ヘッドハンティングされるエンジニアも多いかと思いますが、
戦国時代でも盛んにヘッドハンティングがされていました!
■豊臣秀吉と竹中半兵衛
私は司馬遼太郎の本が大好きなのですが、一度読んだ物も定期的に何回か読み直してます。
読み直しても毎回新しい発見があって良いですね!
今読み返しているのは、『新史・太閤記』。
※もう5~10回くらい読んでます!
豊臣秀吉の転職&出世&独立記が司馬遼太郎の視点で描かれていて面白いです。
最近読み返して、印象に残ったシーンが、当時、美濃の齋藤家の家臣だった竹中半兵衛を木下藤吉郎(豊臣秀吉の当時の名前)が織田家への帰属を促すシーン。
言わば、戦国時代のヘッドハンティング。
当時、織田家は美濃侵攻を繰り返しており、半兵衛が立てた作戦で、織田軍は手痛い敗北を期していました。
しかし、半兵衛は美濃斎藤家の中ではあまり評価されておらず、酒色に溺れる当主の斎藤龍興に対する主従としての信頼関係もかなり揺らいでいる状況でした。
そこで、藤吉郎は敵地であるにも関わらず、足しげく、半兵衛の下に通い、織田家への帰属を説きます。
当時の常套手段の口説き文句は「恩賞」。
しかし半兵衛には利ではなびかないと感じた藤吉郎は「仕事のやりがい」で攻めます。
藤吉郎は言います。
「自分を見てください。私は農民の出であるのに抜粋され、美濃の調略も任されております。織田家では実力次第でどんどん大きな仕事も任せてもらえます。あなたも織田家でどんどん能力を発揮すべきです。」
しかし、既に冷酷な領主という印象が付いてしまっている信長にあまり良い感情を半兵衛は持っていません。
半兵衛はこう返します。
「信長は家臣を道具の様に扱い、使っているに過ぎない。信長は武士を愛する事は無いのだ。」
それに対して、藤吉郎は
「これは半兵衛殿とも思えないお言葉。士として愛されるとは使われる事ではありませんか。」
これを聞いた半兵衛は妙に納得してしまいます。確かに武士として愛されるのは、おべっかを言い気に入られる事では無く、その能力を買われ、活躍の場を与えられる事では無いのか?と。。。
敵地に命がけで乗り込み、本音でぶつかってくる藤吉郎に対して、徐々に半兵衛の心は動いていきますが、どうしても美濃を裏切る事や信長の配下に着く事を決心できませんでした。
藤吉郎も諦めず、何度も何度も繰り返し口説くのですが、ついに。
「天下のためでござる。」
と藤吉郎自身、思わぬことを口にしました。
当時の織田家の実力はようやく尾張一国を平定したばかりで、とても天下を狙えるような実力は無く、こんなことを言えば世間の笑いものになってしまうところですが、半兵衛は笑いませんでした。
むしろ、これが決定的な一言になり、半兵衛は本当に織田家が天下統一を考えているのか何度も念を押しました。
半兵衛にとっては、大きな舞台で自分の能力を活かせる場こそが、最大の決め手になったのです。
その後半兵衛は、織田家に帰属し、秀吉の前半生の無くてはならない参謀として活躍していきます。
藤吉郎が繰り返し、半兵衛に言っていたことは、言い換えれば、
「あなたは何のために働くのですか?」
という問いを繰り返していたのだと思います。
半兵衛の価値観やキャリアの軸を的確にとらえて、熱量を持って諦めずに口説き続け、最後に「天下統一」という大きな大義名分を打ち出し、心を
掴んだ秀吉は超一流のヘッドハンターでもあったと言えると思います。
ITエンジニアのヘッドハンティングもただ単に、身に付けられるスキルやキャリアにとってのメリットを語るだけでなく、大きな会社のビジョンを語れるかが、大事になってくるかもしれませんね!
『新史・太閤記』だけでなく、司馬遼太郎の小説はビジネス的な観点で読んでみると非常に面白いので、まだ読んだことが無い方は、是非読んでみてください!