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ブロックチェーンを検討するときに知っておいたほうがいいこと

Last updated at Posted at 2018-05-25

はじめに

FinTechでブロックチェーンが話題になっていますが、いざ業務で使おうとするとどう使えばいいのか分からなくなります。
この問題を解決するには、ブロックチェーンの技術面だけではなく、時代の流れやビットコインで実現したかったことを知っておく必要があります。
今回はこれらの説明とともに、ブロックチェーンを採用することの意義を考えてみたいと思います。

ブロックチェーン一般論

ブロックチェーンは下記4つの特性があります
1. 非中央集権的
1. 高可用性
1. 改ざん困難性
1. データ共有特性(ビザンチン障害耐性、非決定性排除)

どの企業もそうですが、特に金融業界は「絶対にダウンしてはいけない」「絶対に改ざんされてはいけない」という要求が強いようです。
そのため、「高可用性」「改ざん困難性」を持つブロックチェーンを各社で鋭意検証しています。
私達も銀行業務にブロックチェーンを適用することを検討していますが、さまざまな課題に直面しています。

「それブロックチェーンじゃなくてもできるじゃん」の呪縛

一般的に銀行業務は「信用のスコアリング」と「商行為の記録」という、大きく2つのコア業務で成り立っていると言われています。
私達のPoCでは「商行為の記録」業務でブロックチェーンの適用を検討しています。具体的には、預金管理、送金、融資実行、返済などをスマートコントラクトとしてプログラム化し、ブロックチェーン上で動かします。
(信用のスコアリングは様々な要素が関わってくるので、外部データ参照が必要となり、オラクル問題を考慮する必要があります)

しかし、ある程度作っていくとふと気づくわけです。「これ、ブロックチェーンにする意味あるんだっけ」と。
私が直面した悩みは下記のとおりです。

  • 分散台帳はRDBのレプリケーションと何が違うのか
  • プライベートチェーンにおいて、コンセンサス(分散ノードに対するデータ同期)を意識する必要があるのか(クローズドシステムの前提で、プライベート型チェーンで検証しました)
  • プログラムにバグがあった場合のデータパッチや、法的な取消遡及効を考えるとRDBのほうが対応しやすいのでは?
  • スマートコントラクトを更新したい場合、スマートコントラクトを保持する各ノードへの更新が発生して大変
  • スマートコントラクトは直列実行されるので、パフォーマンスが心配

ブロックチェーンの特性にフォーカスして考えれば考えるほど、ブロックチェーンを採用するメリットが見えてこないという呪縛に陥りました。

必要なのはテクノロジー全体の流れと知ることと、ビットコインが必要となった背景を知ること

テクノロジーは何かしらの必要性に迫られて生み出されます。ここではブロックチェーンに裏付けられたビットコインが生み出された理由について考えてみます。

真意は生みの親であるサトシナカモト氏のみぞ知るなのですが、ブロックチェーン技術の本質は「独自の経済圏を作ること(=自分たちの理想の世界を作ること)」にあると思います。

ビットコインの場合、まず「誰にも邪魔されずに送金できる経済圏を作る」という目的がありました。
その経済圏で流通する価値基準としてビットコインを定義し、お金を取り扱う上での最大の問題である「二重支払」を防止するために、全員が同じデータを参照できる仕組みを作り、それが結果として高可用性や改ざん耐性をもたらしました。

つまり、ブロックチェーンの特性は、独自経済圏を作るという目的からの結果に過ぎないのです。

別の視点からも考えたいと思います。
ブロックチェーンを始めとする近年のテクノロジーは「組織が保有していた力を個人に付与すること」、つまり「徹底した民主化」を志向するという特徴があります。

例えばGoogleが提供する検索サービスは、世界中の知識にアクセスする力を個人に与え、AmazonやMicrosoftが提供しているクラウドインフラサービスは企業レベルでしか持ち得なかった開発能力を個人に与えました。

では、ブロックチェーンは個人にどのような力を与えるのでしょうか。
ブロックチェーン技術は「経済そのもの」を民主化し、自分たちが必要とする経済圏を自由に創出することを可能とするテクノロジーなのです。

ブロックチェーンの本質を考えずに、枝葉末節である技術特性ばかりに目を奪われると、前述したような呪縛にとらわれてしまいます。

独自経済圏を作るというチャレンジングな課題

近年、銀行のコア業務である「信用のスコアリング」はAIに、「商行為の記録」はDB技術により代替されつつあります。
また、銀行の存在意義である「お金を企業や個人に融資して、経済を循環させる」ことすら、クラウドファンディングの登場によって脅かされています。
そのため、銀行を始めとする金融機関は、これまでの業務から離れ、全く別のフィールドで戦うことを余儀なくされます。
独自の経済圏を創ることは、その解決策の一つになりそうです。
独自の経済圏を創ろうとすると、そこでの価値基準が必要となります。サトシナカモト氏はそれをビットコインとして定義しました。世間一般のアルトコインやトークンもその経済圏における価値基準です。

ブロックチェーン上での価値基準を定義するためには、独自のトークンを発行するのが手っ取り早く、それが「トークンエコノミー」の形成につながっていきます。

今後の金融機関に求められるのは、「どのようなトークンエコノミーを形成するか」の戦略であり、テクノロジーサイドに求められるのは、「ブロックチェーンを活用して独自トークンを発行し、それを流通・循環させていく」ための技術論だと思います。

ビットコインやイーサリアムがほとんど問題なく動き続けていることから分かるように、ブロックチェーンはトークンエコノミーを形成して維持するテクノロジーとして非常に優れているのです。

ブロックチェーンの採用をするときは、「非中央集権」「高可用性」「改ざん不可性」「分散性」といった技術特性だけでなく、「どのようなトークンエコノミーを形成していくか」に焦点をあてて検討するのがよいのではないでしょうか。

参考:

お金2.0 新しい経済のルールと生き方 (NewsPicks Book) 佐藤航陽
https://www.amazon.co.jp/dp/B077N93YYV/ref=dp-kindle-redirect?_encoding=UTF8&btkr=1

世界を動かす小さな経済圏、「しあわせの経済」とは
http://alternas.jp/study/global/73034

銀行の役割と存在意義について再考する
https://asset-formation.com/2015/12/31/column-money-29/

ブロックチェーン・エコノミクス 分散と自動化による新しい経済のかたち
https://www.amazon.co.jp/gp/product/B0718ZLXQ7/ref=oh_aui_search_detailpage?ie=UTF8&psc=1

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