概要
メンバーのモチベーションを引き出す方法について勉強したことを記します。
自分用に書いていたので全体があまり整理できていません。
参考書籍
- 「動機づける力」
- 「マネジメントの基礎理論」
仕事への満足と不満足
仕事への満足と、仕事への不満足は別要因です。表裏一体かと思われるでしょうが、仕事においては別なのである。例えば、仕事の不満がいくら解消されたとしても仕事の満足は得られないのです。
人が仕事で満足感を得られるときは、そのほとんどが仕事内容・責任感・達成感・承認欲求・自己成長などの「動機づけ要因」です。反対に不満は企業の方針と管理・対人関係・給与・身分などの「衛生要因」です。
人は不満があるとその苦痛から解放されようとして会社を辞めてしまいます。不満を取り除けば人はやめにくくなりますが、それだけでは不足で、満足を得られなければ一時的な効き目も消えてしまうでしょう。
社員のモチベーションは「組織」と「直属の上司の良さ」という2つの要素が重要です。
組織はもちろんのこと、上司がこの後に紹介するモチベーションを保つ方法に対しいかに努力するかが重要です。
モチベーションサイクル
メンバーのモチベーションには以下のようなサイクルが良いとされています。
- ちょうど良いレベルの仕事を与える
- 仕事が成功するように支援する
- 成功したら正当に評価し、周囲に共有して承認する
- 昇給や昇進などをして報酬を与える
- 成長したらそれに見合うレベルの仕事を与える
という「機会~支援~評価~承認~報酬」のサイクルです。
しかし多くの企業に導入されているMBO(目標管理)では「評価〜承認〜報酬」の部分は制度化されていますが、「機会〜支援」の部分はそれぞれのマネージャに任されており、上手く機能していないことが多いのです。
どんな機会を与えるかが重要!
本人のためになると思った機会でも「なぜこんなことをする必要があるのか」と思われてしまうことがあります。メンバーと相談して方向性を決めるのが良いのですが、よくあるのはメンバーだけに目標を立てさせてしまうこと。メンバーは自分の最適な課題を知りません。一番良いのは「できるかできないかギリギリの課題」です。また、良い意味であまり逃げ場がないほうが良いです。
モチベーションを継続させるためのメンテナンス
その後の支援も忘れずに!
適切な課題を与えたら、それで終わりではありません。定期的に軌道修正をしていく必要があります。「課題が思ったより難しかった」「簡単に終わってしまった」なんてこともありえます。メンバーの状態に合わせ、軌道修正をタイミング良くできるかでメンバーのモチベーションは変わってきます。それは早すぎても遅すぎてもダメなのです。
メンバーをスパルタ教育で追い詰めるなんてことは最悪ですが、逆に定期面談だけでメンバーを知らないというマネージャも多いのではないでしょうか。人によって「ギリギリの線」や「逃げ場」はそれぞれ。メンバーを見続けることを忘れずに。
目標は個人だけでなくチームでもあるとなお良いです。
どちらかが楽に達成できるものだったとしても、もう一方を適切なレベルの目標にすることで、慢心や諦めを起こさせないようにします。
余談:メンバーは仕事ができないのではなく、あなたの指示出しが問題かも?
新しい仕事を与えられたメンバーは、急に仕事ができなくなったり行き詰まってしまうことでしょう。その時に「なんでできないんだ」と思いがちですが、その時は大体あなたの指示出しが悪いです。
指示出しの基本「2つのRと2つのW」
基本は「What(何を)」「Way(どうやって)」「Reason(なんで)」「Range(範囲)」を伝えることです。特に「Way(どうやって)」をうまく伝えないために困ってしまうメンバーが多いように思います。また、「Reason(なんで)」を伝えることでメンバーは自分で考え始め、自律への道が進みます。
ただし、「自由にやってくれ」などという自由度が高すぎる指示はメンバーの思考停止を招くので、明確な指針や方向性を提示したほうが成果が出やすいです。
"フェアゾーン"で遊ばせる
メンバーに対し「Reason」で根本的な考え方を示し、「Range」で"フェアゾーン"を作り、目の届く範囲で自由に遊ばせます(仕事をさせます)。毎回適切な"フェアゾーン"を設定することが大事です。
メンバーはこうして徐々に成長の階段を登っていくのです。
また、間違ったからと言って過度に怒られるような環境ではうまく遊べなくなってしまうので注意しましょう。
ある成功実験の例
あるチームではメンバーのモチベーションを上げるための実験が行われました。
簡単に言うとチームにおいて個人の責任を増やしたり、権限の幅を増やすなどをしました。それにより、メンバーは一時的に不安を感じたり効率が落ちるタイミングがあったものの、半年後には見違える業績をあげたそうです。
モチベーションを上げるための取り組みは、すぐに効果を発揮しないこともあります。辛抱強くメンバーを見続けましょう。
ちなみに、このチームでやったことは非常に細かいことです。
マネージャを通さず本人に直接報告させる(内部的承認)、文章にはマネージャでなく必ず自分の署名をさせる、専任をつけて問い合わせはその人にする(これまではマネージャだった)などです。
また、メンバーの仕事が充実するとマネージャの退屈な仕事がなくなり、本来あるはずのマネジメント業務そのものに専念できるという恩恵もありました。
4つの欲動
ここからはモチベーションに関するいくつかの説を紹介します。
まず最初に、ハーバードビジネススクール名誉教授のポール・R・ローレンスらが指摘した4つの欲動についてです。
この4つの欲動がすべての行動の基盤になっているといいます。モチベーションが最大化されるのは各指標すべてが満たされているときであり、逆に3つが高くても1つをないがしろにすると上手くいかないとのこと。
この4つは順位がつけられないので、全部を同時に改善しようとするのがいいです。
1. 獲得への欲動
人は幸福感を高めるため何かを獲得しようとします。ステータス、金銭、住まい、旅行や娯楽などの経験などで得られます。
また、やっかいなのは「他人と比べてどうか」というところも気にするところです。この欲動には限界がありません。
これを高めるためには、報酬制度を導入することなどがあります。
優秀な者を区別するようにする、業績に連動した給料を与える、などです。
2. 絆への欲動
メンバーが自分のチームを自慢に思えばモチベーションが向上するし、裏切られれば低下します。
自分のチームだけではなく会社全体に対して同じ気持ちが抱くことができればなお良いです。ただ、縦割りの組織の壁を超えるのはなかなか難しいところでもあります。
これを高めるためには、当然ですがチームワークと協力を大事にすることです。
みんなで食事したり、ゲームしたり、交流を深めるなどがあります。ただ、求めていない人を無理に交流させることは逆効果になるでしょう。
3. 理解への欲動
人は自分がいる組織・自分がやっていることの意味を理解しようとします。
意味のないことをしていると感じると不満を感じます。つまらなくなると優秀な人材ほどチャレンジングな課題を求め他社へいってしまうでしょう。
これを高めるためには、具体的で重要な役割を与えるように職務設計することです。
4. 防御への欲動
人は本能的に自分・家族・知り合い・信念・財産などを守ろうとします。これが満たされると信頼感と安心感に包まれるでしょう。
逆に、人が変化を嫌うのはこの欲動があるためです。
これを高めるためには、決定プロセスの透明度を高めることです。
判断の意味・意思を明確に伝え、理解させることが重要です。
職務設計の中核的5次元
続いて紹介するのは、モチベーション理論を唱えるリチャード・ハックマンとグレッグ・オールダムが提示した職務設計の中核的5次元です。
先ほどの理論をより職務設計という視点で具体化したものと考えられます。
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職務の多様性
単純業務ではなくスキルや熟練が生かせる仕事であること。 -
タスク・アイデンティティ
歯車ではなく、全体像の中で流れを知る。 -
有意義性
やるべきことの背景ややらねばならない理由を知る。
周囲との関係性のなかで自分が役に立っているという実感を得られなければならない。 -
自律性
きっちり手順を定めすぎず、工夫できる自由度を設定する。 -
フィードバック
結果だけでなく、進行中でもフィードバックする。
インナー・ワーク・ライフ
インナー・ワーク・ライフとは、表面に見えない"人々の気持ち"のことです。
高いパフォーマンスを発揮するために、インナー・ワーク・ライフは「創造性」「生産性」「意欲」「仲間の協力」に大きく影響します。
つまり、インナー・ワーク・ライフ(気持ち)が良いか悪いかでその日のモチベーションが大きく変わってくるのです。
ある研究結果によると、日頃からメンバーを励ましたり褒めたりすることはあまり意味がないことがわかったといいます。
重要なのはとにかく「仕事を進捗させる」こと、「人間として尊重する」ことでした。
「仕事を進捗させる」
仕事が大幅に進捗する、または困っていたことが解決する、などの時には大きな喜びがわくことがわかりました。
そのために上司ができることは、直接支援する、適切な資源と時間を与える、成功や失敗に教育的指導をする、などです。また、そもそも仕事における目標がはっきりとしており、それがなぜ重要かメンバーが認識している場合に仕事に進捗が見られやすいことがわかっています。
「人間味のあるマネジメント」
もしメンバーの仕事が進んでいない場合、いくら褒めてもインナー・ワーク・ライフにはほとんど影響しないことがわかりました。もしくはかえって冷笑的に受け取られてしまうでしょう。一方、仕事がはかどったのにそれを認めてもらえなかったり、些細なことを非難すると怒りや悲しみの感情が生まれます。最も良いのは、自分が良い仕事をしたとメンバーが認識している場合に正しく評価することです。
MBO(目標管理制度)の問題点
目標というと皆さんがよくご存知なのはMBO(目標管理制度)でしょう。Management by Objectives の略で、個別またはグループごとに目標を設定し、それに対する達成度合いで評価を決める手法です。組織の目標と個人の目標をリンクさせ、組織の成功に直接貢献するという参画意識を持たせることができます。
しかし、MBOそれ自体は望ましい手法であるものの、そのコンセプトと実践の間に深刻な乖離があります。MBOが単にメンバーにプレッシャーを与えるのみになっているのは、MBOがモチベーションにおける感情的要素が考慮されていないためです。
MBOの問題点
・そもそも目標が立てづらい。複雑な仕事であるほど、目標で定義した職務と乖離していってしまう。
・目標を設定させることで、社員のやるべき業務を限定してしまう。また、逆にあいまいで測定不可能な要素が無視されてしまう。
・また、評価する側からすると、評価する行為そのものが「他人を攻撃する行為」「人間味のない行為」に感じて罪悪感がある。
期待がメンバーを動かす
マネージャがメンバーに何を期待しどう接するかによって、メンバーの業績と将来の昇進がほとんど決定してしまいます。
優れたマネージャの特徴は「高い業績を達成できる」という期待感をメンバーに抱かせることができるところです。また、メンバーはメンバーで、自分に期待されていると感じていることしかやらない傾向が強いです。
ネガティブな気持ちはすぐ伝わる!
メンバーにネガティブな印象をもっているとそれはすぐに伝わります。黙っていたとしても、それは期待値の低さを伝えてしまいます。逆に、ポジティブな印象はなかなか伝わりません。
しかし、メンバーの能力やスキルを超えた期待は逆効果となるので、現実的な期待をする必要があります。
モチベーションと努力の度合いは、成功する見込みが50%に達するまでは上昇を続け、それを超えると下降しはじめるそうです。つまり、逆に楽に成功するものはモチベーションが上がらないのです。
優れたマネージャは、そもそも自分がメンバーを育てる力に自信をもっています。
マネージャの期待は、特に若者に大きな影響を及ぼします。逆にキャリアを積んでいる人は自己イメージが硬直化していき、自分も上司も相互に高い期待を抱くことが難しくなってくるでしょう。
若者は最初のマネージャから、生涯において最も大きな影響を受けます。そのため、「新卒は最も優秀なマネージャにあてるべきだ」と主張する人もいるくらいです。
メンバーのやる気を引き出すマネージャになるには
優れたマネージャは、普通の人よりも高い「権力動機」を抱いていることがわかった。権力動機」とは権力を振りかざすことではなく、前向きなインパクトを与え、強い立場から影響力を行使したいという欲求である。
それは自分の権力を拡大するためではなく、組織全体の利益となるよう自らを律しコントロールしなければならない。また、優れたマネージャは人に好かれたいという欲求よりも権力への欲求が強いことがわかった。
人に好かれたいという気持ちがあると、例えばメンバーから「育児のためリリースが近いけど長期休暇をとりたい」などといた例外的な要求を受け入れてしまい、他の人から見ると不公平感を与える。
また、研究結果では優れたマネージャーの63%が民主的、すなわちコーチングスタイルのマネジメントだった。逆にそれ以外のマネージャは権威主義的、すなわち威圧的なマネジメントスタイルだった。
成績が良いかは別として、メンバーのやる気を引き出すにはマネジメントスタイルを考える必要がありそうだ。
優秀なマネージャに多い「組織志向」の人の特徴
- 組織を中心に物事を考える。また、権力を集中することが重要だと考える。
- 仕事が好き。ただし長時間労働を好むわけではなく、できるだけ効率的に仕事をしようとする。
- 自分の利益を犠牲にし、組織の繁栄のために動く。
- 強い正義感の持ち主。その努力は正当に報われるだろうと信じている。
- 人間的に成熟している、利己的ではない。
- 組織を動かすこと、メンバーを動かすことに関心がある。1人で全部やろうとしない。
「理想の職場」の作り方
優秀な働き者は給料や福利厚生だけで動いたりしない
自分と組織の方向が一致するならばそこにやりがいを見出す。末長く働いてもらうため、職場の価値観や特性を明確に伝えなければならない。
「何のために働いているのか」がわかると仕事への取り組みが真剣になる。
ただし、「社会への貢献」など日常生活と関係性を見出しにくい目標は難しいでしょう。近くの人たちとの関係性が見え、自分が役にたっているか実感できる目標があれば良い。
社外だけでなく社内への影響も理解させることが大切になる。
お互いの要望を出し合うだけでなく、お互いの仕事を理解することも重要になります。
普段話さないメンバーと話したり、多少離れた部署の人と交流をし、仕事の流れや意義を確認させる行為も効果的です。
他者と同じ待遇が必要十分条件ではない
会社によって給与が高い企業、時間が自由な企業、安定したお堅い企業、などいろいろある。これらのコーポレートアイデンティティは万人受けしないことを彼らもわかっているが、
やる気を育てる要素
・長期にわたって生産性の高い人材はどのようなタイプか包括的に理解していること。例えば、どのようなスキル習得を望んでいるのか、どのような職業観を持っているかなど。
・シグニチャー・エクスペリエンスが具体的に定義され、周知徹底されており、その結果、自社の特性と価値観が採用担当者と従業員によく伝わっていること。
・従業員たちが同じ経験をしていること。「この職場で働きたくない」と感じるようなものがあってはならない。
それでもメンバーのモチベーションが上がらない
やるべきことをやっているつもりなのに、それでもメンバーのモチベーションが上がらないことはありませんか。
「価値観が違う」「環境が違う」などと早々に諦めてしまっていませんか。
ただ、どんな人間もやる気になるものがあります。組織心理学者のヘンリー・マレーはこの要因は6つの大カテゴリに分類される28の要素があると説いています。
そのどれに当てはまるかを探り、当てはめるのです。
マレーのリストはこちらを参照
https://swingroot.com/murrays-psychogenic-needs
それでもやっぱり、メンバーのモチベーションが上がらない
いろいろ勉強しましたが、私個人としてはそれでもやはり仕事に対してモチベーションが上がらない人はいると思っています。
仕事内容がそもそもマッチしていないかもしれないし、会社の方針とマッチしていないかもしれません。
採用が間違っていたのではないかと考えられます。
その時はメンバーとよく話し合い、よりよいキャリアを築ける会社・仕事を探したほうがいいと考えています。