これまでの記事で、XBRLの利活用に関してまで簡単にですが紹介してきました。Advent Calendar 9回目の投稿では、XBRLの構成要素であるタクソノミ文書を少しだけ深堀してご紹介します。
1. XBRLの構造について
おさらいですが、タクソノミはビジネスレポートのフォーマットを定義する雛形、インスタンスはタクソノミで定義した雛形に入れる情報と説明しました。
財務諸表でざっくり例にすると以下の通りとなります。
タクソノミ文書には、例えばどういう科目が定義されているか、各科目のラベル、表示上の順序関係やデータモデルとしての関係、計算上での関係、出典などを定義することができます。
インスタンス文書には、例えば各科目の値や、その値がいつ時点または期日のものか、報告企業情報、科目が数値である場合には単位などを記載します。
2. タクソノミ文書について
タクソノミ文書は、タクソノミスキーマ(XML Schema)とリンクベース(Linkbase)を使って、インスタンス文書の内容・構造・扱われ方などを定義しています。XBRL2.1仕様では、以下のように定義されています。
- XML Schema : 項目を定義
- 表示リンク (Presentation Linkbase) : 項目間の表示順を定義
- 定義リンク (Definition Linkbase) : 項目間のデータモデル上の関係を定義
- 計算リンク (Calculation Linkbase) : 項目間の計算上の関係を定義
- ラベルリンク (Label Linkbase) : 項目の表示名称を定義
- 参照リンク (Reference Linkbase) : 項目の根拠(会社法などの条文)を定義
EDINETでの定義例を見てみましょう。以下に例を示していきますが、2019年度版のEDINETタクソノミに含まれる以下のサンプルファイルを標準的なXBRLツールで開いた時の例になります。
[ダウンロードしたタクソノミフォルダ]/タクソノミ/samples/2019-02-28/entryPoint_jppfs_cai_2019-02-28.xsd
ダウンロード先: https://www.fsa.go.jp/search/20190228.html
表示リンク (Presentation Linkbase)
このように、各項目間の表示上の親子関係や表示順が定義されています。図の右側の数字は同一階層上における順序関係になっており、例えば流動資産の子は現金及び預金、受取手形及び売掛金、といった順番で表示されます。
定義リンク (Definition Linkbase)
定義リンクでは項目間のデータモデル上の関係を定義します。ここで表示リンクの図と見比べて何が違うのか、と疑問が浮かぶかもしれませんが、表示上の関係とデータモデル上の関係は必ずしも一致するとは限らないため、別々に定義できるように分かれています。
また、Dimensionと呼ばれる仕様により軸の定義を行うことができるようになっています。EDINETの場合、軸として連結/個別が定義されています。
計算リンク (Calculation Linkbase)
計算リンクは名前の通り、項目間の関係を定義したものになります。
図中の右側の数字は順番と計算時の重みを意味しています。例えば負債を例にすると、
負債=流動負債+固定負債+特定法上の準備金+特定法上の引当金
という関係になっています。もし重みに1以外の数が指定されている場合には、その項目の値に掛け算をすることになります。ただし、実運用で重み1以外が指定されているケースは見たことがありません。
ラベルリンク (Label Linkbase)
jppfs_cor:NetSales要素に指定されたラベルの例を以下に示します。
この例では3種類の日英のラベルが定義されていますが、他にも期首期末や負の値(△がついているようなラベル)など、用途に合わせたラベルを指定することが可能です。
また、米国の例だと、科目の説明書きを記載しているケースなどもあります。
参照リンク (Reference Linkbase)
参照リンクにはその科目の出典などが記載されます。jppfs_cor:NetSales要素に定義された参照リンクの例を以下に示します。
Inline XBRL仕様
Inline XBRL仕様はHTMLの中にXBRLインスタンスを埋め込むための仕様です。EDINETでも2013年ごろに採用されています。有価証券報告書をEDINETからダウンロードすると下記のようにHTMLファイルが含まれていますが、これがInline XBRLファイルになっています。以下がその例です。
人が読む用のデータとコンピュータが読むデータが一体になることで、双方不一致によるデータ品質の低下を抑えています。
上記例のix:
から始まるタグがInline XBRL仕様により定義されているタグになります。
Dimension仕様
2次元の表など、複数の軸(Multi-Dimension)を持つデータを表記するために、タクソノミやインスタンスの定義方法を規定した仕様です。例えば地域を軸として各国の売り上げを報告したり、連結個別を定義するような利用イメージだと想像しやすいでしょうか。
上の定義リンクの説明でもちょっとだけ触れておりますが、EDINETだと連結個別や、他にも株主資本等変動計算書では純資産の内訳項目などが定義されています。
定義だけではちょっとわかりにくいのですが、上記の定義を表にすると以下のような感じになります。
3. XBRLを知る方法について
XBRLJapanが発行しているXBRL FACTBOOK2016は、XBRLに関することが事細かに載っています。ただ、概要を理解する程度であれば、以下日本公認会計士協会の作成した紹介動画を、ご覧いただくのが効率的だと思います。
●もっと教えてXBRL:
ちょっと教えてXBRLの応用編の位置付けとなる動画です。XBRLをかっこ良く説明したい、タクソノミのひみつ、XBRLの進化の3部構成となっています。ちょっと教えてXBRLと同じく約10分程度の動画です。リンクベースやインラインXBRLなども紹介されており、より詳しくXBRLを知りたい方向けのコンテンツになっています。
●知らなかった!こんなに便利なXBRL GL:
税理士事務所を悩ませる「互換性問題」、平成35年経理事務クライシスとは?、秘密兵器XBRLGL!、顧客満足と業務効率アップの両立への4部構成となっており、約11分の動画です。企業内部の会計情報を扱う XBRL タクソノミであるXBRL GLに関する紹介がされています。
4. 問合せ先
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