概要
本投稿は、ネットワークエンジニア初心者の方に、
業務で把握しておくべき事項を知って頂くことを目的としています。
(NWのみならず、インフラエンジニア・SI業務全般に共通している話も多いと思います)
守秘義務に関わる事ですので、ベンダーが特定されない粒度での記述を前提としています。
筆者が6つのベンダーと約10の事業所を経験した中で、共通していると感じた事項を記述します。
企業により、本投稿の記述と事情が異なる可能性がありますので、ご了承ください。
把握しておくべき資料
下記に挙げたものは業務でよく参照する情報ですので、
保存場所を把握し、ショートカットリンク集を作成しておくことをオススメします。
- 設計書
- パラメータシート
- IPアドレス管理
- 構成図
- コンフィグ
- 機器一覧
- 運用マニュアル
- 製品マニュアル
- 手順書
- ファームウェア置き場
- 作業ログ
- 課題管理
- 定例会議資料・議事録
プロジェクトに直接関係ないものですが、
下記に挙げるものも確認しておくと役に立つことがあります。
- ソフトウェア置き場
- サポート問合せ(連絡先・問い合わせ方法など)
- 部署・メンバー一覧
- 座席表
その他にも、業務によっては下記のように色々な資料を把握しておく必要があります。
- WBS
- 要件定義書
- 移行計画書
各資料の説明
設計書
主に下記2種類があります。
- 基本設計書:システム全体および部分の構成のコンセプトを示す
- 詳細設計書:システムの各部分について具体的な取り決めを示す
ファイルの種類は、Excel, Word, PowerPointの順で採用されることが多いです。
パラメータシート
システムを構成する部品それぞれに設定すべき項目の、設定値が記述されています。
ファイルの種類は、Excelが採用されることが多いです。
IPアドレス管理
IPアドレスは同一環境中で重複してはならないため、用途別・設置場所別で区分します。
さらに、どの機器にどのアドレスを払い出したかをIPアドレス管理表に記録します。
ファイルの種類は、Excelが採用されることが多いです。
構成図
システムを構成するサーバやネットワーク機器がどのように接続されるかを図式化します。
主に下記2種類があります。
- 物理構成図:接続の関係をケーブル単位で示す
- 論理構成図:接続の関係をIPアドレスセグメント単位またはVLAN単位で示す
ファイルの種類は、Visio, PowerPoint, Excelの順で採用されることが多いです。
※VisioはMicrosoft Officeの各パッケージ版には含まれておらず、単体で購入する必要があります。
コンフィグ
設定値を機器にそのまま適用可能な形式で記述されたファイルを指します。
製品マニュアルに掲載の例を参考にしながら手作りすることも、
機器からGUIで設定したのちに出力させて手に入れる事もできます。
初期構築時以外にも、設定変更を誤ったために元に戻したい場合や機器が故障して交換したい場合、検証用の機器で挙動をテストしたい場合に重要です。
ファイルは、文字コードがASCIIのテキストファイルであることが多いです。
機器一覧
プロジェクトに購入した機器の、製品名・ホスト名・シリアル番号・IPアドレス・設置場所などを記載しておきます。
運用マニュアル
システムを安定して運用していくために重要です。
運用業務従事者が日々行う作業の手順やスケジュールなどが記述されています。
ファイルの種類は、作成時はWord, Excelが多く、閲覧時はこのほかPDFが採用されることが多いです。
製品マニュアル
ハードウェアやソフトウェアの仕様、設定方法について記述されています。
プロジェクトで当該製品を初めて使用する場合や初めて使用する機能がある場合には、
まず製品マニュアルを参照して検証します。
ファイルの種類は、PDFであることが多いです。
手順書
ハードウェアの設置などの物理的な作業、ソフトウェアのインストールを含めた設定変更作業時には、作業手順書を作成します。
実施前に予め作成して有識者と認識合わせをし、当日はそれの通りに作業を実施します。
ファイルの種類は、Excel, Wordの順で採用されることが多いです。
ファームウェア置き場
ネットワーク機器においても、脆弱性対策や機能追加・バグ修正のためにソフトウェア更新をすることがあります。
PCの場合は一部機能のソフトウェアのみ選択してインストールしますが、
ネットワーク機器の場合は、ファームウェア(OSファイル)丸ごと置き換えることが多いです。
※サーバの場合、OSやミドルウェアのインストールイメージファイルまたはインストーラパッケージがこれに当たります。
作業ログ
作業時には必ず変更内容を記録します。
システムの動作に異常が発生した際には、修復させたのちにその原因調査を実施しますが、原因調査を行ううえで重要なものです。
CLI画面での操作時には、コマンド入力及びコマンド実行結果をテキストファイルに出力し、保管しておきます。
このテキストファイルの事をログファイルと呼びます。
ファイルは、文字コードがASCIIのテキストファイルであることが多いです。
課題管理
下記のような事が発生した場合に、課題としての内容を記述しておきます。
課題ごとに期限を設定しておき、解決策を検討するとともに定期的に状況の確認を行います。
- プロジェクトの進捗が芳しくない
- 製品仕様に不明な点があり設計が完了しない
- 懸念される事項がある
- システムの挙動に想定外の事象が発生した
ファイルの種類は、Excelが採用されることが多いです。
定例会議資料・議事録
プロジェクトの関係者が一堂に会して会議を実施することがよくあります。
設計や計画について承認をもらったり、その後の進捗や課題について共有するために実施されます。
週1など定期的に実施されるものは定例会議と呼ばれます。
会議実施時には、発表者および担当者が資料を作成し、提示します。
資料は、この記事で説明した各種資料自体である場合もありますし、
特にプロジェクタで投影する場合には、説明用のPowerPointを作成する場合が多いです。
さらに会議中および会議後は、会議の議題や決定事項、ToDo事項(今後やるべきこと)を記録しておきます。この記録を議事録と呼びます。
議事録のファイルの種類は、Excelが採用されることが多いです。
経験の浅いメンバーまたはPMO(プロジェクトマネジメントオフィス)が
資料の印刷や関係者への共有、議事録の作成を任されます。
(会議の主催者および各議題の担当者がこれらを自ら行う場合もあります)
ソフトウェア置き場
プロジェクトで使用されることが認められたPCソフトウェアについて、各メンバーが入手しやすいよう、インストーラパッケージや実行ファイル一式を一箇所に格納しておきます。
サポート問合せ(連絡先・問い合わせ方法など)
ハードウェア・ソフトウェアについて下記のような場合に、当該製品に対して保守サービスを契約していれば、サポート部門に問い合わせが可能です。
いざという場合に直ぐ問い合わせができるよう、サポート部門への連絡先や連絡方法をまとめておく必要があります。
- 仕様について詳しく知りたい
- 設定方法に不明点がある
- 動作に不具合がある
- 故障したため交換したい
部署・メンバー一覧
現場に配属されたら、上司から他のメンバーを紹介されたり上長など重要な関係者の所へ挨拶に行ったりすることと思います。
しかし、面識のない人との関わりも多々発生します。
また、例えば運用業務に従事していた場合、普段は運用チーム内やエスカレーション先の人とのみやり取りすることになりますが、
システムの仕様などを照会したい際には、設計構築の担当者などにも連絡を取ることになります。
このように、業務が担当範囲外の業務と影響し合う場合には、他部署の人とのやり取りが発生することになります。
また、毎日100件以上受信するメールの中に、突如自分の見知らぬ人からの依頼が混じっていることもあります。
そのような場合に備えて、自分の部署のメンバーの一覧や他の部署のメンバーの一覧を確認できるようにしておくと、
この件について誰とやり取りするべきなのか、またはやり取りしている相手の立場を把握しやすくなります。
部署によってExcelやPowerPointでメンバー紹介を作成していることもありますし、
大企業では、Active Directoryや、Outlookなどグループウェアの連絡先で検索できることが多いです。
座席表
担当者に話をしたい場合に、その人がオフィスのどの位置にいるのかを知りたい場合に、座席表があると便利です。
ファイルの種類は、Excelが採用されることが多いです。
フリーアドレスを採用している職場もあります。その場合の座席表は座席レイアウトのみとなり、個人名の記載はありません。フリーアドレスとは、座席が決まっておらず、各従業員が出勤したら空いている席に座るオフィス設計のことを言います。
WBS
日本IBM旧本社跡地(六本木一丁目)に移転したテレビ局の報道番組の事ではありません。
米国防総省が発案したプロジェクトの管理手法 "Work Breakdown Structure" の事です。
プロジェクトを完了させるまでの各段階ごとに必要な業務を洗い出し、進捗がある度に更新します。
各業務の役割分担を明確にしたり、進捗に問題が無いかを日々確認したりするために重要とされます。
チームリーダーがMicrosoft Projectを使用して進捗管理している場合もありますが、
Excelに作業項目と進捗率、期限などを記入し、マクロ機能でガントチャートを描画することとしている例が多いです。
※Microsoft ProjectはMicrosoft Officeの各パッケージ版には含まれておらず、単体で購入する必要があります。
定例会議で提示されることが多いものの、新人がこれを編集する事は少ないかも知れません。
要件定義書
システム設計をするうえでの主な材料となる資料です。現行業務を改善するためにシステムに必要な機能や性能について記述されます。
基本設計業界初心者の方が業務で使うことは少ないかも知れません。
ファイルの種類は、作成時はWordが多く、閲覧時はこのほかPDFが採用されることが多いです。
移行計画書
システムを現行システムを次期システムへ置き換える際には移行設計および移行計画が必要です。
移行設計書に移行する際の手法や段階ごとの構成図、移行計画書に移行開始から移行完了するまでの計画を記述します。
ファイルの種類は、Word, PowerPointが採用されることが多いです。