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はじめに:

企業はクラウド技術の普及に伴い、ビジネスのデジタル変革(DX)を促進するためにクラウドサービスを活用しています。近年ではコロナ禍におけるビジネススタイルの変化に対応するための手段としてクラウド移行について注目を集めました。様々な企業がリフトアンドシフトを経てクラウドを活用しはじめた中、現在クラウド環境の適切な管理や経済的なコストの最適化など課題を感じ始めている企業が多くいると思います。

特にクラウドコストについては今年のラスベガスで開催されたAWS re:Inventでも深く言及されており、多くの企業がクラウドへ移行したあとのコスト管理、最適化に課題を抱えているのを感じ取れました。

今この記事を読んでいる皆様も同様の課題を感じているのではないでしょうか?もしそうであれば本記事を読み進めることで少しでも課題解決の手がかりになることを願っています。

本記事では、Cloud Center of Excellence(CCoE)とFinancial Operations(FinOps)といった概念が如何に連携し、クラウド環境における効果的なコスト管理、最適化を実現することができるのかについて個人的な考えをまとめています。

一方で具体的なクラウドコストの削減方法については言及していないため、ご注意ください。

では、まずそれぞれCCoEとFinopsの定義を確認していきます。

CCoEとは:

> CCoEは、企業がクラウドを導入し、効果的に活用するための専門チームや組織です。これは、クラウドプロジェクトの統括、ベストプラクティスを共有など。組織全体でのクラウドの利用を促進する役割を果たします。CCoEは、技術的な側面だけでなく、組織全体の変革を推進し、クラウド利用の安定性、セキュリティ、コスト効率を担保します。

FinOpsとは:

FinOps(クラウド FinOps)を主導している団体 FinOps Foundationは、FinOps を以下のように定義しています。

FinOps は、いまだ発展の途中段階にあるクラウド財務管理にかかわる規律(discipline)であり、文化的な試み(cultural practice)である。それは、開発・財務・IT・事業の各部門が共同してデータドリブンなクラウド支出を決定をすることによって組織が最大のビジネス価値を得ることを可能にする。(出典:What is FinOps by FinOps Foundation)

参考記事:用語解説:FinOps

上記の定義からクラウドコスト最適化という領域においてCCoEは組織のクラウドストラテジーや状態に合わせて適切なプランを策定し、実行に移す役割を果たし、FinOpsはこれに沿った費用最適化の手段を提供していることがわかります。

以上を踏まえ、CCoEが知っていて損のないFinOpsの基本的な考え方(FinOpsのフレームワーク)やクラウドコスト最適化において重要となる指標(ユニットエコノミクスについて)について説明していきます。

FinOpsフレームワーク:

FinOpsフレームワークは、クラウド環境でのコスト効率を最大化し、ビジネス価値を最適化するためのアプローチを提供する枠組みです。主に以下のような要素があります。

*本来FinOp フレームワークは、原則・ペルソナ・段階・マチュリティ・習熟度・分野・ケイパビリティからなっていますが、ここでは深く言及せずに簡単にまとめたものを以下に記載しています。

文化(Culture):

FinOpsは費用意識を組織文化に根付かせることを重視します。クロスファンクショナルなチームを形成し、コストに対する共通の理解を促進することが重要だと提唱しています。

プロセス(Process):

コスト管理をするうえで必要となるプロセス。例えば、組織内のコスト管理、予算の策定・管理、タグ付けやリソースの分類など。

ツール(Tools):

FinOpsは効率的に運用するために必要となるツールの策定。コストモニタリング、削減、コスト管理など。

教育と認識向上(Education & Awareness):

従業員に対してFinOpsの概念やベストプラクティスに関する教育を提供すること。

最適化(Optimization):

リソースの最適な利用を追求し、不要なコストを削減するための手法やプロセスを実施します。

財務(Finance):

ビジネス目標に基づいてクラウドコストを予測し、予算を管理します。実際のコストと予算の逸脱をモニタリングし、戦略の再評価や調整を行います。

効果測定(Measurement):

KPIs(Key Performance Indicators)を設定し、コスト、パフォーマンス、セキュリティなどの観点から効果を定量的に測定します。これにより改善の余地を見つけ出します。

上記はFinOpsのフレームワークを噛み砕いてまとめたものになります。シンプルな考え方ではありますが、CCoEとして組織のクラウドコスト最適化を実践するうえでは基本的なコンセプトとなっているので、覚えておいて損はないかと思います。

ユニットエコノミクス

ユニットエコノミクス(Unit Economics)は、経済学の概念の一つで、企業が製品やサービスを提供する際に、その一単位(ユニット)に対するコストと利益を分析し、評価することを指します。

同じようにFinOpsにおけるユニットエコノミクスとは、クラウドコン環境において、1つのサービスやぷるジェクトなどの提供にかかるコストとその効果(価値)を評価する概念です。FinOpsでは、個々のユーザーやトランザクション、データ転送など、具体的な単位に着目して、その単位ごとのコストを理解し、最適なバランスを求めます。

例えば、オンライン通販のようなサービスを展開している場合に一つの商品が購入されるまでにかかったクラウドコストや有名な例であればUberなどの配車サービスにおける1ライドあたりにかかるコストのことを指します。

ユニットエコノミクスを把握することができると企業としてクラウドコストをほぼ完全にコントロールできている状態ということができるかと思います。

ただ、このクラウドエコノミクスを企業として把握するということは重要ではあるのですが、それよりも企業の目標とクラウドコストの関係性を適切に評価するということがユニットエコノミクスの考え方を取り入れる本来の目的となります。

よくクラウドコスト最適化というとコストの削減が着目されますが、FinOpsではこれをコストの最適化とは呼びません。

クラウドコスト最適化とは企業の求める指標(売上や利益など)とクラウドコストの費用対効果が最大化されている状態を保つことが重要とされています。

シンプルな例を用いて説明をすると売上を上げるためのインフラ投資は積極的に行なうべきであり、このときに以下にミニマムなコストで最大の売上を達成することができるかが重要になるということです。

よく勘違いされるのが、CCoEを立ち上げた際にコスト最適化=コスト削減の考え方になってしまうことで、組織内でコストに対する共通理解が得られずにコンフリクトを起こしてしまうケースがあります。

ファイナンスからはコスト削減の指示があり、営業やエンジニアからは顧客獲得のための機能追加やリソース追加など。異なる目的を持ったチームでコンフリクトを起こしてしまい統制が取れないことがあります。この問題の解決策としてユニットエコノミクスの考え方がFinOpsに取り入れられています。

FinOpsではこのユニットエコノミクスの指標を取り入れることで、会社全体でコストへの理解を共通化し、各部門でコスト意識を醸成ささせる仕組みを整えることが重要だと説いています。

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