初めに
この記事はcommmune Advent Calendar 2023の8日目として投稿されました。
O'REILLYサブスク始めました
弊社では、O'REILLY社の本読み放題のサブスクO'Reilly Online Learningをエンジニアに提供しています。これは主に「エンジニア全体の技術力の底上げ」と「共通認識形成」を目的としたものです。
(参考: https://note.com/commmune/n/n88a9731812ba)
勿論個人で読むこともの可能ですが折角だからチームで同じ本を読みたいと思い輪読会を開催しております。その中で特に効果的だった輪読会の手法について共有したいと思います。
輪読会の問題点
いざ輪読会を社内で開催しようと思っても様々な問題点が挙げられました。代表的なのが以下の3点です。
- 輪読会準備のために本を読む時間がない
- 参加者のスケジュール調整が難しい・輪読会を長時間実施できない
- 参加者の技術レベルにばらつきがあり輪読会進捗進度に差が生じる
これらを解決するような輪読会手法があれば良いなと思い探したところピッタリのものが見つかりました。
ABD手法概要
アクティブ・ブック・ダイアローグ法(ABD手法)は上記の社内での輪読会の問題点を解決してくれる手法です。つまり、
- 事前準備が必要なく
- 短時間で実施できて
- 参加者の技術レベルは厳密には問わない
手法になります。実施時間の関係上、本を精密に読み込む手法ではないためあくまでも社内での輪読会に特化手法と言った内容です。
ABD手法手順
- ファシリテーターが本の概要を紹介
- 本を章ごとに分割する(章ごとに分割できない場合はページ単位で分割する)
- 参加者各自で読みたい章を選択する
- 時間を決定して各自で章を読み込み要約をする
a. コマ1時間の場合は大体20-30分が要約時間の目安になります
b. 要約時間に合わせて1.の章を分割することがおすすめです - 要約した内容を各自で共有する + 質疑応答
以上がABD手法の手順になります。前述した通り、その場で本を読み込むので事前準備の必要はありません。また、自分が興味がある章を読み込むことができるので難易度が高そうであれば別の人に依頼することができます。ここで全員が"読むのが難しい"と判断した場合はそれがチーム全体の平均レベルとなるので時間をかけて読み込むことができます。
ABD手法の公式サイトはこちらhttps://www.abd-abd.com/
KPT
ABD手法を実践した中で最後にKPT(Keep Problem Try)を集計しました。以下は一部抜粋です。
Keep | Problem | Try | |
---|---|---|---|
1 | 限られた時間でアウトプットするのは良い | 本の細かい部分に良いことが書いてあったのでそれを共有の時にもっと伝えたかった | 一つの章に対して複数人で要約するとお互いに新たな発見があると良いなと思った |
2 | 最後の共有と質疑応答で更に理解が深まった | 質疑が盛り上がると時間が押すので時間配分を明確にした方が良さそう | 要約の仕方が人それぞれだったので統一した方が良さそう |
3 | チームのために強制的に読む状況になったので頑張って読めた | 30分の要約がギリギリだった | アウトプットできるようにしたい |
アウトプットしたい
Tryに記載ありましたが折角輪読会で知識を吸収するのであれば業務に直にアウトプットできたら良いなと思いました。そこでABD手法をアウトプット重視型に改良しました、記事を書く上で調査するとジグソー法という手法に酷似していたので先ずはジグソー法について紹介したいと思います。
ジグソー法
- ファシリテーターが本の概要を紹介
- 参加者を数人のグループに分ける
- グループ毎に読む章を決定する
- 章を更に分割してグループメンバー毎に分割して読み込む
- グループ内で共有を実施して章の要約をする
- 各グループ集まり要約を共有 + 質疑応答
ABD手法との違いはグループを作成し、先ずはグループの中で要約をすることにあります。これにより、「1人で要約をしない + 他のメンバーと会話できる・意見交換ができる」という利点があります。普段業務で関わらない人であっても輪読会の中で自然に話し合うことができるので実施してみて良かったと思いました。
難点としては「ABD手法よりも時間を多めに取る必要がある」ことにあります。単純に工程が多くなるので取る時間が多くなります。実施してみた感覚ですが最低1時間30分が必要と感じました。
アウトプット重視のテンプレート
ABD手法の際にはNotionを用いて要約+共有を実施しましたが、それぞれのテンプレートがあった方が良いという意見が出たのでGoogle Jambord機能を利用してテンプレートを作成いたしました。これに付箋アイテムを貼る形でそれぞれの考えを一目で共有していきます。
本の要約だけを目的とすると1枚目で事足りるのですが、今回は業務へのアウトプットを重視したいということもあり2枚目を作成いたしました。特に「開発に活かせそうな事」項目が本の内容+業務の内容を並行して考えることにつながるので必然的に業務へのアウトプットを考えることになります。
効果
輪読会中は特に「開発に活かせそうな事」項目の議論が熱くなりました。「本ではこう書いてあるけど実際にはこうだよね」「このことはもしかしたら開発に活かせるかもしれない」など挙げられました。狙い通り、本の内容+業務の内容を並行して考えることができました。
また、実際に課題として挙がった部分については率先的に実施することができました。以下は社内でシステム運用アンチパターンを題材に輪読会を実施した結果の一部です。オンコールに関する項目だったので社内運用のオンコール体制と掛け合わせて改善できそうな部分について議論することができました。
最後に
組織作りのためには知識の共有とチームビルドアップが不可欠になってきます。そのための手段として輪読会の実施は一つの有効策だと思います。この記事がアウトプット重視の輪読会を実施してみたいエンジニアに届くと幸いです。