要約
MacアプリAlfred,もしくはLinuxアプリAlbert内にショウジョウバエの遺伝子名を入力することで,Flybase上の当該遺伝子情報ページを開く拡張機能を作った.
イントロダクション
キイロショウジョウバエは,分子生物学,細胞生物学,発生学など,生物学全体に大きく貢献してきた生物である.
これまでの研究から,ショウジョウバエに関する知見が数多く蓄積され,ショウジョウバエデータベースであるFlybase上にて公開されている.
Flybaseは,その設立当初から,ショウジョウバエデータベースとして最も重要な役割を果たしており,ショウジョウバエ研究者のみならず,他の生物を対象とする研究者にとっても,Flybaseは貴重で必須の情報源となっている.
Flybaseは,ショウジョウバエの全ゲノム配列をはじめとした有用な情報を公開しているが,研究者が特にアクセスするのは,FBgnページだろう.
FBgnページは,ショウジョウバエの遺伝子ごとに存在し,遺伝子機能,配列情報,突然変異体・遺伝子組換え体などのバイオリソース情報,当該遺伝子についての論文情報などがまとめられている.
(e.g. Myo31DF FBgn page)
FBgnページは,Flybaseトップページなどから遺伝子名を検索してアクセスできるが,論文を読んでいるときなどは,Flybaseにアクセスせず,直に素早く当該遺伝子のFBgnページへアクセスしたくなる.
本稿では,MacもしくはLinuxにおけるクイックランチャーアプリから,ショウジョウバエ遺伝子名を入力することで直にFBgnページへアクセスする方法を報告する.
Alfred(for Mac)やAlbert(fo Linux)など,いわゆるクイックランチャーアプリは,任意のキーワードをトリガーとする拡張機能をサポートしている.
筆者が作成した拡張機能について紹介し,インストール方法と使いかたを説明する.
結果
インストール方法
以下のソフトウェアが必要です
Macユーザーの場合
- Alfredをインストールする.
- AlfredのPowerpackを購入する.
- flybase_searcherをクローンする.
-
${HOME}/Documents/
にfbgn.csvをダウンロードして保存する. -
flybase_searcher/alfred/Flybase Search.alfredworkflow
を開くと,自動でインストールされる.
Linuxユーザーの場合
- Albertをインストールする.
- flybase_searcherをクローンする.
-
$flybase_searcher/albert/
にfbgn.csvをダウンロードして保存する. -
flybase_searcher/albert/
を$HOME/.local/share/albert/org.albert.extension.python
に移動する.
使い方
- ランチャーを起動する.
- トリガーワード(
fly
)を入力する. - 遺伝子名(e.g. N, Myo31DF, emc ...)をトリガーワードに続けて入力して決定する.
議論
今回,クイックランチャーを用いたFlybase FBgnページへのアクセスについて示した.
そもそも,FBgnページへ直接移動せず,検索するだけならば,http://flybase.org/search/{query}#/page/1
というURLを開くように設定するだけで可能である (e.g. http://flybase.org/search/Myo31DF#page/1).
この方法は,遺伝子名をぼんやり覚えているときや,別名から検索したいときには便利である.
これと比較して,本手法は,遺伝子名が完全に分かっているときに,瞬時にFBgnページへアクセスできる点が優れている.
ショウジョウバエ研究を長く行っていると,特にスクリーニングの経験があると,かなり多くのショウジョウバエ遺伝子名を記憶するため,本手法のほうがより素早くFBgnページへ移動できるだろう.
本手法は,Flybaseだけでなく,MGIやHuman Databaseなどの検索にも応用可能である.
そもそも,クイックランチャーによるウェブページへのアクセスは,データベースと非常に相性が良い.
これ以外にも,UniprotやPubmedなど,応用の範囲は非常に広く,研究者がデータへ効率的にアクセスする上で必須の手法であるといえる.