はじめに
Atlassianツールを組織・チームに導入する上で気をつけてきたこと、直面した課題と実際に行った解決策を記載していきます。
取り上げるツールは、JIRA・Confluence・HipChatの3つです。
導入担当として取り組まれている方の一助になれば幸いです。
自己紹介
システムエンジニア
某大手SIerに勤務
30年以上続く巨大なシステムのエンハンス、および、新規案件に伴う開発プロジェクトに従事
所属組織(部署)の簡単な紹介
- 30年以上続く組織
- 社員150名程度
- パートナーなど含めた関係者1000名程度
- チーム数は10程度
- コミュニケーションはメール文化
- Excel管理資料多数
- ウォーターフォール型開発
つまり、いわゆるモダンな開発チームとは反対にある組織でしょうか。
2017年1月よりAtlassian製品導入の活動を行ってきました。
最初は1チームから始めて、現在は組織全体への展開活動中です。
導入するにあたって気をつけてきたこと
- 組織の抱える課題に焦点をあてる
- スモールスタート
- ゴールを共有する
- トップダウン
1. 組織の抱える課題に焦点をあてる
いきなりツールとその機能を説明したとしても、それで導入しよう!とはならないケースが多いと思います。
どんな課題が解決できるのか、またその課題を解決するインパクトはどのようなものなのか、それを意思決定者に説明できることが重要であると考えています。
私の場合は、このような進め方をしてきました。
組織的な人材ローテーションで環境が変わった
会社の人材育成方針により、部署間での人材ローテーションが活発になりました。
これまでは、固定された人材で経験を積み重ねていく、属人化が前提となっていた組織だったので、人材ローテーションとなったら一大事。ノウハウの継承が大変です。
人材ローテーションの環境における課題は「情報の蓄積」でした。
働き方改革の社会的な時流
働き方改革の流れを受けて、弊社でも残業時間の削減が組織目標に掲げられるようになりました。
しかし、現場は「短縮できる余裕なんて無い!」という空気。その原因を探ってみることにしました。
ヒアリング、観察などで見えてきたのは、メール・電話の時間が長い。定例の時間も長い。今の状況を確認するには担当者に聞かなければならない状態でした。定例でも状況確認に時間がとられ、チームで議論すべき課題に時間が割けない状態。
残業時間削減ために重要な課題は「状況の見える化」でした。
課題と解決策をセットで意思決定者に提示する
これらの課題を上司と話しました。
そして、AtlassianのJIRAとConfluenceを活用することで解決できる手段がある、という提案をして、導入の推進を担当することになった、というわけです。
2. スモールスタート
自分ひとりが影響を与えられる範囲は限られています。
影響の輪の大きさを客観的に見極めて、その範囲から始めるのがお勧めです。
- まずは一人で触ってみる
- 導入の効果が分かりやすい利用方法を見つける
- 業務の中で実際に利用しているものを周りに見せる
- それをネタに、周りで、新しいもの好きの人を誘って紹介してみる
やりたいと思ってくれる人が出てきたら、影響の輪を広げられる兆しです。便利に利用している実例が何人かれば、その周りの人たちの中に興味を持つ人が増えてくるはずです。
私のスモールスタートからの活動記録
1:自分の所属するチームで始める(社員15名+パートナー40名程度のチーム)
・身近な社員の内で利用を始める(上記15名のうちの一部)
・パートナーも含めてチームで利用を始める
チームの活動として定着するのに、4ヶ月程度かかりました
2:他チームへと展開する
・各チームに仲間となる導入推進者を作る
・彼らにアプローチして、それぞれのチームに展開を促す ★ちなみに今はここの段階です★
私の最初の仲間作りの活動記録
・レビュー記録をConfluenceに記録する
WordライクなUIでさくさく記述できる様をモニターに映して見せびらかしました
・個人的なタスク管理にチケットを使う
JIRAのWBSガントチャートで表示したり、ダッシュボードでグラフ・2次元フィルタなどを用いた状況把握を見せびらかしました
・顧客からの問い合わせ管理をサンプル的にチケット管理にして、ダッシュボードなどで表示して、こんなことができるよ、と見せびらかしました
見せびらかすことを意識しました。実際に動いているものを見せられると、説得力があります。
当時、良さそう!と食いついてくれた人が、4~5名いました。チームの中の1割程度です。
いわゆる「アーリーアダプター」といわれる人ですね。
ここからは、最初の1つのチームに導入した活動について書いていきます。
3. ゴールを共有する
スモールスタートで利用者が少しずつ増えて、効果を感じる人が増えてきたら、チーム活動に昇格させるチャンスです。
ただ、対象が広がるほど、新しいやり方に対する考え方もさまざまになっていきます。自分の手の届かないところでいろいろな反応が起こります。
人によっては”やらされ感”から新しいやり方に消極的になってしまう、というケースも多々あると思います。
導入担当者からすると「こんなに良いやり方ができるのに、どうして周りの人は理解してくれないんだろう?」と思い、孤独を感じやすいのもこの段階です。
この状況を乗り越えるためには、目的・ゴールを共有するアプローチが効果的です。
「ConfluenceやJIRAを導入する目的は何か?」「導入することでどんな効果を得られるのか?」このゴールを、粘り強く訴え、チーム全体で共有していくことが大切です。
手段にとらわれないように注意してください。
4. トップダウン
先のゴールの共有がチーム内で深まれば、チーム活動にツールを正式に取り入れる段階に入っていくことになります。
この時点では、チームで活用する手段としていくつかの利用パターンができているはずです。
チームリーダから、「今日からこのやり方にすること!」と言ってもらいましょう。
スモールスタート
このときも、スモールスタートが重要です。
チームメンバそれぞれのツール習得レベルはさまざまです。取っ掛かりが難しいと、問い合わせが大量に発生して手に負えなかったり、不満を抱くひとが増えてしまうような事態になりかねません。
ツール導入順序も大切
ツールの難易度からすると、こんな順番で導入していくのがお勧めです。
1:HipChat
打ち合わせの時間調整とか会議室の案内とか、そのようなレベルから始める
2:Confluence
打ち合わせ議事録で使う
メンションによる通知機能にも馴染んでもらうようにする
3:JIRA
顧客問い合わせのような、発生してはすぐに消しこむようなものをターゲットに導入する。
ダッシュボードでグラフや二次元フィルタ統計などを利用して見える化を実感してもらう。
4:JIRAのさまざまな機能を活用していく
・ある時点のチームのタスクを全量JIRAに起票する
今、チームが使っているスケジュール管理に合わせる形でViewを使い始める
WBSガントチャートは効果的でした
・カンバンボードを利用したタスク見える化も分かりやすくて効果的
ConfluenceのJIRAフィルタを活用して定例ページと連動させる
などなど
直面した課題と解決策
上述したステップ3あたりから、課題に直面することが増えてきます。実際にあった話しをここで書きます。
いままでのやり方のほうが楽だ、という抵抗勢力
手段から先に話しをした場合に起こりました。
慣れた方法のほうが楽なのは当然です。ましてやJIRAは、チケット管理に馴染みの無い人にとっては難しく感じるのは当然です。
そのような状態で、JIRAの利用を強制しても、
・難しくて使えない
・使わないほうがいい
・わざわざ導入する意味は無い
などという風評被害が発生するだけです。
やはり、ゴールを共有することが大切です。
何のためにJIRAを使うのか、それを理解してもらえるように、粘り強く説明していきました。
情報リテラシーの問題-JIRAの機能が豊富で使いこなせない
自由にどうぞ!と開放しても、使いこなせる人はわずかです。JIRAは特にスキルが必要です。
現業に忙しい場合、そのスキル獲得の時間をとることも難しい。
これが現実である、と認めた上で、行動を取ることが重要でした。
私が取った行動は、利用のハードルを下げること。
フィルタ、ダッシュボード、チケット登録ルール、チケット運用フローを整備しました。
「ルールにそって登録するだけで十分です!」という感じで。
限定的でも良いので、手順にそって触ってもらうことが重要だと考えたのです。
目的は、組織へ情報の蓄積なのですから。
フィルタとダッシュボードを作っておけば、状況の見える化も同時に実現できますね。
限定的な使い方のレベルでストップする人がいてもよいのです。
みんながJIRAマスタになる必要はない。最低限の、最初の目的が果たせるレベルでも十分です。
こういう割り切りも重要だと感じました。
コミュニケーションの重要性
この活動をふりかえってみると、普段からのコミュニケーションが大切だと感じました。
中でも、リーダなど上司との関係は重要だったと思っています。
- 普段からチーム運営について会話することは重要です
- 小さなことから改善を実現して、上司にフィードバックをもらいましょう
- そういう下積みがあることで導入を任せてもらいやすくなります
- 「運営で困っていることがある」と相談されるようになれば大きなチャンスですね!
- 私は1on1ミーティングを行い、その場で上記のことも会話していました
さいごに
途中でも書いたとおり、孤独を感じやすい仕事であります。そんなときはぜひ組織の外の人にもアプローチしてみてください。
Atlassian User Groupの場には同じような悩みを抱えている人がたくさんいて、その人たちと会話することで励みになると思います。
最後まで読んでいただきありがとうございました。