Advent Calendar 初回投稿では、XBRLの概要についてお話します。
1. XBRLとは
XBRL
(Extensible Business Reporting Language)は、エンロン事件などの会計スキャンダルを背景に、財務情報
を標準的な方法で記述することで財務情報の交換・再利用を可能にするものとして、アメリカ公認会計士協会を中心とする世界的なコンソーシアム(XBRL International)の活動によって開発されたXML
をベースにしたコンピュータ言語です。
近年では、企業の財務情報の電子的開示に対応するだけでなく、世の中の動向を踏まえ、非財務情報(環境情報、ガバナンス情報など)
にもその幅を広げています。これに伴い、より広範なレポーティングのための国際標準仕様として、G20を含む世界60ヵ国あまりに普及されています。
財務情報は年度ごと、あるいは組織や業種ごとに、文書構造や項目、計算式などが異なるといった特徴があります。このため、従来の作成方式では作成コストがかかるだけでなく、共通化や二次利用が困難でした。しかし、XBRLを用いることにより、ソフトウェアやプラットフォームの壁を越えて、電子的な事業報告の作成や流通・再利用を容易に行うことが可能になります。
その結果として、企業、会計専門家、監督機関、アナリスト、投資家、資本市場参加者、ソフトウェアベンダー、情報ベンダーなど、財務情報のサプライチェーンに関係するすべての当事者に、財務情報を取り扱うためのコストを削減
させ、より正確でスピーディーな情報処理が可能となります。
特に、インターネット上に公開されている財務情報については、データの精度が向上する
だけでなく、他のシステムでの再利用が容易になる
ことにより、その価値が飛躍的に高まるという効用もあります。 また、2000年代頃から収集してきたXBRLデータは活用可能な程度に蓄積がされてきており、機械学習を筆頭にしたデータ活用の流れの中で、Machine-readable
かつMachine-understandable
なデータ形式であるXBRLデータの活用・検討が更に活発化しております。(金融庁:金融庁政策オープンラボ「有価証券報告書等の審査業務等におけるAI等利用の検討」など)
有価証券報告書等の審査業務等におけるAI等利用の検討より
XBRLデータを使ったアプローチにより、経営方針等の記載について、前年度との類似率を計算することで、固定化した記載を抽出した結果もみられた
2. XBRLの基本構造(XBRL = タクソノミ+インスタンス)
XBRLの基本規約は、国際組織であるXBRL International
から、2013年2月20日付けの**XBRL2.1 Specification(*1)** (以降、XBRL2.1と略す)が公開されています。XBRL2.1には、XMLSchema
、XLink
などのW3Cで標準化されているXML関連技術が積極的に取り入れられています。XBRLの基本構造は、タクソノミ
とインスタンス
により構成されています。以下で、それぞれの文書についても簡単に説明したいと思います。
*1:日本での普及を推進するために、XBRL 2.1はJIS規格(JISX7206)に登録しています。これにより、日本産業標準調査会(JISC)から日本語に翻訳したものが閲覧可能です。
2.1 タクソノミについて
タクソノミは、ビジネスレポートのフォーマットを定義する雛形
のことです。日本語では「分類学」などと訳されますが、その使い方から、情報を分類する辞書
とも言われています。タクソノミでは、フォーマット中の報告項目に関する情報のほか、フォーマットにおける項目の並び順、項目間の関係等を定義することができます。タクソノミは、更にタクソノミスキーマ
とリンクベース
から構成されていますが、詳細な説明は別の記事で行うことにします。
2.2 インスタンスについて
インスタンスは、タクソノミで定義した雛形に入れる情報
のことです。数値や金額などの報告内容のほか、文章、真偽値などの幅広い形式の情報を表現することが可能
です。また、数値や金額等を取り扱う場合には、単位を表現
します。また、当期や前期といった報告内容の期間を表現
することができます。このように、インスタンスに項目の値が定義されているため、インスタンスのみでも簡易な分析は可能ですが、タクソノミを参照することで、経年比較などより高度な分析が可能となります。
2.3 ビジネスレポートとタクソノミ・インスタンスの関係性イメージ
2018年度のビジネスレポートがあった場合に、タクソノミでは、そのレポートに対応するタクソノミのバージョン(2018年度)、報告項目に関する情報(Salesという項目が数値情報で定義されており、期間はいつ時点の情報かを定義する)などをタグを用いてXML形式で定義します。インスタンスでは、タクソノミで定義された報告項目、例えばSalesに関する金額(2,000)、期間(2018年時点)、単位情報(JPY)などを個別に定義します。これにより、タクソノミとインスタンスを紐づけて解析することで、ビジネスレポートを再現
することができます。
2.4 タクソノミと複数のインスタンスの関係性イメージ
同年度に個別のインスタンスが複数あったとしても、固定されたフォーマットであれば、タクソノミを共通的に利用し、一対多
の関係で、処理を行うことができます。この考え方を応用すれば、収集する側の組織は、タクソノミを開示し、企業等は当該タクソノミを用いてインスタンスを作成することで、一元的に情報を扱うことが可能
となります。
3. XBRLの概要動画
概要を理解する際には、以下、日本公認会計士協会の作成したXBRL紹介動画をご覧いただくのが効率的です。
●ちょっと教えてXBRL:
XBRLってなに、XBRLの特徴、XBRLの仕組みの3部構成となっており、約10分程度の動画です。XBRLについての導入編として閲覧をオススメします。※本動画は、Flashの動画再生となります。
4. 問合せ先
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e-mail:xbrl-tech-qa@xbrl.or.jp
(もちろん、qiita上でのコメントも歓迎します)
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