計算力学技術者(振動2級)で問われる音響工学の問題を解くための知識をまとめる。
音速
音の速さ $c$ [m/s]、温度 $T$ [degC] とする。
$$c = 331.5 + 0.6T$$
計算問題では、常温でおおよそ $c=340$ [m/s]として計算すればよい。
基本式
音の速さ $c$ [m/s]、周波数 $f$ [Hz]、波長 $λ$ [m] とする。
$$c = f × λ$$
波数とは、単位長さ当たりの波の数に$2\pi$を乗じたものである。
波長 $λ$ [m] であるので、単位長さ当たりの波の数は $1/λ$ となるので、波数 $k$ [rad/m] は以下の式となる。
$$ k = \frac{1}{λ} ×2\pi $$
また、波数$k$ [rad/m] は、以下の式変形により周波数(角周波数$\omega$ [rad/s])に依存した物理量である。
\begin{align}
k &= \frac{1}{λ} ×2\pi \\
&= \frac{2\pi f}{c} = \frac{\omega}{c}
\end{align}
音の伝搬の性質
音速の式より、温度が高いほど音速が速い。スネルの法則(温度の低い層から高い層へ伝搬する音の入射角は大きくなる)により、点音源から放射された音は曲がりながら伝搬していく。
音圧レベルの計算
音圧レベル $L$ [dB]は、人間の聴覚特性に合わせた音の大きさを基準とする。
基準とする音圧 $p_0$ [Pa] は、$1$kHzの調和音が人間に聞こえる限界の音圧の実効値とする。
音圧の実効値 $p$ [Pa] の音圧レベル $L$ は以下の式となる。
\begin{align}
L &= 20×\log_{10}(\frac{p}{p_0}) \\
p_0 &= 2 × 10^{-5}
\end{align}
計算例
音圧の実効値 $1$ [Pa] の音圧レベル $L$ [dB]
\begin{align}
L &= 20×\log_{10}(\frac{1}{2 × 10^{-5}}) \\
&= 20×\bigl( \log_{10}1-\log_{10}(2 × 10^{-5}) \bigr) \\
&= 20×\bigl( 5-\log_{10}2 \bigr) \\
&= 94
\end{align}
共鳴
両端が開いた全長 $L$ [m] の音響管内で音波が共鳴する条件は、波の腹の頂点が音響管の端にくる(半波長の整数倍が長さLに一致する)時である。
以降 $n$ を整数として、$nλ/2$ とする。また、波数 $k (=2\pi/\lambda)$ を用いて関係式を示すと以下となる。
\begin{align}
\frac{n}{2}\lambda &= L \\
kL &= n\pi \\
\end{align}
音響フィルタ
A特性:一般的な騒音レベルの評価
C特性:衝撃性の騒音の評価
オクターブバンド
オクターブとは $2$ 倍の周波数を意味する。
オクターブバンドとは、ある周波数 $f_c$ [Hz]を中心として、上限周波数 $f_h$ [Hz]と下限周波数 $f_l$ [Hz] の周波数比が1オクターブとなる周波数帯域のことである。
\begin{align}
f_h &= 2×f_l \\
f_c &= \sqrt{f_l × f_h} \\
\end{align}
中心周波数を用いて上限と下限周波数は以下の計算となる。
\begin{align}
f_h &= \sqrt{2}×f_c \\
f_l &= \frac{1}{\sqrt{2}}×f_c \\
\end{align}
1/3オクターブバンドの関係式は以下となる。
\begin{align}
f_h &= 2^{\frac{1}{3}}×f_l \\
\end{align}
中心周波数の定義は上記同様。よって、中心周波数を用いた上限と下限周波数の計算は以下となる。
\begin{align}
f_h &= 2^{\frac{1}{6}}×f_c \\
f_l &= \frac{1}{2^{\frac{1}{6}}}×f_c \\
\end{align}
計算例
中心周波数が$800$ [Hz] の1/3オクターブバンドは以下の周波数範囲となる。
\begin{align}
f_h &= 2^{\frac{1}{6}}×800 = 897.98 \\
f_l &= \frac{1}{2^{\frac{1}{6}}}×800 = 712.72 \\
\end{align}