動機
この記事を書こうとしたきっかけとして、anacondaで
conda install conda-forge::root
とインストールしたROOTを動かした際に、clangとcilingでエラーが起きたため、その回避方法を探してもどこにもなかったからです。私の目的として、検出機解析用にROOTと天体解析ようにHEASOFTをダウンロードする必要があり、その際にAnaconda環境が必要でした。(このような特殊な状況でもない限り、避けた方がいいです)
環境
以下の環境をpyenvで一括管理しています。(やり方は追記に書きました)
アプリケーション | versions |
---|---|
Python | 3.13.0 |
ROOT | 6.32.08 |
Anaconda | Anaconda3-2024.10-1 |
ROOTはhomebrewでインストールしました。Pythonはanaconda環境のもので、ROOTに対応させるため、3.13.0を選択しました。
※Clangをanacondaに入れますが、Clang++を入れてはいけません。
AnacondaでROOTを利用する方法
1. homebrewでROOTを用意します
brew install ROOT
以下でPATHを繋げます
export ROOTSYS=$(root-config --prefix)
source $(root-config --prefix)/bin/thisroot.sh
1. 以下の設定で環境を設置
conda create -n <env name> python=3.13 clang llvm -c conda-forge
conda activate <env name>
2. condaの環境で用いているclangをデフォルトにする
以下をシェルに書くことで設定する
export CC=/path/.../pyenv/versions/anaconda3-2024.10-1/envs/heasoft/bin/clang
3. import ROOTしてみる
以下のようにactivateした後の環境でROOTのパスを再び繋げ直す
export ROOTSYS=$(root-config --prefix)
source $(root-config --prefix)/bin/thisroot.sh
その後、pythonを開いてimport ROOTをするとうまくいきます
原因
なぜconda-forgeでインストールしてもうまくいかないのでしょうか。一言で言うと、conda-forgeでは入るROOTはx86-64用のものしか提供されていないため、この方法でダウンロードしてもうまくいきません。しかし、実際にダウンロードした方はわかると思いますが、ROOT単体では実行できます。これはなぜでしょう?
conda-forgeは内部でx86-64アーキテクチャで統一されており、そのパッケージはx86-64プラットフォーム専用にビルドされているため、ARMやM1/M2チップなど他のアーキテクチャでは正常に動作しない場合があります。このため、異なるアーキテクチャ向けにはパッケージの互換性がなく、conda-forge経由でインストールしてもうまくいかないことがあります。
ROOT単体とPyROOTの違い
ROOTはC++で作成された高性能のデータ解析ライブラリで、グラフィカルインターフェースやコマンドラインで動作します。これに対して、PyROOTはPythonからROOTのC++コードにアクセスできるインターフェースを提供するライブラリですが、PyROOTがうまく動作しない場合もあります。
1. ROOT単体は動作するがPyROOTが動作しない理由
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依存関係の違い: ROOT単体はC++ベースで動作しており、コンパイル時にアーキテクチャに合わせたバイナリが生成されます。これに対して、PyROOTはROOTのC++ライブラリをPythonから操作するため、Pythonの依存関係やPythonバージョンによって動作に不整合が生じることがあります。特に、PythonとC++のライブラリのリンクの問題や、必要なパッケージが不足している場合にエラーが発生します。
-
アーキテクチャの不一致:
conda-forge
でインストールしたPyROOTは、x86-64アーキテクチャ専用のバージョンが提供されており、ARMやM1チップなど、異なるアーキテクチャではPyROOTが正しく動作しないことがあります。これは、PyROOTが依存しているC++ライブラリがアーキテクチャに依存しているためです。
2. ROOT単体が動作する理由
ROOT単体はC++のネイティブコードで動作しており、依存関係も直接的にC++ライブラリにリンクされます。このため、必要なライブラリや依存関係が正しく満たされている限り、ROOT自体はその環境で問題なく動作します。特に、x86-64アーキテクチャ用にビルドされたROOTのバイナリは、コンパイルされたアーキテクチャに最適化されているため、問題なく動作することが多いです。
3. まとめ
conda-forgeでROOTやPyROOTをインストールする際の問題は、主に提供されるパッケージがx86-64アーキテクチャ向けに特化しているため、異なるアーキテクチャに対するサポートが不足していることが原因です。また、PyROOTが動作しない理由は、Pythonのバージョンや依存関係の不整合、アーキテクチャの違いによる問題が考えられます。
追記
Anacondaを入れたPythonの環境作成
とりあえず、pyenvをhomebrewでインストールします
brew install pyenv
次にpyenvでAnacondaをインストールします。
pyenv install anaconda3-2024.10-1
globalに設定した後、condaをデフォルトにするようにシェルに書きます。
pyenv global anaconda3-2024.10-1
pyenv init [shellの名前(zshとかbashとか)]
シェルを再起動し、上記の方法で進めてください