はじめに
EC2 を利用するうえで、パフォーマンスと可用性を最適化するために重要な機能の一つが プレイスメントグループ です。プレイスメントグループは、EC2 インスタンスの配置戦略を制御し、ワークロードの要件に合わせて最適な環境を提供します。本記事では、プレイスメントグループの基本概念、各タイプの特徴、ユースケース、注意点などを記載します。
プレイスメントグループとは
プレイスメントグループとは、EC2 インスタンスを物理的に近い場所に配置するための論理的なグループです。インスタンス間のネットワーク遅延を最小限に抑えたり、ハードウェア障害時の影響を軽減したりするために使用されます。
プレイスメントグループには、主に以下の3つのタイプがあります。
- クラスタープレイスメントグループ
- インスタンスを低遅延かつ高スループットなネットワークで接続する必要がある場合に最適
- パーティションプレイスメントグループ
- 大規模な分散型ワークロードにおいて、ハードウェア障害の影響を分散させる必要がある場合に最適
- スプレッドプレイスメントグループ
- 少数の重要なインスタンスを個別のハードウェアに配置し、可用性を最大限に高める必要がある場合に最適
プレイスメントグループは任意で選択します。インスタンスをリプレイスメントグループに作成しない場合、EC2 は、関連する障害を最小限に抑えるため、すべてのインスタンスが基盤となるハードウェア全体に分散されるような方法でインスタンスを配置しようとします。
各プレイスメントグループの特徴と適したユースケース
プレイスメントグループごとにその特徴と適したユースケースを記載します。
クラスタープレイスメントグループ
同じアベイラビリティーゾーン内のインスタンスを、物理的に最も近い場所に配置します。
インスタンス間のネットワーク遅延が非常に小さく、スループットが向上します。
適したユースケース:
- 高性能コンピューティング (HPC)
- 機械学習
- ビッグデータ分析
- 低遅延を要求するアプリケーション
クラスタープレイスメントグループは、ネットワークパフォーマンスを最適化しますが、ハードウェア障害時の影響が大きくなる可能性もあります。そのため、可用性を犠牲にしてでも EC2 インスタンス間の通信遅延を極力なくしたい場合に利用します。
パーティションプレイスメントグループ
インスタンスを複数の「パーティション」と呼ばれる論理的なグループに分割します。
各パーティションは異なるハードウェアに配置され、パーティション内のインスタンスが同時に障害の影響を受ける可能性を低減します。
適したユースケース:
- Hadoop、Cassandra、Kafka などの分散型データベース
- 大規模なウェブアプリケーション
- バッチ処理
スプレッドプレイスメントグループ
各インスタンスを個別のハードウェアに配置します。インスタンス間の物理的な距離が最大化され、単一のハードウェア障害による影響を最小限に抑えます。
適したユースケース:
- 重要なデータベースインスタンス
- ライセンス制限のあるアプリケーション
- 高可用性が求められるアプリケーション
パーティションプレイスメントグループとスプレッドプレイスメントグループは、どちらもEC2インスタンスの可用性を向上させるための機能です。ただ、その目的と配置戦略は異なります。
パーティションプレイスメントグループは、大規模な分散型ワークロードの耐障害性を向上させるために、インスタンスをパーティションに分割して配置します。一方、スプレッドプレイスメントグループは、少数の重要なインスタンスの可用性を最大限に高めるため、各インスタンスを個別のハードウェアに配置します。
したがって、ワークロードの特性に応じて、適切なプレイスメントグループを選択することが重要です。大規模な分散型アプリケーションの場合はパーティションプレイスメントグループが適しており、少数の重要なインスタンスの可用性を高めたい場合はスプレッドプレイスメントグループが適しています。
プレイスメントグループ利用時の注意点
プレイスメントグループは、同じアベイラビリティーゾーン内のインスタンスに対してのみ有効です。
インスタンスの起動時にプレイスメントグループを指定する必要があります。後から変更することはできません。
プレイスメントグループの種類によって、起動できるインスタンスタイプやサイズに制限がある場合もあります。
その他追加情報
プレイスメントグループの作成と管理は、AWS Management Console、AWS CLI、AWS SDK などから行うことができます。
プレイスメントグループの利用料金は無料ですが、インスタンスの料金は通常通り発生します。
まとめ
プレイスメントグループは、EC2 インスタンスのパフォーマンスと可用性を最適化するための強力なツールです。ワークロードの要件に合わせて適切なプレイスメントグループを選択することで、アプリケーションのパフォーマンスを最大限に引き出し、可用性を向上させることができます。