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JSON-FortranのAPIドキュメントを読むための解説

Last updated at Posted at 2024-05-28

初めに

自力でこのAPIドキュメントからライブラリの使用方法を見つけ出し、コードを作成することを目指した解説になります。

3つの派生型

基本的にDerived Typesの箇所を見るだけで十分です。

こちらを見るとわかる通り3つの派生型(この場合は他言語ではclassに相当するもの)があり、この3つを利用してプログラムコードを作成します。

それぞれの派生型の内容

  • json_value:データ構造の本体、json形式で格納されたデータをpointerを駆使してfortranのデータ構造に落とし込んだもの。親や子や自分自身の前後に対してpointerを張ってデータの構造を作成している。(ライブラリの利用者はこの内部のデータを直接読み取ることはできず、json_coreを利用する必要がある。)
  • json_core:出力する時の表示形式の設定以外の内部のデータをほぼ保持しない。関数的な操作で、json_valueを直接加工したり、ファイルとjson_valueの相互変換や文字列型とjson_valueの相互変換を行う。
  • json_file:json_valuejson_coreがprivateで組み込まれており、ファイル読み込んで内部でjson_valueを組み立て、内部でjson_coreを利用している。

方針

jsonファイルを読み込む場合(一部例外あり)またはjson_valueを作らなくても済むような簡単なjsonファイルを作成したい場合はjson_fileを利用する。
jsonファイルを作成したい場合はjson_coreを利用する。
データが構造を持つものはjson_valueを使用する。

つまり、簡単な場合はjson_file、複雑な場合はjson_corejson_valueを使う。

用語

  • p: json_valueのポインタ
  • path: jsonの要素を指し示す名称 例:'inputs.flag'
  • val: jsonの要素
  • vec: jsonの要素のうち配列をさす

json_valueのポインタの内容

こちらにある通り、各ポインタには自身の名前、データ、親のポインタ、1番目の子のポインタ情報が格納されている。
下記の例で実際にポインタの状態を見てみる。
ポイントはどれが親と子の関係なのか、名前のありなしである。

{
  "id": 1,
  "name": "Banana",
  "price": 12.50,
  "tags": [ "home", "green" ],
  "list": [
    {
      "lon": 130,
      "lat": 34
    },
    {
      "lon": 131,
      "lat": 35
      }
  ]
}

この例だとrootは名前なしオブジェクト("")、rootの子供はすべて名前があり並列で"id": 1->"name": "Banana"->"price": 12.50->"tags": [ "home", "green" ]-> "list": [ { "lon": 130, "lat": 34 }, { "lon": 131, "lat": 35 } ]の順に並んでいる。
tagshomeは親子関係になっており、tagsはtagsという名前を持った配列であり、homeは名前をもたない文字列となる。
list{"lon": 130,"lat": 34}は親子関係になっており、listはlistという名前を持った配列であり、{"lon": 130,"lat": 34}は名前を持たないオブジェクトになる。

json_coreのType-Bound Proceduresの読み方

Type-Bound Proceduresは直訳すると型に束縛されたプロシージャであるが、オブジェクト指向におけるオブジェクトのメソッドと思ってよい。

add Procedures を例に

image.png

generic, public :: add => ...と書かれてあるので、総称名であり引数の型や要素数に応じて実行される中身が異なる。
総称名がpublic、個別名がprivateなので、総称名でのみしか実行できないようになっている。
具体的に個別名json_value_add_integerプロシージャを見ると

image.png

引数が4つあるが、Type-Bound Proceduresなので1つ目は派生型自身を指しており、引数として入力する際は(p, name, val)となる。
json_value型のpの子供に名前がnameの整数値valを加えるという動作を行っている。

作成方法その1

ここでは派生型json_coreを利用して派生型json_valueのポインタの構築を行い、それをファイルに出力するまでのプログラムを構築する。

program test
    use json_module
    implicit none
    type(json_core) :: json
    type(json_value), pointer :: root_p, list_p, tmp_p

    ! list_pの作成
    call json%create_array(list_p, 'list')
    call json%create_object(tmp_p, '')
    call json%add(tmp_p, 'lon', 130)
    call json%add(tmp_p, 'lat', 34)
    call json%add(list_p, tmp_p)
    call json%deserialize(tmp_p, '{"lon":131,"lat":35}') ! json文字列からjson_value型へ
    call json%add(list_p, tmp_p)

    ! root_pの作成
    call json%create_object(root_p, '')
    call json%add(root_p, "id", 1)
    call json%add(root_p, "name", "Banana")
    call json%add(root_p, "price", 12.50)
    call json%add(root_p, "tags", [character(len=5):: "home", "green"], trim_str=.true.) ! 文字列の配列も可
    call json%add(root_p, list_p)

    ! ファイルに出力
    call json%print(root_p, "file.json")

    ! ポインタに格納されたデータを消去
    call json%destroy(root_p)

end program test

方針

まずはlistという名前の付いた配列のjson_value型を作成する。
そのうえで、名前なしオブジェクト({})を作成し、その中に子供を付け加える。

create系プロシージャ

type(json_core) :: json
type(json_value), pointer :: root_p, test_p, list_p
call json%create_object(root_p, '') ! 名前なしオブジェクト
call json%create_object(test_p, 'test') ! 名前ありオブジェクト
call json%create_array(list_p, 'list') ! 配列

オブジェクトまたは配列のポインタを作成する。
それ以外要素もcreate系プロシージャで作成できるようであるが、オブジェクトまたは配列の子供として存在するはずなので、add系プロシージャで付け加えればよい。

add系プロシージャ

call json%add(root_p, "id", 1)
call json%add(root_p, list_p) !pointerにpointerを加える場合。

また上記の作成例のようにdeserializeプロシージャを用いればjson文字列から直接json_valueに変換が可能になるので、簡単なものはそれで作成が可能である。

作成方法その2

派生型json_fileのみを利用して、jsonファイルに出力するまでのプログラムを構築する。

program test
    use, intrinsic :: iso_fortran_env, only: int32
    use json_module
    implicit none
    type(json_file) :: json_f
    integer(int32) :: lon(2) = [130, 131]
    integer(int32) :: lat(2) = [34, 35]
    integer(int32) :: i
    character(1) :: num

    call json_f%initialize() ! 内部のjson_valueをリセット
    call json_f%add('id', 1)
    call json_f%add('name', 12.50)
    call json_f%add('tags', [character(len=5):: "home", "green"], trim_str=.true.)

    do i = 1, size(lon)
        write (num, '(I1)') i
        call json_f%add('list('//num//').lon', lon(i))
        call json_f%add('list('//num//').lat', lat(i))
    end do

    call json_f%print("file.json") ! ファイルに出力
    call json_f%destroy() ! 内部のjson_valueを破壊

end program test

add系プロシージャ

call json_f%add('list(1).lon', 134)

pathjson_valueでの入力のみ。したがってjson_fileのみを利用する場合はpathだけで簡単に構築できるかどうかが目安になる。

printプロシージャ

call json_f%print() !コンソール出力
call json_f%print("file.json") !ファイル出力
call json_f%print(iunit=12) !file unit numberへの出力

引数の型に応じて出力先が変わる。

配列の中にオブジェクトが入っているjsonファイルを読み取る場合

配列の中にオブジェクトが入っているjsonファイル(下記のような例)の場合はjson_fileのみでの読みよりに苦労する。
派生型json_fileからは直接指定されたpathの子供の数の読み取りができないからである。

file.json
{
  "id": 1,
  "name": "Banana",
  "price": 12.50,
  "tags": [ "home", "green" ],
  "list": [
    {
      "lon": 130,
      "lat": 34
    },
    {
      "lon": 131,
      "lat": 35
      }
  ]
}

方針

listの要素数が決まっている場合はpathで直接すれば済むのでjson_fileのみで問題がない。
listの要素数が決まっていない場合は以下の2通りで行う。

  1. json_fileでデータを取得して、json_valueで出力可能なため、一部のデータをjson_valueで出力してjson_coreで読み取る。
  2. 最初からjson_coreを使う。

1つ目の方法

program test
    use, intrinsic :: iso_fortran_env, only: int32
    use json_module
    implicit none
    type(json_file) :: json_f
    type(json_core) :: json_c
    type(json_value), pointer :: p, p_list_child
    integer(int32), allocatable :: lon(:)
    integer(int32), allocatable :: lat(:)
    integer(int32) :: id
    integer(int32) :: num
    integer(int32) :: i

    call json_f%initialize() ! 内部のjson_valueをリセット
    call json_f%load('file.json')

    call json_f%get(path='id', val=id)
    call json_f%get(path="list", p=p) !ポインタに出力
    num = json_c%count(p=p)
    allocate (lon(num))
    allocate (lat(num))
    do i = 1, num
        call json_c%get_child(p=p, idx=i, child=p_list_child)
        call json_c%get(me=p_list_child, path="lon", value=lon(i))
        call json_c%get(me=p_list_child, path="lat", value=lat(i))
    end do
    print *, lon
    call json_f%destroy() ! 内部のjson_valueを破壊

end program test

2つ目の方法

program test
    use, intrinsic :: iso_fortran_env, only: int32
    use json_module
    implicit none
    type(json_core) :: json_c
    type(json_value), pointer :: p, p_list, p_list_child
    integer(int32), allocatable :: lon(:)
    integer(int32), allocatable :: lat(:)
    integer(int32) :: id
    integer(int32) :: num
    integer(int32) :: i

    call json_c%load(file='file.json', p=p)
    call json_c%get(me=p, path='id', value=id)
    print *, id
    call json_c%get(me=p, path='list', p=p_list)

    num = json_c%count(p=p_list)
    allocate (lon(num))
    allocate (lat(num))
    do i = 1, num
        call json_c%get_child(p=p_list, idx=i, child=p_list_child)
        call json_c%get(me=p_list_child, path="lon", value=lon(i))
        call json_c%get(me=p_list_child, path="lat", value=lat(i))
    end do
    print *, lon, lat
    call json_c%destroy(p)

end program test

終わりに

エラー処理は特に書きませんでしたが必要に応じてAPIドキュメントを読んで書きましょう。

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