TL;DR
- 広告主・優良メディアにとっては長期的にポジティブ、ダメディアは淘汰される
- Adblockが普及した場合一番泣くのはアドネットワーク事業者
- なおAdblockされるとGAが無効化する点についてはここでは言及しない(GAというかjsだと思うが)
前提として
Adblockの論点を議論する際に抑えておかなくてはいけない前提が2つある。
Adblockの影響範囲はアドネットワークによる出稿に限る
web広告には極めて大雑把に大別すると以下の2種類
- 純広告(ネイティブアドと近似してもよい)
- アドネットワーク
Adblockを有効にした場合にBlockされてしまうのは概ね2である。1はそもそも広告というより単位としては「記事=コンテンツ」に近いため、Adblockの影響が及ばない事が多い(例外はもちろんある)。
Adblockはマス層へ簡単に普及しない
- Adblockという機能をユーザーが利用するためには、3rd partyのクライアントを通じた設定というステップを踏む必要がある。
- このステップは以下の2点から、マス層には非常にハードルが高い
- そもそも有効化するチューニングというタスク自体を認識できない
- 3rd partyのクライアントが課金を必要とする場合が多い
- いくら日本でのiOSの普及率が高いとはいえ、Adblockの機能を課金+めんどうなチューニングをしてまで利用したいと考えるユーザーは非常に少なく、逆に利用層はギークやITテクノロジー界隈のユーザーがメインになると筆者は考える。
本稿に関してはこれら前提を踏まえたい。
Adblockの影響を考える
こと広告業界において、中間プレイヤーが極めて多層化し複雑怪奇な構造となっているが、最も本質的なプレイヤーである広告主と、メディアにとってAdblockの影響を考える。
広告主
-
影響:impが減りCTRが上がる。ビジネスKPI(CPA, LTV)等への影響はポジティブ。長期的に考えると、そもそも有効なアドテク手法は1年単位で変わる(替わる)ので考慮しなくても良い気がする。
- impの減少は露出量という点からネガティブだが、露出の意味はブランディングかアトリビューションにある。正直バナー広告でブランディングなど微妙だし、アトリビューションも真偽を正しく測るのが難しい。
- 見込み客へ訴求するチャンスが減ると思われるが、そもそもAdblockを使用するようなユーザーは表示された広告を意地でも踏まないようなユーザーがほとんどであるため、初めから見込み客にすら成り得ない場合が多い。
- そういったユーザーへのimpが排除されることは、広告機会を純化してくれるため、ポジティブである。ビジネスKPIに良いフィードバックが得られるのではと筆者は考えている。
メディア
- 影響:impやclickの減少により一律でネットワークからの収益化が厳しくなるが、メディアとして品質の高いコンテンツ・プラットフォームを生み出しているところは相対的に純広告の価値が上がるので影響なしorポジティブ(例. mery)。結果的にダメディアが淘汰される。
ちなみにAdblockによって一番大きな影響を受けるのは…
おそらく中間業者たるアドネットワーク事業者だと思われる。
- 駄メディアを排除する圧力がかかり、これまで効率的に稼ぐことのできたimpが得られなくなる。
- アドネットワークは「量が制す」世界なので、如何に大量の広告枠を保有できるかが鍵。独立系のネットワークが氾濫する現状だが、adblockによりimpの総量が減ると食えなくなるネットワークが撤退し、最終的にはGoogleのような巨大ネットワークに淘汰されていく。
コメント
- 今後Adblockがマス層へ受け入れられるような事があれば、より純広告的な、ネイティブアド的なものがメディアにとって主流のマネタイズ手法になっていきそう。
- 自社のサービスとしてはEC事業主として広告を出稿し、メディアで単体収益化を検討していたりするので、両方の目線で考えられるにはいいお題目でした。
- 事象の理解しやすさを優先するためにかなり雑に分類したり前提置いたりしていますが、大きく理解は外れていないはず。