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なぜKPIよりもOKRと言われるのか?OKRの勘所

Last updated at Posted at 2018-07-12

はじめに

最近、OKRというフレームワークが流行っています。GoogleやFacebookなどが採用しているということで注目され始めたフレームワークですが、有名企業が採用しているからと安易に飛びついても成功しません。

この記事では、『OKR(オーケーアール) シリコンバレー式で大胆な目標』の内容を中心に、OKRがKPIよりもよいと言われる勘所を説明します。

OKRとは

ひとつの目標 (Objective) と、それに紐づく結果 (Key Results) によって、ビジネスの生産性を高めようという目標管理のフレームワークです。

具体的に、ObjectiveとKey Resultsは、以下のようなものです。

  • Objective (O): 四半期達成できるかどうかが半々定性的な目標
  • Key Results (KR): 3つ程度に絞ったObjectiveが達成できたか判断するための定量的な指標

OKR紹介記事の多くは、このOとKRについての説明を行っていますが、私はそれだけでは不十分 (上手く回らない) と思っています。『OKR(オーケーアール) シリコンバレー式で大胆な目標』で紹介されている以下の4つの四角形からなる形式の全要素こそがOKRだと思っています。

OKR.jpg

それでは4つの四角形のそれぞれの構成要素について説明します。

OKR自信度

図の右上にある『OKRの自信度』は、OとKR、自信度 (6/10や5/10と書いてある部分) から成ります。

『OKRの自信度』の肝は以下にあると思います。

  • チームの目標 (O) と目標を達成できたかの判断基準 (KR) をチーム全員が定期的に確認し、チーム一丸となって目標達成を目指せるようにする
  • 目標がチームにとって無貌でも安易でもない実効性のあるストレッチゴールであり続けるようにする

特に後者が大事です。目標は、上司の (経営層) 都合を部下 (現場) に押し付ける形になってしまい実質的に意味のないものになってしまいがちです。『OKRの自信度』では、定期的に (基本は週例毎に) チーム全員でKRの自信度を確認し、適宜調整します。自信度が高くなりすぎればKRを引き上げ、自信度が低くなりすぎれば真因分析を行って働き方やKRをテコ入れします。こうすることで、上司と部下間のモチベーションのズレを少なくします。

自信度という仕組みはよくできています。「自信度は5/10が適当」というルールがあることで、経営層が現場に理不尽に「なんで目標を達成できなかったんだ!」と怒鳴ることはできませんし、逆に現場が経営層に「無理難題を押し付けるからやる気をなくした。」と言い訳ばかり並べることもできません。

健康・健全性

図の右下にある『健康・健全性』は、目標を達成する上で守りたい2、3つの指標から成ります。つまり、KRのカウンターとなる指標の可視化です。

『健康・健全性』の肝は以下にあると思います。

  • 目標達成至上主義になって、現場が疲弊したり、負の遺産を残したりしないようにする
  • KRのハックを防ぐ

寝る間も惜しんで働き、KRを達成できたとしても、翌四半期から体調を崩されたり、燃え尽きて転職されては、中長期的に損失です。プログラムならば、リリースを優先して技術的負債を残しすぎるのも損失でしょう。

また、ニュースサイトのKRに『PV数QoQ10%増』を設定したとして、PVをあげるために飛ばし記事・ゴシップ記事を量産し、ニュースサイトの品位を落としてしまっては本末転倒です。こういったKRのハックが起こらないように、『OKRの自信度』で毎回KRとOを一緒に確認するわけですが、カウンターとなる指標を導入するのも有効な解決手段の1つになるでしょう。

健康・健全性指標は、OKRに限らずKGI/KPIで目標管理する場合でも、意識しておくべきものだと思います。

今週の優先事項

図の左上にある『今週の優先事項』は、Oを達成するために優先すべきタスク3、4つから成ります。

『今週の優先事項』の肝は以下にあると思います。

  • 目標の達成を実現するための具体的な作業内容をチーム内で共有する
  • 目標の達成に関係しない作業にチームが忙殺されるのを防ぐ

いくら、素晴らしいOとKRを設定できたとしても達成できなければ意味がありません。『今週の優先事項』に優先タスクが書いてあることで、日頃の雑務に忙殺されず、目標達成を第一に作業を進めやすくなります。

大事なのは載せるタスクを3、4つに制限しているところです。優先度をつけ慣れていない人は、自身が気にかけているタスクをすべて優先度高く見積もりがちです。そうなると、『今週の優先事項』が全タスク一覧のようになってしまい、目標に関係のない作業をしてしまいかねません。3、4つまでタスクを絞らなければならないとなると、否が応でも本当に優先すべきタスクが残る可能性が高まります。

また、今週の優先事項にあるタスクをこなした結果、KRが予想通り達成に近づいたかを翌週例に確認するようにしましょう。

今後の4週間―プロジェクト

図の左下にある『今後の4週間―プロジェクト』は、チームに伝えるべき今後の予定から成ります。

『今後の4週間―プロジェクト』の肝は以下にあると思います。

  • 中期的な計画をチーム内で共有できる
  • メンバーが今後の予定に対し、貢献し準備できるようにする

『今週の優先事項』では目標達成のための短期的な計画を共有しましたが、『今後の4週間―プロジェクト』では目標達成のための中期的な計画を共有します。

OとKRは四半期毎に更新されるので、『今後の4週間―プロジェクト』で一月先の予定までわかれば、このままで目標を達成できるかを予想できるようになります。もし、目標達成が困難そうであれば、チーム内で話し合うこともできます。

OKRはKGI/KPIと比べてなにが優位なのか

Objective/Key Resultsの関係とKGI/KPIの関係は非常に似ています。では、なぜ、今OKRが持て囃されているのでしょうか。

それは、OKRの方がKGI/KPIよりもプリンシパル=エージェント問題のような問題が起こりにくい点にあります。KGIは目標も定量的な指標にします。経営層にとっての目標はやはり、お金に関することですから「売り上げQoQ10%増」のように設定するのはよくある話です。こうなった際、経営層は「売り上げをあげよう!」と号令をかけるのですが、現場 (サラリーマン) は「売り上げQoQ10%増」と自身のメリットが紐付きません。こうなると、目標達成のために経営層は現場にインセンティブを与えなければならなくなるのですが、金銭的なインセンティブは一定レベルを超えると効果が薄まります。それこそ、GoogleやFacebookのような高所得の労働環境にいれば、売上増という金を増やすことだけを目標にモチベーションを維持することは難しいでしょう。マズローの欲求段階説にあるように、より高次の欲求を満たせると思える目標が必要です。OKRはObjectiveに定性的でチーム全員がワクワクするような目標を据えます。だからこそ、KGI/KPIよりも問題が起こりにくいのです。

ただ、KGI/KPIでも、それとは別に会社やサービスの哲学やビジョンが定性的に定義され、チーム内で共有されていれば、上で述べたような問題は起こりにくいでしょう。OKRでもObjectiveがSMARTになっておらず、「ユーザを幸せにするサービスを提供する」みたいな陳腐で抽象度の高い目標を設定しては、上で述べたような問題は起こりやすくなるでしょう。

だからこそ、私はOKRの優位性はObjective/Key Resultsにあるのではなく、4つの四角形からなる形式でチーム一丸でPDCAサイクルを上手く回せるような仕組み全体にあると思っています。

おわりに

この記事では、『OKR(オーケーアール) シリコンバレー式で大胆な目標』の内容を中心に、OKRの勘所を説明しました。この本は、途中に出てくるシナリオが非常に面白く「OKRを導入してもこういうことになると失敗するよ」というのが分かりやすく説明されているのでオススメです。

Googleが採用しているから流行りものにのるのでなく、実際に困っている課題を解決するための有効な手段として採用を検討することをオススメします。

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