立場から「バイオインフォマティシャンが足りてない」問題について考えていこうと思います。

本記事の主なターゲット

  • 生命系の研究しながらある程度プログラミングもやってるけど、「バイオインフォ人材」とか名乗る自信はない、ぐらいの人
  • バイオインフォ興味あるしやってみたいけどとっかかりがない人たち
  • キャリアに漠然とした不安抱える生物系の学生

以下の話題は対象外

  • 「そもそもバイオインフォ人材とは何か」
  • バイオインフォ人材の不足はどう解消されるべきか、みたいな高尚な話

そもそもエンジニアが足りていない問題

バイオインフォマティシャンは足りていないんですが、そもそもその母集団(?)である情報技術者が全然世の中の需要的に足りていません。

パーソルキャリア「転職求人倍率レポート」によると、2019年度ではITエンジニアの求人倍率は10倍前後で推移しています。これは、エンジニアのポジション10に対して平均すれば1人の採用にしか成功しないということです。

具体的なイメージとして、「中央値以上の能力を持つpythonエンジニアを東京で採用したい」というポジションを考えてみましょう。

この条件に合う人材をめちゃくちゃざっくり計算すると、

「ITエンジニア総数 (100万人程度)」 x 「pythonできる人の割合(0.2)」 x 「中央値以上 (0.5)」 x 「東京の人口割合 (0.11)」 x 「転職中 (0.1)」 = 約1100人、となります*。

都内で、かつメジャー言語のpythonで、とかで1000人オーダーです。実際の求人だとさらに「webサービス開発経験」「機械学習経験」とか色んな条件がつくので、実際の人材プールはより少なくなるでしょう。

*この試算はこの本を参考にしました

バイオインフォの人材数

ITエンジニアと違いバイオインフォマティシャンの数などはまともな統計などがあまりないため、さらにざっくりした試算になります。

なお、ここでいうバイオインフォマティシャンは

  • wetの生命系だがある程度Rで統計解析できる
  • 集団遺伝学とか進化とか理論生物とか周辺領域
  • 次世代データ解析やったことある ぐらいの層までふわっと含むものとします。

まず、ITエンジニアの100万人に比べ、バイオインフォマティシャンは母数が圧倒的に少ないと考えられます。
例えば「2000年以降にバイオインフォ関連分野の研究室で修士号以上を取得した人材」を適当に見積もると、

「研究室の数 (150ぐらい?)」 x 「年間の平均修士学生輩出数 (4人ぐらい?)」 x 「20年」 = 10000(人)

とかでしょうか。

東大の情報生命選考が設立されたのが2003年ですし、無論次世代シーケンサーのデータを専門に扱う人がいっぱい出てくるのは2010年以降です。なので、実際には数千人オーダーの人材プールなのではないでしょうか。日本バイオインフォマティクス学会の会員数が500人前後だったり、遺伝研スパコンの登録者が1000人程度であることなどを考えても、まぁまぁリーズナブルな数かと考えられます。

バイオインフォ求人市場の外観

上記のように、バイオインフォ人材はおそらく数千人程度のオーダーです。
転職中の人を1割とすると、数百人オーダー。これぐらいの人数をアカデミアと民間企業で奪い合いっているのがバイオインフォの人材状況なのではないでしょうか。

例えば生命系の学部を持つ50の大学がバイオインフォの研究者を10人雇っているとしたらそれだけで500人。
修士学生含めた人材プールが数千人程度のオーダーなので、博士号持ちは(職位云々を抜きにすれば)アカデミアにおいてもポジションに対して人が足りていないような状況にあると言えます。

また、バイオインフォ人材でも情報学寄りの層は普通にITエンジニアやデータサイエンティストとしてIT系に就職したりする人も多く、そっちにも人は流れます。僕の周りの生命情報系の修士でも、民間でもバイオインフォマティシャンとして就職した人は少数派でした。これらを考えると、民間企業がリーチできるバイオインフォマティシャンは非常に数が少なく、恐らく数百人オーダーまで落ちるのではないでしょうか。例によって適当で無責任な計算をすると、以下のようなイメージです。

10000 * 0.1(求職者の数) * 0.5(民間就職を考える人の割合) * 0.5(バイオインフォマティシャンとしての就職を考える人の割合) = 250人

次に、民間にバイオインフォの職はどれぐらいあるのか考えてみましょう。
適当にgoogleで「バイオインフォマティクス 求人」でググってもgoogle jobsで60件ほどヒットします。
google jobsに出てくるのは、google jobs対応の求人広告系のサービス使っている会社です*。実際にはバイオインフォマティクスのようなニッチな専門人材の獲得に適した求人広告サービスって無いので、大多数の企業はリファラル採用のみだったり人材紹介業者だけしか使っていなかったりします。

適当に10倍として、600件程度の求人があるとしましょう。これは、国内に製薬会社が336社あり、バイオベンチャーが2010社程度あることなどを考えても、少なくとも数百人オーダーでは存在するのではないでしょうか。

仮定に仮定を重ねての議論になりますが、バイオインフォマティクスの求人は恐らく「流動人材プールの同数~数倍程度」のオーダーであるのではないでしょうか。ITエンジニアの求人に比べ恐らく求人倍率は低いですが、魑魅魍魎の跋扈するIT求人に比べバイオインフォマティシャンを求める企業は大手製薬などちゃんとした所が多いことを考えると、ここは単純に比較できません。
大手製薬企業にバイオ系の研究者として採用される倍率は数百倍とも言われるので、それに比べるとバイオインフォマティシャンはもの凄い広き門です。

また、ITエンジニアはここ10年で30万人ほど増えていますが、これには「めちゃめちゃ売り手市場」->「未経験者も採用せざるを得ない」->「文系出身ITエンジニア」の増加、とかが効いているとされています。ちなみに修士卒のエンジニアとかは全然増えてません。参考

製薬系とかだと「wet出身者を教育してバイオインフォマティシャンを作る」とかは既にあるっぽいので、そういう流れが人材プール自体を広げてくれればいいなと思います。

*弊社まだgoogle jobs対応できてませんが目下対策中で、年明けぐらいには弊社の求人もgoogle jobsに出る予定です

みんなバイオインフォやろうぜ

今までの話を踏まえた学生へのメッセージがこちらになります。

終わりに

IT系が未経験をガンガン取るので生命系の修士卒とかでもITエンジニアで就職する人多いですが、せっかくなら専門性をより目指せるバイオインフォ系の就職を目指す、っていう流れがもっと生まれると良いのではないでしょうか。
民間企業だと文系出身のめっちゃできるITエンジニアはかなり居るので、なんなら「文系出身バイオインフォマティシャン」ぐらいまで出てくると面白いと思っています。

アカデミアからIT系に人が流れがちなのは「求人サービスがいっぱいあって就活がめっちゃ楽」っていう事情もあるので、tayoではその辺り解消するためにバイオインフォマティクス系の求人をもっと載せていきたいと考えています(企業の方々はお気軽にご連絡を!)。主要なバイオベンチャーの求人とか全部載ってるwebサービス作れたら楽しそうだなーと思います。

また、バイオインフォマティクス学会とかに居るガチ勢だけでなく、基本wetだったけど次世代解析ぐらいは自分でやってた、ぐらいの人まで民間に職がそこそこあることがもっと知られれば、バイオインフォを学びたいと思う学生はもっと増えるんじゃないかと思います。

あと以下のような事項について統計データがあればもっと学生にとってバイオインフォがオイシイ選択肢であることを示せるのではないかと思いました。これも余力できたらちゃんとやりたい。

  • バイオインフォマティシャンの人材プール
  • バイオインフォマティシャンの民間求人数
  • バイオインフォマティシャンのアカデミアにおけるポスト数

それではみなさん良いお年を、バイオインフォマティクスアドベントカレンダーも良さげなエントリーがいっぱいあるので楽しみにしております:)

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