イントロダクション
「それブロックチェーンでやる意味あるんだっけ?」
ブロックチェーンを活用したサービスを検討するとき、必ずといって言いほどこの問題に直面します。
私もブロックチェーンに携わるようになってから、ずっとこの問題を考えていたのですが、一旦自分なりに結論が出たのでここで共有したいと思います。
※あくまでも個人の見解ですので参考程度にお読みください。
プロトコルファースト設計
ブロックチェーンは「価値交換のインフラ」と言われ、「デジタルアセットを人から人へと流通させていく」ことを確実に記録するソリューションです。
ここから、ブロックチェーンが暗黙の前提としている要素が2つ見えてきます。
- 複数の参加者がいること
- 参加者間でデジタルアセットが管理・運営されていくこと
複数の参加者によってデジタルアセットを管理運営していくためには、まず、データ構造等の規約(プロトコル)がきちんと整備・統一し、参加者がそれに準拠する必要があります。
従来のアプリケーション設計は「業務駆動設計」(業務としてやりたいことをまず定義して、それに合うシステムを作りあげる方式)だったので、プロトコルに合わせて業務をデザインするのは、なかなかチャレンジングな取り組みになると思います。
「人間によるガバナンス」からの開放
「それブロックチェーンじゃなくてもできるじゃん」という悩み・指摘は大筋で的を得ていますが、重要な視点がひとつ抜けています。
ブロックチェーン以外のテクノロジーで「デジタルアセットが人から人へと流通する仕組み」を実現しようとすると、多かれ少なかれ、「人間によるガバナンス」に頼らざるを得なくなるという点です。
たとえば、複数の会社間でデータ連携をしようとすると、各社ごとに異なる規格の中で、コニュニケーションしながら連携方法を決めていきます。そして、仕様を変える場合は事前に各社に連絡するといった、「人間のコミュニケーションによる全体維持」が必要となります。
現実問題、これがすごく難しい・・・。
大抵1社くらいは勝手に仕様を変更して、全体を混乱に陥れたりします。
ブロックチェーンは「人間によるガバナンス」といった不確実なものではなく、「テクノロジー(プロトコル)によるガバナンス」で縛るため、1社だけで勝手な仕様変更はできず、結果として全体維持を確実なものにする効果があります。
ブロックチェーンが向く領域・向かない領域
これらの整理から、ガバナンスが効かせづらい領域(=参加者が複数いて、放っておくと縦割りな仕様を作り出してしまいそうな領域)にこそ、ブロックチェーンを活用する意義があるように思います。
一方、「人間によるガバナンス」が十分に機能する状況下では、ブロックチェーンを導入するメリットは限りなく低くなるのではないかと考えています。(単一企業内でのデータ連携、国による存在証明など)