議論のテーマの種類
- 施策の検討、事実の認定、価値の判断
- 施策の検討は、ある施策を実行するか否かを決めること。施策によるメリットとデメリットを洗い出し、それぞれの影響の大きさも検討する。これはビジネスの議論の主なテーマである。
- 論理的な議論に適しているのは施策の検討のみ。事実の認定は言葉の定義論争になったり、信頼できるデータを入手しにくかったりして、結論が出にくい。そのため、論理的な議論には向いていない。さらに、価値の判断も論理的な議論に向いていない。価値の判断は各々の価値観が主張の根拠になる。だが、価値観を論理的な議論で変えることが難しい。そのため、結論がまとまりにくい可能性がある。
議論の目的
- 現状のものより良い結論に到達するためである。ビジネスの場面におけるよりよい結論とは、当事者すべてが満足できるWin-Winのソリューションである。
- 間違えてはならないのは、議論の相手に勝つことではないということだ。むしろ、勝ち負けを目指すと、負けた方が感情的にイヤな気分になる。関係性も悪化し、仕事においてネガティブな影響を及ぼすリスクがある。
どう議論するのか
- 参加者の主張の根拠を検証しあう。より具体的には、最適な結論に到達するために、原案や反論の根拠、さらに論証を検証する。論証とは、事実と主張が飛躍なく、ちゃんとリンクしていること。結論が論理的に到達したものならば、ビジネスもその論理通りに進み、結論に到達する。
- 対比の例は、駆け引きや妥協である。駆け引きや根回しは、結論を決めるために論証の検証をせずに、譲歩や戦略を使う。
- 検証することで、論点が深いレベルに落とし込まれ、当初は見えなかった解決策に到達できる。イメージは以下の図を参照。
余談:論理の限界
- 価値観は論理で変えにくい。例えば、「ビールは苦い。だから好き」という人もいれば、「ビールは苦い。だから嫌い。」という人もいる。苦いから好きな人を、嫌い、に変えるのは難しい。
- 論理的でない人に論理的な議論をするのは無駄。
論理的でない人とは、根拠の検証をしない人。そういう人には、信頼関係を構築するなど別のアプローチを使い、自分の主張を支持してもらう。 - 論理的な主張より固定された習慣と整合する主張の方が正しいとされる。もしも習慣を論理的な議論で変更するならば、周到な準備が必要だ。理論武装とデータ、人間関係により主張の味方を集める必要がある。
議論の構造
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議論における主張は、想定される反対意見への反論も含意している。すなわち、一番最初の主張も、反対論者を説得する意図を暗に含んでいるのだ。たとえば、「A氏の意見に賛成です」という主張は「反対です」という意見を想定し、それに先手を打って賛同を表明していることになる。
イメージは以下の図。
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主張は、対抗する意見より自分の主張の方が正しいことを説得する行為。それゆえ、主張には根拠が必要である。そして、根拠は具体的で詳細であるほど、論理性が生まれる。根拠には、理由とデータがある。理由とは、主張を導き出す前提である。データとは、主張または理由を裏打ちする具体的な事実である。概念図と実例は以下の図を参照。
- 理由にさらなる根拠が必要な場合がある。理由も一種の主張であるからだ。それゆえ、主張に小さな主張がリンクした構造を持つ。このリンクが欠落しないようにチェックをする必要がある。そして、根拠が当たり前(自明)になった時、それ以上根拠を深める必要がなくなる。各理由のステップに、データがあると説得力が上がる。ちなみに、他人に説明する時は、AならばB, BならばC...という順序で説明する方が分かりやすい。
議論の構造の概念図と具体例は以下を参照。
議論の要素
- 原案には、問題解決型と施策提案型がある。問題解決型は、現状と理想のギャップを埋めるための施策を主張する。施策提案型は、理想とのギャップとは関係なく現状を改善する施策を主張する。
- 原案への反論には、主張型反論と論証型反論がある。主張型は、原案の主張に反対する主張だけを述べる。ここで、相手の原案の根拠は検証しない。それに対して論証型は原案の根拠が十分に原案をサポートしていない、あるいは原案そのものが正しくないことを述べる。それにより反論する。
- 反論には、両方が必要だ。論点を進化させるために必要なのは論証型反論である。一方、「すべき」という原案のデメリットも議論の対象になるようにするためには、主張型反論が必要。論証型反論だけだと、「すべき」の原案の中のメリットだけが議論の焦点になってしまうからだ。
- 原案への一番最初の反論の論点は3種類になる。
・メリットは生じない
・メリットは重要ではない
・デメリットが生じる
さらに、その最初の反論へのさらなる反論の論点は以下の2種類になる。
・メリット/デメリットは生じるか
・メリット/デメリットは大きいか
上記の議論の要素と構造を踏まえた概念図と具体例は以下の図を参照。
参考資料
論理が伝わる 世界標準の「議論の技術」 Win-Winへと導く5つの技法 (ブルーバックス 1914)