想定読者
結婚しようか考えているエンジニア
これからエンジニアと結婚を考えている人
導入
この記事を思わずクリックしてしまったエンジニアの方は、恋人とSlackで連絡をとり、NotionやGoogleカレンダーと連携して効率的で非同期なカップル生活を楽しんでいるような方だと思います。
「今日帰りに卵を買ってきて!」なんてLINEをしなくても、Notionの買い物リストに「たまご」を追加すれば、slackの買い物チャンネルにそれが通知される。他のトークテーマが埋もれてしまうこともない。
予定もGoogleカレンダー連携をしておけば、お互いの予定を確認しやすいですよね。
記念日などのタスクも忘れない、快適カップル生活の必需品だと思います。
そんなエンジニアの方が結婚を考えた時に、婚前契約書はGithubで管理するといいよという話です。
なぜ婚前契約書なのか
私は「結婚は社会的・法的拘束力の強い契約だが、自由度が高く意外と明文化されていない」ものだと思っています。実際には民法などの法律で明文化されていますが、それを知ってるのは法曹業界の人たちくらいだと思います。
また現在の法律は現代にあっていないものも多く、前衛的な思想を持っているカップルからすると最適ではないと思います。そこで現在想定される様々なリスクを婚前に二人で話し合い、自分たちにとっての最適な契約(結婚)にしようと思いました。
「さぁ、結婚をするぞ」と最高にハッピーな気分の時にわざわざこんな面倒なことをする必要があるのか?と思う人も多くいると思います。
ただ調子が良くて最高な気分の時ほど、足元を掬われないように準備をすることが大切だと思います。
特にこの契約は婚前であることが大切だと思います。私の周りで結婚後、色々な問題に直面している人の話を聞くと、事前に確認することが可能だったのではないか?と思うことが多くあります。
実際に作った文章
私が実際に作成した婚前契約書は個人的な内容も一定含まれるので、より汎用化したものをGithubで公開しました。
ネットにあった婚前契約書をベースにし、自分たちが書きたい内容を調べたりChatGPTに相談をしながら作成しました。
法律の専門家に相談したわけではないので、法的に最適であるかなどは分かりません。
弁護士に相談して推敲し公正証書にしたりすると、法的有効性が格段に増すと思います。
今回はあくまで、これから結婚する人に少しでも役に立てればという思いと、可能であれば皆さんのお力で多くの人に使える婚前契約書の雛形を作成できればと思っています。
婚前契約書で特に気にした点
夫婦間の財産管理
第4〜5条
今回のポイントの1つは夫婦の財産の在り方です。
基本的には結婚以降に取得した財産は全て共有とされるそうですが、共働きであったりそれぞれ趣味があるとどこにどのくらいお金を使うかが難しいです。
そこでこの婚前契約書では個人で稼いだ分は個人の財産であり、共同体に必要な財産は別途決めて支出することにしました。
実際に運用としては、毎月何万円を共有の財産として支出していくことになります。
また子どもができたりした場合、出産・育児が発生し妻の収入が下がる場合があります。
この場合、その労働分を加味して妻の支出分を減少させ、夫の支出分を大きくするなどの変更を加えることになります。
また、家事・育児の分担についても家族の幸が最大化する方法で合意することで、どちらかが圧倒的に稼ぐような状況では、他方が専業主フになることを良しとしています。
この辺は絶対にどちらかが仕事をしたい場合は、違う書き方になると思います。
双方の親との関係を明記
第7条
ここが意外と大切だと思っています。
私の周りでも、相手の親との関係で悩む人もおり、どちらかの実家の敷地内に家を建てるとか、同居するとか、将来的には介護など様々なリスクがあります。
また家族になるので、関係を切りづらく問題が泥沼化することも多いようです。
今回は「自分たちの家族が第一でうざいなら関係を切る」ということを明記しました。
子育てとかで、夫婦はこうしたいけど、親がうるさく口出ししてくるなどの場合は簡単に想定できました。
また将来的に同居になることも原則無しにしました。事情次第では話し合う余地は残していますが、基本的にはしない方が良いと思っていますし、
その方針で合意できることには価値があると思います。
離婚時の親権を明記した
第11条
これが結構大切な部分で、かつ離婚時に婚前契約書が法的効力を持つようにした方がいい1番の理由かもしれません(2位は財産かな?)。
日本では離婚時の親権はほとんど母親になります。たとえ、離婚に至る原因が母親側にあったとしても、父親が親権を獲得することはかなり難しいそうです。
さらに最近話題の托卵妻(不倫相手の子どもを旦那の子として育てること)など、たとえ父子関係が生物学的になかったとしても、場合によっては離婚後にその子に養育費を支払う義務が発生したりします。
このような巨大なリスクに対応することができます(男性視点)。
また、個人的には離婚時に子どもが物心ついていれば子どもの選択が尊重された方が良いと思っているので、その点についても明記しました。
Githubを使ったメリット・デメリット
メリット
プルリクの機能が便利
結婚においては男女で懸念点となる場所が異なります。
そこでお互いに自分がどういう意図でどのような変更を求めるのか、そしてそれを相手が確認してマージするようにすれば双方にとってリスクを減らすことができます。
非同期に契約書を作成を進められる
エンジニアカップルは夜も朝も土日も仕事をしているような人が少なくないと思います。
そんなカップルは、話し合いの時間を作るのも大変です。そこでお互いに、事前に非同期で婚前契約書の懸念点やおおまかな修正を行なっておけば順調に進みます。
ただ最終的には、二人で時間を作って各懸念点に対応することが良いと思います。テキストコミュニケーションだけではすれ違いの原因になります。これは結婚前の語らいだとプジティブに捉えると良いと思います。
履歴が残る
私はドキュメント化の際に、履歴が残ることが大切だと思っています。
誰が、いつ、どのような変更を加えたのか。
さらにGithubを活用することで、その変更を誰が承認したのか、その変更はなぜされたのか、また提案された変更がなぜ反映されなかったのかの議事録も同時に残すことができます。
「この条項はこうしようって言わなかったっけ?」という会話があった際に、それが採用されなかった理由も確認することができます。
そこまで関係が拗れないことが望まれますが、お互いの納得のために記憶ではなく記録に残すことは大切です。
承認フローを使える
Githubの機能でプルリクの承認にどのメンバーが必要かや、何人の承認が必要かを設定できるので、両者の合意がない状態で間違えて契約書に変更されることがないようにできます。
デメリット
マークダウンが歯痒い時がある
マークダウン記法で作成していますが「契約書のレイアウトとしてこれは最適なのか?」と感じています。
Wordとか文章作成用のソフトに比べるとどうしても制約があるのは仕方がないかなと思っています。表紙と最後の署名押印欄はWordなどで作成した方が綺麗になるので、この中には含めませんでした。
双方がGithubを使用できないと成立しない
そもそもですがGithubを使える非エンジニアは少数だと思います。なので非エンジニアと結婚予定のエンジニアの方には難しいかもしれません。Githubとマークダウン記法を教えるデートはできそうですが。
今後やっていきたいこと
将来的に子どもができたら、家庭内のルール(門限とかお小遣いとか)もGithubで管理していこうと思っています。門限とか親の匙加減ですし、お小遣いも物価の変動を加味しないと子どもがかわいそうです。Githubで子どもがイシューを立てたり、プルリク(提案)をできる手続きを作っておけば、子どもも主体的に参加できる民主的な家庭が作れるのではと思っています。
また親権など現行法が変わることもあるので、それに合わせた夫婦間の契約の変更も適宜行なっていく必要があると思っています。
また現状問題にはなっていませんが、宗教関連の事項は作成する必要があったかもしれません。
少し前に問題になった高額献金なども婚前に宗教活動への支出のあり方を決めておけば、防ぐことができます。公正証書にしておけば、共有財産を使い込まれても強制執行で取り返すことができるかもしれません。
結婚時の双方の宗教が異なる場合は、この宗教や家庭内での宗教活動のあり方などを婚前に合意しておくことができます。
これは早速アップデートした方が良いかもしれません。
最後に
婚前契約書の法的効力などについては、まだ判例なども少なくあまり確定した情報があまりありませんでした。この辺はネットで調べても「議論されている」みたいな感じで、日本の民法がかなり昔に作られたまま放置されている現状があるようです。
しかし私が婚前契約書を彼女と作成して一番感じたことは、法的拘束力より彼女と結婚前に様々なリスクについて話し合いを行い、合意することが重要だということです。
婚前契約書の公開リポジトリを作成したので、今後多くの人がご使用頂けるように皆さんからのイシューやプルリクお待ちしております。
またこの婚前契約書で想定されていないリスクがあれば、ぜひ教えていただきたいです。
オリジナルを作りたい方はぜひフォークしてください。
日本に婚前契約の文化がもっと広まったらいいなと思っています!