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株式会社ACCESSAdvent Calendar 2020

Day 25

何故、日本にはGAFAが生まれないのか

Last updated at Posted at 2020-12-24

前置き

ACCESS Advent Calendar 2020 の25日目の記事です。
昨日は @numatami さんがデザイナーとソフトウェア開発チームの共同作業について話してくれました。

Merry Christmas!
今年の残り、そして来年が皆様にとってよい年でありますように。

技術的といえば技術的、そうでないといえばそうでない、
「何故、日本にはGAFAが生まれないのか」の個人的コメントです。

想定する読者

  • GAFAがどうして生まれないのかというような大上段の問いかけが好きな人
  • 今すぐ書かなければならないプログラムがない人
  • 今すぐなんとかしなければならないソフトウェアプロジェクトの担当でない人
  • 今すぐ勉強しなければならないプログラミング言語、フレームワーク、機械学習のアルゴリズムがない人

GAFA

Google, Amazon, Facebook, Apple のような巨大IT企業です。
成功しすぎて誰も止められなくなり、EUや米国司法省は法律の力を借りて、止めたり、分割したり、お金をむしりとったりしようとしています。
GAFAって聞いたことがないという人はこちらをご参照ください。

「何故、日本にはGAFAが生まれないのか?」という問い

この問いかけは、暗に「GAFAが生まれない理由があるのなら、それを解決して、生み出したい」という願望を表出しています。

GAFAが生まれる条件

  • ビジネスモデル革新
  • 巨大IT企業を生み出そうとする意志
  • 企業をスケールアップする技術
  • 解析・合成・運用、三位一体となる技術的集積

 ビジネスモデル革新については日本にSheril Sandbergが何故いないのかというような話になりますし、そもそもビジネス管理の話をディープにするのは私には荷が重いので、ここでは割愛します。

 以下、残り3つに関してお話します。

GAFAが生まれない理由1:目指していないから

私がGAFAに匹敵するような企業を起こしたわけでもなんでもないので口幅ったいことを言うのもはばかられますが。

一番情けないのは、経済産業省の審議会とかで
「どうせGoogleにはかなわないから」とかよく聞くことです。
勝てると思わなかったらそれは勝てないです。

Googleが出てきたとき:
「画像が検索できる検索エンジンが出てきたんだって。
 ふーん。だから何?」
みたいな感じだったことを覚えています。
PageRankは秀逸なメカニズムですが、それだけで素晴らしい検索エンジンにはなりません。これについては三番目の三位一体で述べます。
日本や欧州はGAFAには白旗状態で、技術では勝てないので法律で勝とうという戦略です。これでは百年たっても勝てません。
まず、勝てるわけないという負け犬根性の払しょくが課題です。

参考動画: 目指していないから

GAFAが生まれない理由2:企業をスケールアップする技術がないから

100ccのコップには100ccの水しか入りません。
会社は

  • 創業期(市場を作り出す)
  • 拡大期(市場を制覇する)
  • 覇権期(隣接市場を統合し覇権を確立する)
    の三段階で成長します。
    それぞれの時期に必要なスキルセットや人脈が違います。
    シリコンバレーがすごいと思うのは次々にリレーをしてそれぞれの段階をやりとげるスペシャリストがいることです。
    巨大な宇宙ロケットをそのまま月まで着陸させようとしたらいつまでやってもできません。
    日本の会社はすべてカスタム製造で、創業者が自分の会社を作り、ステークホルダーがそれに合わせるようにしています。
    これでは短期間に大きな会社は作れません。

参考動画: [企業をスケールアップする技術がないから] (https://youtu.be/VuK4BSadZHw)

GAFAが生まれない理由3:三位一体となる技術的集積がないから

上ふたつがどちらかというとマインドや人間リソースの話だとしたら、これは技術の話です。
特にGoogleがすごいと思うのは人類が作り出す3つの知の創造の方法を兼ね備えていることです。
それは

  • 解析
  • 合成
  • 運用
    の3つです。

私はGoogleの技術の一部しか理解していませんが、これはすごいという技術が数多くあると感じています。

まず、解析。これはPageRankです。
サイトを被リンクの重要度で重みをつけるという考え方は優れていると思います。
PageRankはさまざまなバリエーションを生み出していますが、バリエーションが生まれるとういうのもオリジナルのアイディアが秀逸だったからだと思います。

二番目に合成。これは AdWordsのオークションメカニズムです。
これもYahoo! Japanの研究開発のトップの人に10年くらい前にスタンフォード大学か何かの広告技術の授業を紹介していただいた時に知りましたが、感動しましたね。
AdWordsはなんどもブランド名が変わっているのでAdWordsのオークションメカニズムといって通じるかわからないですが、紹介したいのは以下の技術です。

  • オークションされた価格と情報の質を掛け合わせ、その上位から落札する
    このアイディアが素晴らしいと思ったのは、三位一体:
    1.広告基盤を提供するGoogle
    2.オークションに広告を出す広告主
    3.広告を見るユーザ
    の全体の利益を最適化する、という観点です。
    通常の広告基盤はたくさんお金を出す広告主の広告をたくさん出します。
    というわけでユーザは見たくもない広告を見させられるわけです。
    しかも見たくもないのでコンバージョンもあがりません。
    誰得になります。
    Googleは情報の質を測ることができるというコンピタンスを使って、エコシステムに最適な解を提供しているのです。
    私が「合成」といっているのはこのエコシステム構築のスキルです。

三番目は運用です。
私はよくゲーム設計の講演で、現代は運用知の時代、面白いから人が来るのではなく、人が来るから面白くできるのだ、と言っています。
人はだれも人類の代表にはなれません。
人はそれぞれ感じ方が違うからです。
ユーザの満足をどう設計するか、それはユーザが満足しているかどうかを測るしかありません。
これが実現されているのが現代の巨大ネットワークゲームインフラです。
Googleの技術で一番すごいと思うのはMapReduceです。
この論文を読んだときには本当に鳥肌が立ちましたね(上記のAdWordsも相当感動したけど)。
世の中に分散処理技術というのがあって、IEEEの分散処理国際会議が生まれたのは1973年です。
この時、会場に集まった研究者は30人ほどでした。
分散OSというのはそのときからあって、Hydraとかいろいろな研究がありました。
しかし、分散処理の研究者は頭のいい先生が多かったのですが、しばらくの間、論文を書くための研究ばかりでした。
世の中に分散OSを本当に必要とするアプリケーションがなかったからです。
Google検索エンジンは地球規模の分散処理基盤を本当に必要とした最初のアプリケーションだと思います。
これを実現するためにGoogleは(Jeff Deanが、かもしれませんが)MapReduceを作り出しました。
これこそがボトルネックを作らない実アプリの最初です。
もちろん、GFS (Goole File System) やBigTableがなければ処理としては完結しませんが、MapReduceは30年かかって人類が到達した本当の分散処理です。
そしてそれを生み出したのは本当に分散でないとできない真に巨大なアプリケーションの存在です。
しかもそれをOSSにできるように技術を公開したのがまたすごいのですが、まあ、公開しても追いつけない自信があったのでしょうね。

解析と合成と運用の三位一体の発明がないとGAFAを打ち破るような新しい企業は生まれないと思います。

参考動画; [三位一体となる技術集積がないから] (https://youtu.be/9Zp125K4Qck)

日本にGAFAは生まれないのか

そんなことはないと思います。
誰が言ったか忘れましたが、
「プロフェッショナルとは他の人が一生かかってもできないことがやすやすとできること」
人の100倍速く走ったり、100倍重いものを持ち上げたりすることはできませんが、脳の働きはほとんど無限大といっていいくらいの差がつくことも原理的にはありえます。

すごいアイディアがあり、意思とスケールアップと三位一体の技術が素晴らしい未来を作りあげてくれることを祈念します。
そんなアイディアが生まれて成長するのを見ていたいです。

おまけ

Jeff Deanももう50歳過ぎ。
知らない人のために [全盛期のJeff Dean伝説]
(https://qiita.com/umegaya/items/ef69461d6f4967d5c623)

ついでに宣伝:
 SONYが社内外に向けて講演を共有するBRIDGE TERMINALで「行動誘導技術とデ・ゲーミフィケーション」と題して2021年1月13日(水) 19:00-に講演します。
 まだ講演予告は出ていないようですが、ご興味のある方はご参加ください。

2020年12月27日追記
 SONYからはとっくに連絡(講演予告)がきていました。失礼しました。

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