#バネの落下
https://twitter.com/irobutsu/status/1125581991645081600
↑このリンクにあるバネの落下の画像が面白かったので考えてみた。面白い点は「手を放したあとしばらくの間、バネの下端が止まって見える」ことである。ぼくはこれは「バネで繋がれた2つの質点をぶら下げて手を離した時の下側の質点の運動」で近似できると思った。バネの下端が止まって見えるのは
- バネの重心の自由落下
と
- バネの下端が弾性力で重心に引き付けられる運動
が打ち消しあって起きることだと思ったからだ。
図の様に2つの質量mの質点が自然長$l$でバネ定数$k$のバネにつながれ、上の質点が固定されて一様重力(下向きに重力加速度$-g$)で引かれて釣り合っているとする。このときバネの伸びは$mg=kx_0$で決まるので$x_0=\frac{mg}{k}$で与えられる。手を離した後、バネの下端は($x$座標を上の質点の初期位置原点とし、垂直上向きにとって)
$$
x = -l - \frac{1}{2} g t^2 - \frac{x_0}{2} \cos( \omega t)
$$
で落下する(単振動の振幅が半分になっているのは重心(=2つの質点の中点)から下の質点までの距離は質点間の距離の半分なので)。$\omega = \sqrt{\frac{k}{\mu}}$ ($\mu = \frac{m}{2}$は換算質量)である。両辺を$x_0$で割り、$x_0=\frac{mg}{k}$を入れると
$$
\frac{x}{x_0} = -\frac{l}{x_0} - \frac{1}{2}\left(\frac{\mu}{m}\right) \omega^2 t^2 - \frac{1}{2}\cos (\omega t) (1)
$$
を得る。 $ \cos \omega t \simeq 1 - \frac{1}{2} \omega^2 t^2 + \frac{1}{24} \omega^4 t^4$を入れると
$$
\frac{x}{x_0} -\simeq \frac{l+x_0}{x_0} + \frac{1}{48} (\omega t)^4
$$
になって下端は($t^2$のオーダーでは)落下しないことが解る。
図は縦軸を変位($x_0=1$というスケール)で横軸を$\omega t$にした時の(1)式である(ただし、簡単のため$l=0$とした)。$wt= \pi \simeq 3.28$(つまり半周期)の範囲ではほとんど下端は動かない。実際はバネが縮み切ったところで上端とぶつかってしまうのだろうけど、ビデオでバネが縮み切るまで下端が止まって見えるのはこのせいだと思う。
ということでこの面白いビデオは
「バネで繋がれた2つの質点をぶら下げて手を離した時の下側の質点の運動」で近似できる
んでいいんだと思う。ご意見をお待ちします!(計算間違いなどご指摘よろしく!)