こんにちは。
この記事はNECソリューションイノベータ Advent Calendar 2024アドベントカレンダーの12/13の記事です。
シリコンバレーで開催されたGenAI Summit Silicon Valley 2024に現地参加したレポートです。このイベントで知ることができた、生成AIの最新情報やトレンドについてまとめました。
イベントの概要
GenAI Summit Silicon Valley 2024は、生成AI(Generative AI)の革新と進化を中心に、業界のリーダー、研究者、エンジニア、起業家、政策立案者が集う世界的なカンファレンスです。
GPT DAOによって主催され、10,000人以上の参加者が集まりました。参加者の約53%が創業者やCEOであり、35%がAI開発者、15%がベンチャーキャピタリストといった内訳になっていました。
開催期間
2024/11/1~3
開催場所
アメリカ カリフォルニア州 サンタクララ・コンベンションセンター
イベントの様子
本イベントは、3つのステージでの基調講演・パネルディスカッションと、企業ブースでのサービス展示で構成されていました。
実際に参加してみて、日本人参加者はほとんど見られず、中国系の方やスタートアップの起業家が多い印象でした。
講演の様子
企業ブースの様子
生成AIの技術トレンド
注目されていた技術トレンドを以下に挙げます。特にAIエージェントに関する注目度が高く、多くの議論が交わされていました。AIエージェント
- エージェントAIは、特定のタスクを自律的に実行する能力を持つAIシステムとして注目されており、カスタマーサービスや業務効率化などさまざまな分野での応用が期待されています
- ソフトウェアエンジニアリングにおいて、現在のコパイロットによる補助的な活用から、AIエージェントによる自律的な開発が進んでいくと語られていました
- AIエージェントのリスクとして品質や個人情報の流出などが挙げられていました
- パネルディスカッションの中で、世の中にあるAIエージェントは、人によるインプットが必要であったり、タスクを行うだけでそれでは真の意味で自律的と言えるのだろうか?AIのアシスタントではないか?という議論もなされていました(イベント最後の講演だったため会場がざわついていました)
マルチエージェント
- AIエージェントをLLMで繋ぐことで、より複雑なタスクを行うことができるマルチエージェントについて語られていました
- AIエージェントのプラットフォームとアプリケーション、タスクの意思決定を行うプライマリーエージェントによって実現されると語られていました
- 実際に、自動でエージェントがPC画面を操作してAmazonから商品を購入してくれるデモを紹介していました
モデルのトレンド
- gpt4のような汎用的なモデルから今後、ドメインに特化したモデルや、SLM(small Language Model)のトレンドが来ると言われています。変化の理由として、計算リソース膨大化や開発のコスト問題、プライバシー面の他に、社会実装における精度の課題が考えられます
- ドメインに特化したモデルの1つとして、LMM(Large Market Model):大規模市場モデルの紹介がされていました。LMMは市場や競合他社の戦略などを学習し、企業の変化を予測することで、企業の戦略的な意思決定に活用できるようです。このような技術が増えていくことでコンサルティングなどの専門家がAIに置き換わっていくという話がありました
- SLMやエッジAIの進展によって、人が意識せずとも、AIが状況を判断し、その恩恵を得られるようになると言われていました
新しいLLMのチューニング方法
- Lamini Memory Turning の説明がされていました。こちらはMoME(Mixture of Memory Experts)という手法を用いてモデルをチューニングするものになっており、検証では95%ハルシネーションを抑えることができたそうです(RAG+Finetunigだと50%)
生成AIの責任ある開発
- 生成AIの倫理的利用と責任ある開発についての議論が活発に行われていました
- 説明可能性に重点を置くべきと話されており、Human in the loopの重要性が多くのセッションで語られていました
コスト問題への対策
- 上記に挙げたようにドメイン特化モデルやSLM、モデル圧縮によってモデルの開発・運用コストを下げる動きがあります
- ハードウェア面での対策として、量子コンピュータやニューロモルフィックコンピューティングへの期待が語られていました
- エネルギー問題に対しては海外大企業では原子力エネルギーの活用も考えているようです
生成AIの活用のトレンド
- 今後、多くの企業が生成AIを業務に取り入れていく中で、特に顧客サービスやコンテンツ制作においてAI活用が進むと言われていました
- AIによるパーソナライズ化が進み、顧客のニーズに応じたサービス提供がAIを通じて行われるようになっていくと言われています
- 現地では、ヘルスケア(セルフケアやウェルビーイング)や教育での活用が注目されているようでした。AIを使った教育ベンチャーの方や研究者なども多く参加していました。
- 技術的な観点では、来年はマルチモーダル化が大きな推進力となることを言われていました
AIの未来
- ロボット+AIエージェントの市場は出てきたばかりとのことでしたが、ロボットは仮想空間と現実世界のインターフェースの一つなので、今後も研究が進んでいくと思います
- スタートアップ投資家の目線で、AIと脳を繋ぐ神経インターフェースに注目していると言われており、アニメの世界みたいなことがそう遠くない未来に実現されるかもしれないと思いました
- AGIの実現については、10年以内では難しいかもしれないが、新しいタイプのAIが出てくるだろうと言われていました
まとめと所感
- 多くの海外スタートアップ企業で、何百ものエージェントを日々開発しているとのことで、社会実装の面でも注目度が高いように感じました。日本国内でも現在、RAGを使った社内文書検索などが流行っているので、AIエージェントによるタスクの自動化が次のトレンドになりそうだと思います
- 上記のタスクの自動化と、汎用的なモデルからドメイン特化なモデルや小さいモデルにトレンドが変わってきているため、ドメイン知識が必要な中小企業向けのアプローチが熱い(重要)のではと考えています。実際、海外企業も中小企業が多い日本に拠点を増やしており、目を付けているのではと思いました
- トレンドとしてドメイン特化の次は、AIのパーソナライズ化が進み、個人特化していくのではと妄想しています
- AIを活用していく上で信頼性や倫理性は切り離せない問題であり、Human in the loopが重要とのことで、どのようにAI開発に人が介入していくかだけでなく、AIを作る人の倫理観も大事だと感じました。併せて、利用する側の人の意識も変わっていく必要があると思います
本講演では、AGIは10年では厳しいかもしれないと言われていましたが、最近の孫正義氏の「SoftBank World 2024」の講演で「AGIは数年以内に登場する」と言われていたり、技術の進化は指数関数的に進んでいるなと実感しました。引き続き動向をチェックしていきたいと思います。
「世の中で言われているAIエージェントはタスクをこなすだけで、それではAIアシスタントではないか?」と、AIエージェントは誇大広告されているという生の議論を聞くことができたり、スタートアップ企業の方の熱量や注目の観点を知ることができたりと、現地でしか得られない情報がたくさんあったので、また参加したいです。