1. はじめに
Javaでアプリケーションを開発すると、最終的には「.jarファイル(Java Archive)」という形式で成果物をパッケージングすることが多いです。この .jar
ファイルは、Javaのクラスやリソースファイルをまとめて配布・実行するための形式で、コマンド一つで簡単にアプリケーションを実行できるようになります。
本記事では、ビルドツールとしてGradleを使用して、シンプルなJavaプロジェクトから .jar
ファイルを作成する方法を解説します。
Gradleを使うことで、依存関係の管理やビルド処理を自動化できるため、手作業でのミスを防ぎ、開発の効率を大幅に向上させることができます。
こんな方におすすめです:
- Gradleを使ったことがない方
- Javaの
.jar
ファイルを手軽に作成したい方 - 学習用や小規模なツールを配布・実行しやすくしたい方
今回は、コマンドラインで操作する基本的な使い方に絞って紹介するので、GradleやJavaに不慣れな方でも安心して読み進めていただけます。
2. 環境情報
この記事を実行するための前提条件として、以下の環境が整っていることが必要です。
前提条件
以下は著者の環境になるので参考までに。
-
Gradleを利用したファイルが作成されていること
Gradleプロジェクトがすでに作成されていることが前提となります。もしまだ作成していない場合は、まずGradleのプロジェクトを初期化してください。 -
JDKが正しく設定されていること
本記事では、JDKとして Amazon Corretto 21.0.7_6 を使用しています。以下のコマンドでJDKのバージョンが正しくインストールされていることを確認してください。$ java -version $ openjdk version "21.0.7" 2025-04-17 $ OpenJDK Runtime Environment (build 21.0.7+6-29) $ OpenJDK 64-Bit Server VM (build 21.0.7+6-29, mixed mode)
3. build.gradle
の設定
Gradleで.jar
ファイルを作成するためには、まずプロジェクトのルートディレクトリにあるbuild.gradle
ファイルを設定する必要があります。このファイルに必要なプラグインや設定を記述していきます。
以下の設定をbuild.gradle
に追加します。
必要なプラグインの適用
最初に、java
プラグインとapplication
プラグインを適用します。これにより、GradleがJavaプロジェクトとしてビルドできるようになり、アプリケーションを実行可能な.jar
ファイルにパッケージできます。
plugins {
id 'java' // Javaプラグイン
id 'application' // アプリケーションプラグイン(実行可能なjarファイルを作成するため)
}
group = 'com.example' // プロジェクトのグループID(任意)
version = '1.0' // バージョン(任意)
application {
mainClass = 'com.example.App' // 実行するメインクラス(自分のクラス名に変更。ここではAppというクラス)
}
4. .jar
ファイルの作成方法
Gradleでは、.jar
ファイルを作成する方法がいくつかあります。代表的なものとして、以下の3種類があります。
-
jar
: 通常の.jar
ファイルを作成します。依存関係は含まれず、純粋なJavaクラスファイルのみがパッケージされます。 -
bootJar
: Spring Bootアプリケーションの場合に使用される.jar
ファイルを作成します。Spring Bootのアプリケーションを実行するために必要な全ての依存関係が含まれます。 -
build
: プロジェクトの全体をビルドします。jar
ファイルの作成も含まれますが、実行可能な.jar
やテスト、リソースなども含まれるため、最も一般的に使用されるコマンドです。
それぞれの違い
-
jar
: 最もシンプルなjar
ファイルを作成しますが、依存関係やリソースファイルは含まれません。 -
bootJar
: Spring Bootの場合、実行可能なjar
ファイルを作成します。アプリケーションに必要な依存関係や設定ファイルが自動的に含まれるため、簡単にアプリケーションを配布・実行できます。 -
build
: プロジェクトのビルド全体を行い、.jar
ファイルを含む成果物を作成します。jar
タスクを実行するのとほぼ同じですが、build
タスクには追加の処理(テスト、リソースのコピーなど)が含まれます。
ビルドコマンドの実行
一般的なプロジェクトで.jar
ファイルを作成するには、gradle build
コマンドを使用します。このコマンドは、上記のjar
タスクやbootJar
タスクを実行し、最終的に.jar
ファイルを生成します。
plain jarの作成
$ ./gradle clean jar
実行可能 jarの作成
$ ./gradle clean bootJar
plain jar, 実行可能 jarの作成
$ ./gradle clean build
.jar
ファイルの確認
ビルドが成功すると、build/libs/
ディレクトリに.jar
ファイルが生成されます。以下のコマンドで確認できます。
$ ls build/libs/
App.jar
補足:Plain Jar と 実行可能 Jar
-
Plain Jar(通常の
.jar
)
jar
タスクで生成される.jar
ファイルは、依存関係が含まれていません。含まれるのは自分のプロジェクトでコンパイルされた Javaクラスファイルやリソースファイルのみ です。
そのため、この.jar
ファイルを実行するには、外部ライブラリ(依存関係)をクラスパスに手動で追加する必要があります。 -
実行可能な Jar
実行可能な.jar
ファイルには、アプリケーションの エントリーポイント(mainメソッド) に加えて、すべての依存関係やリソース が含まれています。
たとえば、Spring Boot プロジェクトで使用されるbootJar
タスクでは、依存関係もすべて含まれた 自己完結型の.jar
が生成されます。
このような.jar
ファイルは、次のように コマンド1つで簡単に実行できるのが特徴です。$ java -jar build/libs/YourApp-1.0.jar
5. Eclipseの「実行構成」に ./gradlew clean bootJar
を保存する方法
毎回ターミナルで ./gradlew clean bootJar
を手動で入力するのが手間に感じる場合は、Eclipseの「実行構成」にコマンドを登録しておくことで、ワンクリックでビルドを実行できるようになります。
手順
-
メニューから「実行構成」を開く
メニューバーの「実行」 > 「実行構成...」をクリックします。
-
[Gradle タスク] を新規作成
左ペインから
Gradle タスク
を選択し、右クリックして「新規」または「構成の新規作成」を選びます。 -
任意の名前を設定
構成にわかりやすい名前(例:
Clean and BootJar
)を付けます。 -
プロジェクトを指定
「プロジェクト」欄で対象のGradleプロジェクトを選択します。
-
タスクを指定
「タスク」欄に以下のように入力します:
clean bootJar
※スペース区切りで複数のタスクを指定できます。
- [実行] をクリック
右下の「実行」ボタンをクリックすると、指定したタスク(この場合は clean
→ bootJar
)が順に実行されます。
以下、参考までにbuildが成功した際のメッセージを記載しておきます。
> Task :clean
> Task :compileJava
The LenientConfiguration.getArtifacts(Spec) method has been deprecated. This is scheduled to be removed in Gradle 9.0. Use a lenient ArtifactView with a componentFilter instead. Consult the upgrading guide for further information: https://docs.gradle.org/8.12.1/userguide/upgrading_version_8.html#deprecate_filtered_configuration_file_and_filecollection_methods
> Task :processResources
> Task :classes
> Task :resolveMainClassName
> Task :bootJar
[Incubating] Problems report is available at: file:///C:/pleiades/workspace/App/build/reports/problems/problems-report.html(プロジェクト配下のパスになります)
BUILD SUCCESSFUL in 8s
5 actionable tasks: 5 executed
次回以降の実行方法
一度設定しておけば、次回以降はメニューの「実行」から構成名(例:Clean and BootJar
)を選ぶだけで、コマンドを入力せずに実行できます。
また、ショートカットキー(例:Ctrl + F11
)でも直前に実行した構成を再実行できます。
このようにして、Eclipse上で ./gradlew clean bootJar
を毎回手打ちする必要がなくなり、開発効率を向上させることができます。
まとめ
この記事では、Gradleを使って .jar
ファイルを作成する方法について、コマンドラインやEclipseなど複数の手段で解説しました。
-
jar
,bootJar
,build
の違い - Plain Jar と実行可能 Jar の特徴
- Eclipseでのビルド方法とタスクの実行
-
./gradlew clean bootJar
を Eclipse に保存して簡略化する方法
私自身、Spring Boot プロジェクトを WAR ではなく JAR でデプロイしようとしたときに、「どのタスクを実行すればいいの?」「Eclipseからできないの?」「Javaのバージョンエラーってなに?」と多くの壁にぶつかりました。
この記事は、そんな自分自身のつまずきから得た知識をまとめたものであり、同じように悩んでいる方の助けになれば嬉しいです。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました!
もし役に立ったと思ったら、いいねやストックしてもらえると励みになります 😊