はじめに
こんにちは、今回はHR(人事)領域でのChatGPTを使ったデータ分析の事例をご紹介します。
そもそもQiitaにてどのくらい組織/人事領域が求められているかはわかりませんが、
「へぇ、こんな手法もあるんだ」と参考にしていただければ幸いです。
またあなたが人事や多くの組織を管掌する現場マネージャーであれば、
本記事の手法を活用することで、たとえデータ分析のスキルがなかったとしても
組織改善を効果的に進められるようになるのでご参考にどうぞ。
本記事では具体的には
- エンゲーメントサーベイ(従業員に回答してもらったアンケート)データを元に
- 主成分分析という機械学習の手法を用いて
- 組織の開発を行う
- そしてそれをChatGPTで行う(コードを書かずに実行可能)
という方法を紹介します。
ですが、これではまだ専門用語が多くてよくわからないという方も多いと思うので
これからできる限り噛み砕いて説明しますね。
エンゲージメントサーベイとは
HR領域では昨今、エンゲージメントサーベイというものが流行っています。
簡単にいうと、組織診断を目的とした従業員向けのアンケート調査です。
従業員に働きがいや働きやすい環境を提供することで、
エンゲージメント(=組織に対する愛着)を高め、
結果的に組織の労働生産性を高めたり顧客満足度を高めることができるという背景で
導入が加速しています。
従業員に日々の体験をアンケートで聞いて、データを集計した後の活用方法としては、
人事や現場マネージャーが組織状態を数値で把握し、改善アクションを行うというものになります。
エンゲージメントサーベイを導入することで
- これまで勘や経験で捉えていた組織状態を数値で把握できること
- 改善アクションをとった結果をサーベイで進捗確認できること
といった良さがあります。
主成分分析とは
下記の記事で解説されている内容がわかりやすいです。
https://www.minitab-kke.com/post/pca_analysis
ひとことで言うと、たくさんある変数をまとめようねという分析手法です。
50も100もの軸で判断できないので、それらを新しく2軸とか3軸とかにまとめてしまって
人間でも判断できるようにしようねというものです。
例えば、とある学校において、学生が文系/理系どちらの指向性があるかを判断するときに
多くの科目の点数から判定するのでは難しいので
新たな軸を用いて判定しましょうというケースが考えられます。
このとき、そのままでは科目数が多く人力で判定するのが難しいですが、
2軸に縮減してしまえば、判断が簡単になります。
Before:多くの科目(現代文・古文・漢文・数学・化学、、、、)
↓
After:文系or理系の2軸
本記事のエンゲージメントサーベイにおいても設問が100問近くあるため
愚直に100軸で組織の分類を行おうとすると、人智を超えた能力が必要になります。
2軸くらいにしてしまえば人間でも判断できるようになります。
なぜ主成分分析が必要?_ただサーベイを現場展開するだけではNGな理由
さて、組織改善を行うときに、なぜ主成分分析というちょっと小難しい手法を行う必要があるのか。
サーベイシステムを導入すれば組織改善って進むのでは?と思うかもしれません。
実際、大半の企業ではなんらかの組織診断のためのエンゲージメント調査を行ってはいますが、改善が上手く進んでいるというケースはあまり見られません。
ここに組織改善の本質があります。
改善がうまく進んでいない理由は様々ですが、これまでの私の支援経験からですと、
下記4パターンで組織改善がストップしてしまうケースが多いです。
現場の組織改善において陥りがちな4つの罠
・システム理解:そもそもシステムの理解ができない
・課題発見:システムを用いた課題の抽出ができない
・施策決定:課題に対する改善施策を立てられない
・施策実行:立てた改善施策を実行できない
人事が中心となり、現場や経営などさまざまな対象と相互連携をとって旗振りを行い、
現場マネージャーがこれらの4つの壁を乗り越えられるように支援する必要があります。
ではどうすれば良いか。
理想としては下記二つのパターンがあるとは思いますが、
正直現実的でない企業がほとんどだと思います。
- 人事が全部門に介入して伴走支援する(HRBP的な役割を担う)
- 現場マネージャーが自組織の生データを見て課題解決のPDCAを回す
リアルな声ではこんな声をいただくことが多いです。
- 「現場では、メイン業務が忙しく、組織改善に割く時間が取れない」
- 「現場が組織改善施策を考えたことがなくて考えられる能力がない」
- 「とはいえコンサルから提示された施策は恣意性があり、本当か?となり実施する気はない」
- 「組織毎ごとの改善アクションがサーベイの結果から自動的に定まり、その実行を管理できる仕組みを設計したい」
またそもそも前提として、マネージャーが組織改善に取り組みたいと感じないような心理的な壁も存在します。こちらは動機付けで乗り越えたり対応はさまざまですが、本記事の範囲外なので割愛します。
そこでこのような問題を解決することができるのが、主成分分析なんですね〜
主成分分析により、サーベイ結果に基づいた組織の分類を行うことができ、
また組織の分類を行った時点で、大枠の組織課題や改善施策が定まります。
ChatGPTを用いた主成分分析の実践(プロンプトあり)
ではいよいよ分析開始です。
ここからは実際に主成分分析を用いたアウトプットやChatGPTのプロンプトも共有します。
主成分分析の概要
要は、たくさんある設問を新たな2つの軸に統合する(次元削減)というものです。
主成分分析を行うChatGPTのプロンプト
プロンプト1
# 命令書
あなたはプロの組織人事コンサルタント兼データサイエンティストです。
下記のエンゲージメントサーベイの結果データを用いて主成分分析を行いたいです。
# 回答データファイル
※回答データファイル(excelなど)を添付
# データの説明
A列には組織が並んでおり、D列以降には設問のスコアが並んでいます。
組織ごとにグループ分けを行い、それらのグループがどのような傾向があるかを見定めたいです。
まずD列以降の設問を良さげな形で2軸に分類してください。
プロンプト1の実行結果に対して下記2を入力する。
プロンプト2
・PC1(主成分1)とPC2(主成分2)はそれぞれどのような要素がどのくらいの割合で含まれているか構成を教えてください。
それぞれ寄与度が大きい順に掲載してください。
・その後、それらの寄与度が大きい項目top10から、その主成分がどのような軸と言えそうか記述してください。
・PC1とPC2の高低で分けた計4つのグループにおいて、上記の軸の説明の記述を参考にして
組織の状態、そして考えられる組織改善施策をそれぞれ記述してください。
なお、施策の内容は現場マネジャーが実行できる内容で考えてください。
プロンプトは以上です。簡単ですね〜
いやーこのくらいのデータ分析であれば、pythonでゴリゴリ実装せずともChatGPT君が実装してくれます。彼は非常に優秀ですね(9.9割の人間より優秀な気がしています)。
分析結果1:成分の要約結果
100軸もの設問を2つの軸に圧縮した結果です。
それぞれどんな軸であるかはChatGPTと壁打ちしましょう。
分析結果2:主成分分析による2軸分類
下記のように数百もの組織が分類されました。
※各点はそれぞれ組織を表す
※④は主成分1,2共に高い。Good
※①は主成分1,2共に低い。ビミョー。
もちろん、①〜④のグループにそれぞれどの組織が所属するかどうかも
分析結果として出力してくれます。
プロンプト3
・PC1とPC2の高低で分けた計4つのグループにおいて、所属する組織をそれぞれまとめて
excelファイルとしてダウンロードできるようにしてください。
ファイル名は"result.xlsx"でおねがいします
おわりに
HR × Data Analytics × ChatGPTという切り口で、活用ケースを紹介しましたが
いかがだったでしょうか。
ChatGPTやデータ分析というと、問い合わせ対応やマーケティングなどでの活用ケースがどうしても多いですが、HR領域でも徐々に活用されてきています。
組織やヒトという一見データ化しにくそうな対象こそ、勘や経験に頼るケースが多く、
ビジネスチャンスが転がっているように感じます。
今回はHR領域のデータ分析のほんの一部をシェアしましたが、今後もさまざまな事例を共有できればと考えています。
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最後に、私が所属する株式会社HRBrainではデータ分析や組織改善に興味がある方はもちろん、
データサイエンティストなどデータ分析に強みがある方を大募集しています!
HRという難しくチャレンジングな世界を一緒にデータで切り拓きましょう!