概要
本記事は情報処理教科書 プロジェクトマネージャ 2024年版
の遅延対策に関するセクションを要約したものがメインです。
遅延の予防策
監視/モニタリングを行う
- 遅延を防ぐ究極の目的は納期を守ることです。
- そのために、進捗遅れの予兆をつかみ、事前に対処する(別の言い方ではリスク軽減) 。
- 進捗遅れの検知は早いほど良い。早いほど、対処も早く開始できるからです。進捗が遅れる前に持ち直すより、遅れた後に挽回する方が困難です。
- 監視のための具体的なアクションは2種類あります。どちらか一方でよい、というよりはどちらも異なるメリットがあります。
- 1つ目は進捗管理表などのドキュメントで監視します。これは、予定と実績を定量的指標によって表す。予実に差があれば、それが遅れです。定量的指標の例は、4種類あります。スケジュールの進捗を監視する場合は、完了予定日と実際の完了日の差分です。ドキュメントの作成の進捗を監視する場合は、完成ページ数と作成予定ページ数の差分です。プログラムの場合は、作成されたプログラムの本数/予定本数で表現できます。テストの場合は、テスト実施数/テストケース数や改修済みの不具合の数/不具合の発生数がありえます。
- 2つ目は直接または進捗会議にて報告を受ける。
進捗遅れの予兆に早く気付くためには、ドキュメント上だけではなくメンバーとの会話も重要です。というのも、管理のドキュメントでは順調でも、その裏にメンバーの様子がおかしい、疲れている、悩んでいるという状況が潜んでいる可能性があるからです。ただし、個別に報告を受けるのは費用対効果が悪いので、週に1度ほどの定例進捗会議を設け、そこで報告を聞くという方法が推奨されます。
特に、重要工程の管理の注意点
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重要工程での予兆の管理は特に重要です。
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重要工程とは、クリティカルパス上にある工程です。このような重要工程では、遅延につながる予兆を確実に管理対象に入れる必要がある。
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予実管理で予実の差分を検知する前に先手を打って問題につながる潜在要因を特定します。それを監視項目とします。次に、それらを測定するための定量的指標を設定します。その後、重点的にそれを監視し、進捗遅れの予兆が見られた時点で対策を施します。
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管理指標の例は以下の通りです。要員の生産性を測定するために、プログラム1本あたりの作成所要時間を監視する。プロジェクトを兼任している要員の負荷を測定するために、本プロジェクトと別プロジェクトに割いている稼働時間を監視する。
遅延が起きてしまった後の対処法
以下の3ステップで行います。
1. 根本原因分析を行う
2. 原因を解消する
3. 発生した遅延を巻き返す
1. 根本原因分析を行う
根本原因分析とは、課題を分析する手法です(英語ではRoot Cause Analysisと呼ばれます)。課題に関連するデータを集め、単一または複数の原因を特定し、優先度をつけ、解決策を検討するプロセスを踏みます。
- 課題を明確に記述します。具体的には、あるべき状態は何かを記述します。ここではSMARTというフレームワークを使うのがおすすめです。次に現状の望ましくない状態も記述します。このようにして、あるべき状態と現状のギャップを特定します。このギャップを課題と呼びます。
- その課題に関係のあるデータや情報を集めます。それを通じて、現状の望ましくない事象がいつ、どこで起きているかなどを明らかにします。
- 次にそのギャップが発生している原因を分析します。そのための手法には、なぜなぜ分析や特性要因図があります
2.原因を解消する
- ここでの目標はこれ以上遅れが悪化しないようにすることです。
- 既に判明している原因を除去します。例えば、あるメンバーの生産性が予想よりも低く、その原因が体調が悪いという場合、根本原因は要員の体調不良です。そのまま現状維持をしても生産性が上がらなさそうな場合、要員を交代する打ち手が考えられます。それにより、遅延が悪化しないようにします。
3. 発生した遅延を巻き返す
- ここでの目標は、遅延を挽回し、それにより納期を遵守することです。
- 対処法は複数持っているのが望ましいです。そこで、対処法の例を挙げます。
- クラッシングやファストトラッキング
- 本番稼働の時期を延伸
ただしユーザーの合意が必要。一旦延伸したら、再延長は不可であるため慎重に再スケジュールをするべきである。 - 部分稼働
ただし、ユーザーの合意が必要。さらに、稼働させる機能は、定量効果の出やすいものが良い。かつ、後から機能追加や変更が可能なことを事前に確認するべき。 - スケジュールを組み替える
具体的には、作業順序の見直しや、作業手順の指導をする。(担当者のスキル不足で作業効率が悪い場合) - 要員の追加
ただし、要員の追加だけで回復できる見込みがあるかを事前に確認するべき。さらに、追加要員に必要なスキルがあることを確認すべき。加えて、コスト増の負担先は明確化しておく。 - 環境の改善
例えば、開発場所を移動させる、開発設備を追加するなどを行う。ただし、これはほかの対策の補助的な対策。加えて、コスト増の負担先を明確化する必要がある。 - 進捗確認を強化する クリティカルパスは強化する。遅延の挽回にはつながらない。遅延が顕在化するかなり前に気づいた場合にしか効果がない。
参考資料