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ウィキペディアタウンの歩き方(2)

Last updated at Posted at 2018-12-22

ウィキペディアタウンに参加する

参加にあたって

ウィキペディアタウンに参加/開催してみたいが、どのようにしたらよいかと相談されることがあります。そんなときは「とりあえずどこかのウィキペディアタウンに参加してみてください」とご案内しています。
「参考までに見学します」「編集の様子は見るだけで」という方も多いのですが、ウィキペディアタウンというイベントは、ぜひ通常の参加者と同じ条件で参加してみてほしいです。

どのウィキペディアタウンに行くか

これは日程と場所の問題もあるので、とりあえず負担のない範囲で行けるところに行ってみるのがよいのではないかと思います。
前回のエントリ でも触れましたが、現状では下記のページがオープン参加できる開催情報を集約しているところになります。

プロジェクト:アウトリーチ/ウィキペディアタウン/開催情報

このほかにも学校内で行うワークショップやクローズドな勉強会・研修会などは各地で実施されているようです。

開催を考えている場合は、できれば主催者属性が違うもの(図書館主催、シビックテック1主催など)に2回ほど参加すると、違いがわかって良いと思います。なお、運営に関係する複数人での参加をおすすめします。体験を共有できると同時に、それぞれの感じ方や見方の違いを確認しながら、自分たちの地域にあったウィキペディアタウン像が浮かび上がってくると思うからです。
開催の数だけ多様なイベントになっていくのがウィキペディアタウンなので、「いいとこどり」を目指したいところです。
もちろん、単独参加でも楽しめます。

参加を申込む

参加申込をします。
一般的なのは、主催側の公式ホームページなどで告知される方法です。

  • 営業時間内に電話
  • 指定のメールアドレスにメール送信
  • ウェブサイトの申込フォームを利用
  • Facebookページやイベント用ウェブサイトに参加登録

などの方法があります。
図書館や自治体が主催する場合は電話や時に窓口で受付していることもあります。この場合「地元」の人の参加を呼び込むには有効です。ただ、居住地や年齢、属性をきかれることも多く、ハードルが高いと感じる方もいるかもしれません。
シビックテックなど市民サイドが企画している場合はインターネット上でFacebookページやイベント用アプリを利用することが多いです。アカウントでの登録なので実名や属性を明かすことなく気軽に参加できる一方、主催者側にとってはどんな人が集まるのか、分かりにくい面はあります。
色々な方法での申し込みを体験してみると、どういう告知だと分かりやすいか、どんな申し込み方法だと参加側・運営側の双方にストレスなさそうか、などが分かってきます。自分が知らなかった新しいツールについて知ることもあります。

アカウントを作る

ウィキペディアのアカウントについては、事前に作っておくことが望ましいです。
現地で作成する場合、IPによるアクセス制限等があり、全員分作成できない場合もあるためです。
実際のウィキペディア編集を行わない場合でも、写真をWikimedia Commonsにアップロードする際に必要となりますので、アカウントの作成は必須です。
事前にどうしても作成できない場合(一部のスマートフォンなどではそうした現象があるようです)は、講師にききながら当日に登録することになるかと思いますが、一度はトライしてみてください。
ウィキペディアのアカウント作成については下記の資料が分かりやすくて参考になります。

「ウィキペディア日本語版アカウント作成ガイドと利用者ページの説明」by 海獺
(SlideShare)
 https://www.slideshare.net/RaccoJawp1/jawp-account

なお、ウィキペディアの「利用者ページ」については、イベント当日の講義で触れられることはほとんどありませんが、実は継続的にウィキペディアを編集する場合にはよく利用する部分ですし、知っておくと編集作業に役立ちます。

以前登録したことのある方で久しぶりにログインする方も、アカウントとパスワードをイベント当日までに確認しておきましょう。

当日の準備

私が参加する場合の持ち物です。

  • モバイルPC
  • 延長コード
  • カメラ機能つきスマートフォン(デジタルカメラ) ★
  • 充電バッテリー
  • スマートフォン(デジタルカメラ)のケーブル ★
  • バインダー
  • 筆記用具 ★
  • 大きめの付箋
  • (お昼ご飯)

★印が必須と思うものです。
一般的なウィキペディアタウンは一日がかりのイベントなので、お昼休憩をはさむことが多いです。時々はお弁当の注文をしてくれる開催地もあって、そうした場合はお願いすることにしています。
市街地で開催する場合は、近隣ランチマップが配付されることも。
どうしても当日は時間が押してしまう場合が多く、周辺に外食できる場所やコンビニがないこともあるので、できれば用意していくほうが安心です。
開催地の状況によって臨機応変に。

モバイルPCに関しては、自分の愛機を持参するのがベストです。
最近は図書館等の公共施設でもWi-Fi環境が整ってきて、PCを貸し出してくれる場合も増えました。
PCを持参せず参加しても一通り体験はできますが、普段使っていない他人のPCはとても使いにくい!
もし可能なら持参されることをおすすめします。
(ちなみに、私は当初は文字通り「身一つ」で参加していましたが、2回目を体験したのちに「これは必要」と思って3万円台の安価なモバイルPCを購入しました。)

ウィキペディアタウンで最も成果を感じられるのが、該当項目への写真の掲載です。
また、「使ってよい」写真がたくさんアップロードされると、世界中の人に他の用途でも活用してもらえます。カメラもしくはカメラ機能のある携帯電話やスマートフォンは、できるだけ用意しましょう。画像をアップロードする際にPCと接続するケーブルもお忘れなく。

まちあるきでガイドさんの言うことのポイントや、写真撮影した場所やものについてメモするために筆記用具も必要です。
付箋は文献調査の際に文章をまとめたり、出典となる参考文献の書誌情報を記載するのに使っています。文章を組み立てるのにはノートより付箋の方が組み合わせができて便利です。主催側で用意してくれている場合も多いです。

当日の流れ

イベント当日の一般的な流れです。

  1. 主催のあいさつ・趣旨説明
  2. ウィキペディアタウン、ウィキペディアについての講義
  3. 編集対象について(この時、編集対象についての説明が入る場合もある)
  4. まち歩き
  5. 昼食・休憩
  6. ウィキペディア編集についての講義
  7. 文献調査・ウィキペディアの編集
  8. 成果発表

まち歩き部分のボリュームによって、講義の時間、ウィキペディアの編集時間が多少変わってきます。コアメンバーにより何度も開催を重ねているプロジェクト(「ウィキペディア街道」2等)ですと、講義部分は短くなり、文献調査や編集時間が長くなる印象があります。

1.ガイダンス・講義

初めての場合は難しいと感じることが多いと思いますが、オープンデータや著作権の考え方、ウィキペディアをとりまく「世界観」と、訪れている/よく親しんでいる「地域」への理解ができれば、その後のまち歩きや文献調査、編集作業がより楽しく意義あるものになります。

「ウィキペディア編集の基礎の説明」by Miya.m
(2017年3月5日Wikipedia Town Summit発表資料/SlideShare)
 https://www.slideshare.net/muhmiya/ss-72819305

上の資料は、これまでに受けた説明の中でも特に分かりやすいと感じた内容です。
作者のMiya.m氏の作成した「Wikipediaの書き方」という記法についてのシートは、初心者の方に説明しながら書いてもらうのに重宝するので、ウィキペディアタウンに参加する際はいつも持ち歩いています。

2.まち歩きをする

このエントリのタイトルを「歩き方」としたように、私自身はウィキペディアタウンでの「まち歩き」を最も重要な部分と考えています。
とにかく事故にならないように、楽しむこと。はぐれないこと。
写真撮影や調査に夢中になって周りが見えなくなります。
神社仏閣では視界が狭くなる場所もあります。
慣れない町に行く場合は特に、車や人の往来に気を付けましょう。
学芸員や住職など、見学する場所に詳しい人に説明を受けることもあります。耳からの情報も貴重です。ただし、ウィキペディアに書く場合は文献等の出典が必要になります。
ウィキペディアで編集する対象が決まっていれば、その対象について特にじっくり見たり写真を撮ったりするようにします。
まち歩きの後で編集する対象を決める場合は、まち歩きの中で印象に残ったこと、不思議に思ったことなどを覚えておくといいと思います。

イベント中の写真撮影について

一般常識的なことではありますが、イベントの様子や講義スライド、参加者の顔など、それぞれ「なんでも気軽に写真に撮っていい」わけではありません。ひとこと確認するのがマナーだと思います。見学場所での写真撮影についても、撮影可能となる範囲の確認が必要です。
ウィキペディア利用者は、実生活と切り離してアカウント名での活動をしていることがほとんどです。私も実際にお会いした方には本名で接していますが、意識的に写真への映り込みは避けていますし、オンライン上で実名で言及することは止めてほしいとお願いしています。

3.ウィキペディアの編集をする

1)役割分担を決める

編集対象となる項目ごとにグループ分けされ、そのグループの中で、全体のまとめ役を決めると作業がスムーズになります。
まとめ役は主催側や経験者が担うことが多いです。まち歩きの中でみてきたことを整理して振り分け、時間配分を気にしたり、最終的に全体のバランスを決めていきます。
グループ分けも役割分担も主催者側の運営方法によって色々なやり方がありますが、あくまでやりやすくするための道筋と考えてよく、参加者も構成や進め方について提案ができます。
議論しながら大まかなアウトラインを決め、それぞれ割り振られた部分について知識を深めて信頼できる典拠をつけ、まとめていくことを目指します。

2)文献調査を行う

事前に図書館スタッフによる関連資料の準備がされている場合と、自分で最初から探しに行く場合とがあります。
実際にまち歩きをしてみて欲しくなる情報もありますので、その場に資料探索に対応してくれる司書がいると、求めている情報にスムーズにたどり着くことができます。
図書館が編集会場となっている場合、余裕があれば、館内を歩いて資料を探してみるのもおすすめです。新聞等データベースも、利用可能であれば使ってみたいところです。
私は残り時間が少なくなり始めると、持ち帰っても編集作業ができるように使っている文献や参照した文献の複写(コピー)を行います。図書館によって手続きが異なりますので、時間に余裕を見ておくとよいと思います。時間切れになりそうなときは、資料の奥付(一番後ろにある、発行年や出版者等の情報があるところ)を記録しています。
自分で一から同じ資料を探すことに本当に苦労した経験があるので、その場に集められている資料群は本当に貴重だと感じます。

3)文章を考える

文献調査で得た情報は「どの資料の何ページか」も必ず併記するようにします。
後で出典をつけて文章を書くためです。どの内容がどの資料に紐づいているか、その結びつきは確かなものにしておきます。
また、調べたことをまとめる際に特に気を付けたいのが「コピペ」の問題です。
ウィキペディアに書かれた情報は、二次利用ができます。

ウィキペディアに書いてあることはコピーしていいので、それが何かのコピペだと、とっても困ります。

これは、あるウィキペディアタウンで講師をされた是住久美子氏の発言ですが、「なぜコピペがだめか」の説明として大変分かりやすいと感じました。

「コピペ」を避けるためには、書いてあることを「とりあえず書き写す」ということをしない。
うっかりそのままウィキペディアに入力してしまわないとも限りません。
「資料の内容がすでにまとまっているので、これを写さないで考えることが難しい」ということもよく言われますが、言葉尻や順序を入れ替えるだけでは、見る人が見たら、すぐにわかってしまいます。
「コピペ」かどうか、その分かれ目は「自分の言葉」であるかどうかということだと思います。
自分が話すときにこういう用語遣いをするかどうか。組み立て方はどうか。
少し時間がかかっても、たとえ一行でも、「自分の言葉」で書いていきたいところです。
「事実」を「自分の言葉で」書く、という行為は思った以上に大変だと感じると思います。ですが、その経験こそがウィキペディアタウンの醍醐味の一つでもあるのです。

4)ウィキペディアに書く

ウィキペディアに書くための記述は思ったより簡単です。
基本的には、書く文章の内容ができていれば、それにウィキペディアの決まりに従った記号を付け加えたりするだけです。
その中で「出典をつける」作業は少し面倒に感じるかもしれません。しかし、出典となる参考文献の情報が間違っていたら、読んだ人が後で検証することができなくなります。
地域資料・郷土資料と呼ばれる「その土地に関する資料」(都道府県史、市町村史等)は、似たようなタイトルも多いですし、資料本体の表紙・背表紙・中表紙・奥付の情報表記が統一されていない場合もあります。「○○編」「上巻」「中巻」「下巻」などなど、一部分でも情報を落とすと全く違う資料になってしまう可能性があります。また、地域資料はその土地の図書館にしかない場合も多く、近隣でない場合は「また今度見る」ことは、なかなか困難です。
私自身は基本的には奥付の情報をとるようにしていますが、最終的にはNDLサーチ(国立国会図書館サーチ3)の書誌データを参照して、その内容で書くようにしています。NDLサーチでデータがない場合は、その資料を所蔵している図書館のデータの内容を参照します。

4.体験したことを振り返る

イベントでのウィキペディアの編集は制限時間が設けられています。
タイムリミットが来たら、各グループで成果発表や感想を述べあうことが一般的です。
グループで代表者が言うことが多いですが、できれば参加者全員が「時間内に」その日一日を振り返ることができたらいいなと思っています。(その時間を設けているウィキペディアタウンもあります)
ウィキペディアタウンで体験したことは、短時間で盛りだくさんです。

  • 講義で知った新しい世界のこと。
  • 実際に自分の足で歩き、見学し、見て・聞いたこと。
  • 見て・聞いたことが、資料として残されているか、探し出すこと。
  • 自分の中に一度取り入れて、また組み立て直すこと。
  • 考えたことを文章にすること。
  • 人に役に立つ内容として、全世界に発信すること。

それらのほとんどを、共同作業で行うのです。
「訳が分からないまま終わった」という感想になることが多いですが、それでも、なんとかその時思ったことや感じたことを、共同作業を行った人同士でシェアするとよいなと思っています。

まとめ

ウィキペディアタウンへの参加について、準備や当日の流れにそってご紹介してみました。
実際には、ウィキペディアタウンはその開催ごとに違った場所で行われますし、多様な属性の人々が集まります。そのため、毎回違ったものになります。
初めて参加した場所で「こういうものだ」と思い込んでしまうと、思っていたものと違うと感じるかもしれません。
日によっては楽しいだけじゃなくて残念な思いをしたり、反省したり、ということもあります。それでも、毎回得るものがあります。ウィキペディアタウンにベストモデルというものはなく、そのまちごとに違っていいものだと思っています。

ウィキペディアタウンに参加するたびに、特殊なプロジェクト/プログラムだと感じます。
同じものを見たはずなのにそれぞれに見ているところが違ったり、違う年代でも同じ感じ方をしたということが、百科事典として人に読まれるために書く、という作業によって体感できるからです。

「知る」ということの体験は得難いものです。
その「知る」体験を通じて得たものを、さらに「みんなの役に立つ信頼できる情報」として再構成し発信する。
ウィキペディアタウンは、そんな体験ができるプロジェクトだと感じています。

※このエントリ内で参照したウェブサイトは2018年12月22日に閲覧確認しています。


  1. 市民がテクノロジーを活用して行政サービスや地域の課題解決を行う取り組み。(参考:「新語時事用語辞典 」) 

  2. Wikipedia:ウィキペディア街道ウィキペディア街道プロジェクト 

  3. 国立国会図書館サーチ 

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