Knuth博士が書いた超現実数についての「Surreal Numbers」の本の第3章証明について書く。
前回のブログで超現実数の$0,-1,1$を定義した。これらが現実数であることは証明できたが、お互いは同じものなのか、それとも違うものなのか、大小関係はどうなっているのだろうか?
$$0=(\phi,\phi),\quad -1=(\phi,\{0\}),\quad 1=(\{0\},\phi)$$
1. 0≦0の証明
$$x\leq y の意味は X_L\ngeq y かつ\ x\ngeq Y_R\qquad(2)$$
上記のルール$(2)$に$0=(\phi,\phi)$を当てはめると、右辺は、
$$\phi\ngeq0 かつ 0\ngeq\phi$$
空集合には要素がないので、どんな空集合の要素も$0$より大きく、あるいは等しくなることはない、しかも、$0$はどんな空集合の要素よりも大きかったり、等しくなることはない。つまり、$0\leq 0$が証明された。
とりあえずは$$0\leq 0\qquad\tt(i)$$
2. 0≦1は自明そうには見えるが確認しよう
$0$も$1$も通常の自然数ではなく、超現実数として定義したものなので、改めてルール$(2)$に基づいて証明する必要があると思う。
$0\leq 1\Leftrightarrow(\phi,\phi)\leq(\{0\},\phi)
\Leftrightarrow\phi\ngeq1かつ0\ngeq\phi
\Leftrightarrow\tt TかつT
\Leftrightarrow\tt T$つまり、
$$0\leq 1\qquad\tt(ii)$$
同じく、$-1\leq 0$も示したい。
$-1\leq 0\Leftrightarrow(\phi,\{0\})\leq(\phi,\phi)
\Leftrightarrow\phi\ngeq 0かつ-1\ngeq\phi
\Leftrightarrow\tt TかつT
\Leftrightarrow\tt T$
つまり
$$-1\leq 0\qquad\tt(iii)$$
3. 0≦-1が偽であることを示したい
$0\leq-1$は$(\phi,\phi)\leq(\phi,\{0\})$となるので、
$x=0 かつY_R=\{0\}$なので、ルール$(2)$右辺の$x\geq Y_R$は、$0\geq\{0\}\Rightarrow\tt T$。$x\ngeq Y_R\Rightarrow\tt F$
$0\leq-1\Rightarrow\tt F$従って、
$$0\nleq-1\qquad\tt (iv)$$が示された。
これは$0\neq -1$ということなので$\tt(iii)$は$$-1\lt 0\qquad\tt(iii/b)$$となる。
4. 1≦0はどうなるのか
$0\nleq-1$が証明されたので、$-1と1$を入れ替えた形式の$1\leq 0$が気になる。
$1\leq 0\Rightarrow(\{0\},\phi)\leq(\phi,\phi)$となり、
ルール$(2)$で$y=0かつX_L=\{0\}$なので、$y\geq X_L$は$0\geq\{0\}=\tt T$。つまり、$y\ngeq X_L\Rightarrow\tt F$より、$1\leq 0\Rightarrow\tt F$従って、
$$1\nleq 0\qquad\tt(v)$$が示された。
これは$1\neq 0$ということなので$\tt(ii)$は$$0\lt 1\qquad\tt(ii/b)$$となる。
5.1 -1≦1を示したい
$-1\leq 1\Leftrightarrow(\phi,\{0\})\leq(\{0\},\phi)$はルール$(2)$より
$\phi\ngeq-1かつ-1\ngeq\phi\Rightarrow\tt TかつT\Rightarrow\tt T$なので
$$-1\leq 1\qquad\tt(vi)$$が示された。
5.2 逆の場合の1≦-1はどうなる?
$1\leq-1\Leftrightarrow(\{0\},\phi)\leq(\phi,\{0\})
\Leftrightarrow \{0\}\ngeq-1かつ1\ngeq\{0\}$
上記の結果から$0\leq -1$と$1\leq 0$が成り立っているので、全体が$\tt F$となるので、$$1\nleq -1\qquad\tt(vii)$$
これは、$1\neq -1$と意味するので、$$-1\lt 1\qquad\tt(vi/b)$$となる。