あくまでもやってみたらこうだったよという記録です。
#GCCのダウンロード
追記: 2016年4月現在GCC6.1がリリースされています。今後6.2以降が出てくると思いますが、5.2のところを適宜変更してください。最新バージョンの確認を行うようにしてください。
##tarball(.tar.○○ファイル)を利用
wget http://ftp.tsukuba.wide.ad.jp/software/gcc/releases/gcc-5.2.0/gcc-5.2.0.tar.gz
※bz2でもOKです。
ダウンロードしたら、次のコマンドで解凍・移動します。
tar xf gcc-5.2.0.tar.gz
cd gcc-5.2.0
##Subversionを利用
Subversionがある場合はSubversionのリポジトリから取ってくる方法もあります。
基本的にバージョン管理システムのリポジトリから取ってくる場合はタグを使用します。最新安定版を使うなら以下のコマンドでgcc
フォルダを作ってその中にソースコード一式がダウンロードされます。
svn co svn://gcc.gnu.org/svn/gcc/tags/`svn ls svn://gcc.gnu.org/svn/gcc/tags | grep -F gcc_ | tail -n 1` gcc
手動でやりたい場合は
svn ls svn://gcc.gnu.org/svn/gcc/tags | grep -F gcc_
でインストールしたいバージョンのタグ名を確認してから
svn co svn://gcc.gnu.org/svn/gcc/tags/(タグ名) gcc
でダウンロードします。その後、gcc
ディレクトリに移動します。
##Gitを利用
**ある程度ディスク領域に余裕があり、**Gitを使いたい場合は
git clone git://gcc.gnu.org/git/gcc.git
git tag #このコマンドでインストールしたいバージョンのタグ名を確認
git checkout (インストールしたいバージョンのタグ名)
を実行します。その後、Subversion同様gcc
ディレクトリに移動します。
#必要なパッケージのダウンロード
contrib/download_prerequisites
GCCのルートディレクトリで上のコマンドを実行すると自動的にやってくれます。gcc.gnu.org
に接続できない場合は、例えば
sed -e "s@ftp://gcc.gnu.org/pub@http://ftp.tsukuba.wide.ad.jp/software@" contrib/download_prerequisites > contrib/download_prerequisites2
contrib/download_prerequisits2
のように、サーバを変更して再実行してください。(この例では筑波大学のサーバを使用)
#ビルド用ディレクトリ作成・移動
公式ではconfigure
のあるディレクトリでコンパイルするのを非推奨としています。ここではそのディレクトリの親ディレクトリに別のディレクトリを作りました。
mkdir ../gccbuild
cd ../gccbuild
今思えばconfigure
のあるディレクトリの下にディレクトリを作ってもよかったかもしれません。(CentOS/RHELの付属コンパイラはこの方法を取っているようです)
#configure
../gcc-5.2.0/configure --program-suffix=5 --disable-multilib --enable-languages=c,c++ --host=x86_64-redhat-linux --build=x86_64-redhat-linux --target=x86_64-redhat-linux
元のGCC 4.4.7と共存させるためにsuffixをつけました。また、64bit専用にするつもりで--disable-multilib
をつけました。bootstrapは有効にしてあります。
追記: Javaはいらないので--disable-libgcj
もつけた方がいいみたいです。また、/usr/local
以外にインストールする場合には--prefix
以外にも--with-local-prefix
も指定した方がいいらしいです。(ライブラリのインストール先)あとは「--with-system-zlib --enable-checking=release
」などでしょうか?(更に追記: OS付属のものより新しいZlibが必要な場合は--with-system-zlib
をつけないようにしてください)(gcc -v
でOS付属のGCCのコンパイルオプションが確認できます)また、--enable-languages
には**「s」をつけてください。**「s」なしでやってJava・Fortranのコンパイラも抱き合わせられてしまいましたので。これらを総括すると、
../gcc-5.2.0/configure --program-suffix=5 --disable-multilib --enable-languages=c,c++ --host=x86_64-redhat-linux --build=x86_64-redhat-linux --target=x86_64-redhat-linux --disable-libgcj --with-system-zlib --enable-checking=release #--prefix=DIR --with-local-prefix=DIR2 (#の後は場所を変える時のみ)
追記: --enable-cheking
が--enable--cheking
になっていたことをお詫びします。
#ビルド
make -j8 BOOT_CFLAGS='-march=core2 -O3'
当方デスクトップ版i5なので-j8
にしました。-j
の直後はコア数の2倍がいいらしいです。ビルドにはかなり時間がかかりました。
追記: GCCのビルドは3回(GCC4.4.7でビルドしたGCC5.2(Aとする)、AでビルドしたGCC5.2(Bとする)、BでビルドしたGCC5.2(Cとする))行われますが、AのビルドにはSTAGE_1_CFLAGS
で指定したオプションが適用されます。また、B・CのビルドにはBOOT_CFLAGS
で指定したオプションが適用されます。STAGE_1_CFLAGS
にはGCC4.4で使用できるものを指定します。(例えば-Og
・-march=corei7
などは不可)また、BOOT_CFLAGS
にはGCC5.2で使用できるものを指定します。こちらには-march=corei7
・-march=core-avx2
などもOKです。例えば、最終的に生成されるGCCのバイナリサイズをなるべく小さくしてなおかつ現在使用しているコンピュータ以外のコンピュータにバイナリを配布しないというのであれば、
make -j8 STAGE1_CFLAGS='-march=core2 -O3' BOOT_CFLAGS='-march=native -Os'
でコンパイルを実行します。また、さらに、出力される大量のメッセージが見たくないというのであれば、
make -k -j8 STAGE1_CFLAGS='-march=core2 -O3' BOOT_CFLAGS='-march=native -Os' > /dev/null 2>&1 && echo "GCCビルド成功" || echo "GCビルド失敗"
make -k -j8 STAGE1_CFLAGS='-march=core2 -O3' BOOT_CFLAGS='-march=native -Os' >& /dev/null && echo "GCCビルド成功" || echo "GCビルド失敗"
とすると結果だけ出力されてすっきりします。(更に末尾に&をつけるとバックグラウンドでコンパイルしながら他のことをすることも可能)
追記: stage1だけビルドするにはmake ~ all-stage1
でできるようです。
#インストール
porgをインストールしているので次のコマンドでインストールしました。(GCCはmake uninstall
に対応していません)
sudo porg -lp gcc-5.2.0 'make install'
追記:このままだとgccbuild
以下に記録されるファイルがあるので、以下のようにして除外した方がいいと思います。(ついでにmake install
にオプション-j8
をつける)
sudo porg -lp gcc-5.2.0 -E "${PWD}:/tmp:/dev:/proc:/selinux:/sys:/mnt:/media" 'make install -j8'
/usr/local
以外にインストールした場合はパスを通すのを忘れないようにしましょう。
export PATH=(prefixのディレクトリ)/bin:$PATH
setenv PATH (prefixのディレクトリ)/bin:$PATH
#コンパイル
まずC言語をコンパイルしてみました。
tatsu@localhostF ~/gcctest> cat hello.c
#include <stdio.h>
#include <math.h>
int main(void) {
puts("Hello, world!");
double inmu = M_E * (pow((M_E + M_PI) * (M_E + M_E + M_PI),M_E) + 1.0 / ((pow(M_PI,M_E) - M_E) * (M_E + pow(M_E,M_PI) - pow(M_PI, M_E))));
printf("Inmu number: %f\n",inmu);
}
tatsu@localhostF ~/gcctest> gcc5 hello.c -o hello
tatsu@localhostF ~/gcctest> ./hello
Hello, world!
Inmu number: 114514.191981
次にC++をコンパイルしてみました。
tatsu@localhostF ~/gcctest> cat cpptest.cpp
#include <iostream>
using namespace std;
int main() {
cout << "(。╹ω╹。)ㄘんㄘんㄟ⁰ㄋㄟ⁰ㄋㄜㄝㄋ" << endl;
int inmu = 0b11011111101010010;
cout << "2進数11011111101010010を10進数に直すと " << inmu << endl;
return 0;
}
tatsu@localhostF ~/gcctest> g++5 cpptest.cpp -o cpptest
tatsu@localhostF ~/gcctest> ./cpptest
(。╹ω╹。)ㄘんㄘんㄟ⁰ㄋㄟ⁰ㄋㄜㄝㄋ
2進数11011111101010010を10進数に直すと 114514
ちゃんと2進リテラルも正しくコンパイルされています。
#リンクしているライブラリを確かめる
念のためちゃんとライブラリとリンクしているか確かめてみました。
tatsu@localhostF ~/gcctest> ldd hello
linux-vdso.so.1 => (0x00007ffd5d99d000)
libc.so.6 => /lib64/libc.so.6 (0x00000039f5200000)
/lib64/ld-linux-x86-64.so.2 (0x00000039f4e00000)
OS付属の古いライブラリとリンクしています。Cライブラリは今回のビルドで最新版を、ということはないようです。(OSの基礎をなすものなので差し替えたらマズいという話も)C++の方も確認してみました。
tatsu@localhostF ~/gcctest> ldd cpptest
linux-vdso.so.1 => (0x00007ffd971cb000)
libstdc++.so.6 => /usr/local/lib64/libstdc++.so.6 (0x00007f0121577000)
libm.so.6 => /lib64/libm.so.6 (0x00000039f6200000)
libgcc_s.so.1 => /usr/local/lib64/libgcc_s.so.1 (0x00007f0121360000)
libc.so.6 => /lib64/libc.so.6 (0x00000039f5200000)
/lib64/ld-linux-x86-64.so.2 (0x00000039f4e00000)
こちらはlibstdc++・libgcc(C++のランタイムライブラリ)が自分でビルドしたものにリンクされました。
#ライブラリのパスを通す
環境変数LD_LIBRARY_PATH
にライブラリをインストールしたディレクトリを追加します。
export LD_LIBRARY_PATH=$LD_LIBRARY_PATH:(/usr/localかwith-local-prefixのディレクトリ)/lib64
setenv LD_LIBRARY_PATH ${LD_LIBRARY_PATH}:(/usr/localかwith-local-prefixのディレクトリ)/lib64
補足: 誤記があったので修正しました。
(/usr/localかwith-local-prefixのディレクトリ)/lib
も一緒に追加(コロンで繋げる)したほうがいいかもしれません。
この変数が定義されていない場合を考慮して、
if [ -n "${LD_LIBRARY_PATH+x}" ]; then
export LD_LIBRARY_PATH=$LD_LIBRARY_PATH:/usr/local/lib64 #/usr/localの部分は適宜変更します
else
export LD_LIBRARY_PATH=/usr/local/lib64
fi
if ( $?LD_LIBRARY_PATH ) then
setenv LD_LIBRARY_PATH ${LD_LIBRARY_PATH}:/usr/local/lib64
else
setenv LD_LIBRARY_PATH /usr/local/lib64
fi
とすることをおすすめします。
##更に追記: root権限がある場合
https://www.vultr.com/docs/how-to-install-gcc-on-centos-6 によると、/etc/ld.so.conf.d/
の中のファイルにライブラリのディレクトリを書くという手もあるみたいです。
sudo -i
echo "/usr/local/lib64" >> /etc/ld.so.conf.d/usrlocallib64.conf
#「usrlocallib64」の名前は任意です。(拡張子は固定した方がいいと思います)
ldconfig
exit
#ヘッダファイルのパスを通す
環境変数CPATH
にライブラリをインストールしたディレクトリを追加します。
export CPATH=$CPATH:(/usr/localかwith-local-prefixのディレクトリ)/include
setenv CPATH ${CPATH}:(/usr/localかwith-local-prefixのディレクトリ)/include
これも
if [ -n "${CPATH+x}" ]; then
export CPATH=/usr/local/include:$CPATH
else
export CPATH=/usr/local/include
fi
if ( $?CPATH ) then
setenv CPATH /usr/local/include:$CPATH
else
setenv CPATH /usr/local/include
endif
のように書くことをおすすめします。
#まとめ
一応GCC5.2はCentOS6で動くということがわかりました。ただし、リンカ(ld)が古いライブラリとリンクしてしまうことがあります。GCC4.4.7で利用できない関数は使用を控えた方がいいのかもしれませんが、そこはよく分かっていません。std::atomic
・std::mt19937_64
はGCC4.4.7で対応しいないみたいですが、GCC5.2だと動くようです。(Clangのビルド・大学の課題で確認)とりあえず、ちゃんと動くようです。めでたしめでたし。